自分とアイツ、俺とオマエ

もこ

文字の大きさ
65 / 87
遭遇8 〜侑〜

2

しおりを挟む
 学食は混んでいた。夏帆ちゃんと穂花ちゃんは何故か自分と同じメニューにしたがり、一緒に鯖の塩焼きとサラダ、お味噌汁と舞茸ごはんを選んだ。

「侑ちゃんの選ぶメニューってシブいね?」
「そう? なかなかお魚って家じゃ食べないから。」

 3人で座る場所を探す。すると、窓際の6人席の方からこちらを見ている人と目が合った。

『和樹!』

 男子5人で座る中の1人。遠いけど間違いない、和樹がこちらを見ている。付き合ってた時にはろくに視線を合わせなかったのに……。

 和樹の表情は読めなかった。微かに驚いた顔をしているような気がしたけど、ふと視線を外すと前にいる男の子に何やら話しかけたようだった。

「あ、侑ちゃんあそこ空きそうだよ?」

 夏帆ちゃんの声に我に返り、指差す方を見る。入り口から遠く、和樹が座る席とは反対の方で、今まさに食べ終わって立ち上がろうとしている集団を見つけて、3人で歩いて行った。



「「「ごちそうさまでした。」」」

 3人で同時に挨拶をする。結構楽しく話ができた。夏帆ちゃんと穂花ちゃんはアニメ好き。ちょうど推しているアニメの主題歌を歌っているグループが自分の一推しで、曲の話題で盛り上がった。2人も大好きと言っていて、意外と詳しかった2人と話が弾んだ。

 和樹の方には背を向けて見ないようにした。さっき目が合った時に微かに感じた動揺を蘇らせたくない。だから、いつ和樹が学食を出たのかは分からなかった。自分たちがトレーを持って立ち上がった時には、さっき和樹が座っていた席には違うグループが着いていた。

「自分、購買行くけどいい?」

 この後の授業は2人と一緒じゃない。ルーズリーフの紙を買っておきたいから、ここでお別れ。そんな気持ちで2人に声をかける。

「うん! 付いてく。」

 えっ? 人の買い物に付いてきて楽しいわけ? そんな感情がなかったわけじゃないけど、今までの経験で分かってる。女の子たちって、親しくなりたいと思うと結構一緒にいたがるんだ。

 夏帆ちゃんや穂花ちゃんの好意は嬉しい。でも、会話の端々に「カッコいい。」という言葉を乗せてくる。それが少し、いや大分居心地が悪い。どこがカッコいいのか言ってくれれば納得できるのかもなんだけど。

 2人は自分の後を付いてきて、穂花ちゃんは自分と同じB罫のルーズリーフを買った。夏帆ちゃんは、購買には可愛いのが何もないと嘆きながら、何も買わなかった。

「ね、夏帆ちゃんと穂花ちゃんは次の授業どこ?」

 3人一緒に外へ出る。次はF棟だから、自分はここから一番近いんだけど2人は? 歩きながら話しかけた。

「私はこれで終わり。」
「私はB棟で……。」

 2人の話を遮るように、購買の建物の傍から声をかけてきた男がいた。

「侑。」

 胸の奥で心臓がドキン、と大きな音を立てる。聞き覚えのある声に顔を向けると、案の定、そこには和樹が立っていた。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

なほ
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模るな子。新入社員として入った会社でるなを待ち受ける運命とは....。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

処理中です...