自分とアイツ、俺とオマエ

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遭遇7 〜侑〜

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 9時50分。自分はモールの「A」と表示された入り口の前で、杏の姿を探していた。杏もここに来るのにバスを使うはずだから、一緒になれると思ったのに乗っていなかった。10時に待ち合わせということは、モールが開店してすぐ。

『食品売り場でも彷徨いているのかな?』

 1階にある食品売り場はもう開店している。けれども何故か杏がいるような気がせず、ずっと入り口の前で辺りを見回していた。

『ここは広過ぎなんだって。』

 流線型にオシャレにデザインされた建物は100m以上の長さがあるようで、出入り口も沢山ある。どこから杏が入るかも分からない。少しだけ周りを歩いてみようかな、なんても考えたけどやはりここで待つことにした。

『遅いな。』

 10時開店と同時に店に入って3階のフードコートへ。2つある入り口のどちらから杏が来てもいいように真ん中の窓際の席に座っていたけど、15分経っても姿が見えない。メールもなし。

『杏、どうした? 何かあった?』
 こちらからメールを送信する。するとすぐに既読がつき、返信が来た。

『ごめん! 今エスカレーターで3階に向かってる!』
 ホッと一安心。スマホを置いて杏の到着を待つことにした。



「侑、ごめんねーー! 遅れちゃった。自分から誘ったのにね? っていうか何? 侑のその服可愛いいんだけど!」

 相変わらずの陽気さ。今日は自分もスカートを履いてきた。去年買った冬物のロングフレア。キャメルの色に一目惚れして即買いしたもの。これなら、自分のダークブラウンのダウンにも合わせられる。今日はメークもしてきた。ファンデを塗って目と唇だけ。簡単に。

「でしょ? 今日は杏に寄せてきた。」
 杏に自然に笑いかける。杏のこの遠慮ない物言いが心地いい。杏は茶色のロングスカートに、初めて見る白くて長いダウンコートを着て、前をしっかりと閉めてさらにマフラーまでしていた。

「寒かった?」
 マフラーを解いて、お財布を持った杏に合わせて席を立つ。何か飲み物でも買いに行こうと話し合いながらジュースが置いてある店に向かって歩いて行った。

「杏、珍しいね?」
「最近レモンに凝っててさあ。」

 杏が選んだのはホットレモネード。自分はホイップクリームたっぶりのアイスコーヒー。いつもなら、杏はこってりした甘い飲み物を好むはず。

「で? 話って何?」

 自分も昨日一日、色々と考えた。純の押してた台車にぶつかったあの日には、杏も一緒だったし。今まで遭遇してきたことを話せば、杏がきっとアドバイスをくれる。でも、先ずは杏から。

 ずっと黙ったまま、添えられた小さなフォークでレモンをかき混ぜていた杏が、暫くしてポツリと呟いた。

「私、妊娠したんだよね。」

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