自分とアイツ、俺とオマエ

ー純ー

2

『全く何をやってるんだ、俺は。』

　ため息を抑えつける。月曜日に侑を襲った元カレにあって以来、４日間連続でコーヒー店にいる。ちょうど昼飯をとる時間帯をわざわざ考慮して、ルートを変えて……。

　侑は火曜日はあの女友だちと、学食に入って行った。昨日は１人で購買で弁当を買ってＦ棟に向かって歩いて行った。あの元カレも極力侑と会わないようにしているようで、全く見かけなくなった。今日は……。

『おっ、侑だ。』

　今日も１人で歩いてる。女に話しかけられて、一緒に歩くわけでもなく一言二言会話をして先に行ってしまった。

『何だ。アイツはあのヒラヒラ以外に、友だちはいないのか？』

　初めて侑に出会った時に一緒にいた奴。近づいたら反吐が出そうな香水を振り撒いていそうな女。侑が購買に入る瞬間、こちらを見たような気がした。

『！』

　アイツだ。あの元カレが男どもと一緒に歩いている。侑はそれに気づいたようでサッと購買の中に姿を消した。

『アイツは？　アイツはどうする？』

　知らないうちに拳を握りしめて、奴の後ろ姿を目で追う。奴は侑に気づいたのか気づかなかったのか……。そのまま友だちとともに、学食の入口の方へと歩いて行った。

「ふぅーー。」

　長いため息が出た。火曜日から見かける侑の様子で、体の調子はすっかり治ってることは分かっていた。でもさっきの様子は……。

『ちっと、元気づけてやるか。』

　今日はダメだ。モタモタしていたおかげで時間が足りない。時間に追われているわけではないが、なにせ件数が多い。明日。明日学校ででも会って話ができればいい。元カレも自分と侑が話しているところを見れば、ますます警戒するだろう。

　侑が購買から出てきた。真っ直ぐにいつものＦ棟に向かうのかもしれない。今行ってもいいが……。

「明日だ。」

　侑がＦ棟に入るのを見届けて、自分も仕事に集中しようと席を立った。





『侑はどっちから帰ってくるんだ？』

　時刻は６時過ぎ。俺は侑のアパートの前で１人で立っていた。今日は大学では侑に会うことができなかった。休んでいるのかと、会社が終わって速攻で車を飛ばして来てみれば誰もいない。

　どうしようか悩んだが、先週会ったのがこの時刻。駅前の駐車場に車を停めて来れば良かったかとも思うが、今更近くに停めた車を動かすつもりはなかった。

『差し入れで買ってた魚が腐っちまうだろ。』

　少しだけ焦りもあるがどうしようもない。連絡先でも聞いときゃ良かったとも思うが、そんなに親しいというわけでもない。

　スマホを弄って連絡先の整理をしていた時、右側から人の歩いてくる気配がした。顔を上げる。侑だ。

「よう、熱は下がったか？」

　思わずにやけそうになった自分の顔を、普通にさせようと努力しながら、平静を装って声をかけた。