自分とアイツ、俺とオマエ

もこ

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遭遇7 〜侑〜

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「…………お前、侑か?」

 とにかく驚いて声が出なかった。お互いに数秒間見つめ合ってたと思う。先に口を開いたのは、純だった。

「……うん。」

 純の胸の辺りに視線を落として答える。純は真っ黒な革ジャンに中には茶色のニットを着ていた。何故かその色とVネックのデザインが、自分のTシャツと同じに見える。あの日、熱が出た時に着替えさせてもらったやつ。

「おい、こっちを見ろよ。」

 顔を上げると真剣な目をした純の視線とぶつかった。純の左耳に銀色のリング……ピアスをしてる。純がゆっくりと口元に手を持ってきた。

「お前、可愛いな。」

 胸の奥がズキンと痛む。何故痛むのか言葉にできない。でもここにはいられない、いや、いたくない。

「そう? じゃ。」

 素っ気ない返事を返して傍をすり抜けようとした。早く帰りたい。自分のアパートで着替えて、お気に入りの音楽でもかけて本を読みたい。でも、そうはいかなかった。

「待てよ。」

 腕を掴まれた。もう何が何だか自分でも分からずに、振り向きざまに自然と大声を上げていた。

「離してよっ! 離せっ!」

 涙が出てくる。手を振り解こうとしても、純の力の方が優って思うようにいかなかった。純に腕を引き寄せられる。よろけた拍子に純の胸に飛び込むような形になった。

「何泣いてんだ。ん?」

 鎖骨から純の声が聞こえる。右手で頭を抱え込まれた。そして左手で自分の体が引き寄せられていた。純の言葉で、自分が泣いていたことに気づく。

「何でもないから。離して。」

 自由になる左手で純を押して剥がそうとするけどうまくいかない。ガッチリと抱え込まれて身動きが取れなかった。

「泣いてる理由を話したらな。何? また元カレにでも会ったのか?」
「違う。」

 そんなんじゃない。そうなんじゃなくて。

「じゃあ何?」
「外見で決められたくない。」

 自然と言葉が出ていた。そう、自分は可愛く見せたいわけじゃない。普段はジーンズだし。むしろその方が自分らしいとさえ思ってるし。

 でも、その気持ちがどこから来ているのかが分からないんだ。男に間違われることが嫌ではないけど、違うと思う。スカートを履いて可愛いと言われても、違うと思う。……自分自身の心がどこにあるのかが分からないの。

「あぁ、何? 今日はスカートだからってか? 可愛いって俺が言ったから?」

 純の言葉に首を振る。そうなんだけど、そうじゃない。なんて言ったらいいか分からない。

「何だ? ……少し話してみないか? 聞くだけならできるかもだぞ?」

 純の言葉が温かかった。自分でも分からないこの気持ち。純になら話してもいいかな、そんなふうに思った。


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