自分とアイツ、俺とオマエ

もこ

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 ー純ー

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「で? 何で泣いた?」
 俺の中の気持ちが掴めずに混乱し、とりあえずは侑の気持ちを知りたい気持ちが勝って質問した。

「外見で、可愛いとか好みとか判断して欲しくない……。」

 外見……可愛い、好み? 普通の女なら可愛いと言われれば嬉しくなるんじゃないのか? 俺も興味がなくともとりあえず、若い女には「可愛いっすね。」と声をかけるが。いやそれで終わるけどな。

 何度かある女から告白された場面を思い出す。フワッフワの服を着た女から「好きです。」何度声をかけられたことか……。そんなに知り合いでもないのに。そういえば、このモールでそんなことが多かったな。

『可愛いっすね。でも俺、男にしか興味がなくて。』

 その度に驚いた顔をする女を置いて踵を返すのが常だった。どんな服装でも興味を持った女なんて今までに一度もなかった。でも、侑は……。

「お前はお前だろ? ズボンを履いてようが、スカートを履いていようが中身は一緒だ。『侑』という1人の人間。それに変わりはない。」

 そうだ。俺は侑を男か女かなんてとっくの昔に気にしなくなっていたんだ。侑が「侑」だからこそ気になって、そして知りたくなって……。

「そのままのお前でいいんだ。履きたければズボンだろうが、スカートだろうが、水着だろうが履けばいい。いや、水着姿はまずいか。警察に捕まるな。」

 胸の中から出ようとする思いに蓋をするように、言葉を道化させて伝えてみた。

「ぷっ! 今水着姿で歩いたら凍えちゃう。あはははっ!」
「ふっ。笑った顔のお前が1番いいよ。」

 案の定、侑が笑う。俺の隣ではいつも笑っていてほしい。えっ? 1番? 俺の隣では……いつも?

「ね、純の家ってどこなの?」

 侑に振られた言葉に救われる。気がつけば、公園の出口までやってきていた。少しだけ元気になったような侑の姿にホッとしながら、俺のマンションまで案内した。

 「寄ってくか?」と思わず言ってしまった言葉を速攻で断られて車に導く。俺の車、そういえばトラックにもこの車にもプライベートで人を乗せたのは侑しかいない。マンションにも、今まで誰も連れ込んだことはない……。

 侑に対するこの気持ちは何なんだろう? 男だとは思ってない。女だと確信しているが、何も気を遣わなくてもいい自然なやりとり。窮屈にも感じないし、性的なものも感じない……。

『いや、そうでも無いな。』

 一昨日感じた律動。本能のままに抱きしめてキスをして。そして、家に帰ってからも暫くは忘れられなかったのではないか? えっ? 俺って侑を抱きたいと思ってんのか? ……こんな、こんな小娘を?

 新たに湧いてきたこの気持ちを掘り下げちゃまずい。そう思いながら、隣に収まった侑がシートベルトをするのを確認して、車を発進させた。


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