64 / 87
遭遇8 〜侑〜
1
しおりを挟む
月曜日になっても杏は学校に来なかった。2コマめの授業は一緒でいつもお昼は杏と食べるのが定番。机の下で杏にメールを送ると、すぐに返事が来た。
つわりが酷いらしい。今は実家に帰っているとか。昨日はあれから彼氏とそのご両親と一緒に自分の実家に行ったらしかった。
『大丈夫だったの?』
つい心配になって踏み込んだことを聞いてしまった。でも、杏の答えにホッとしている自分がいた。
『お父さんは激怒していたけどね。こっちはご両親も一緒に行ったから思ったほどじゃなかったよ? 来週、また彼が来てくれるんだ。大丈夫だと思う。父さんに堕ろせとは言われなかったし。私の体は心配してくれてるしね。』
良かった、大丈夫そう。授業のノートは見せるから、そう杏に伝えてメールを終えた。授業に集中しなくちゃ。冬休みの後はすぐにテストになる。そこからは自分のためにもノートを取ることに集中した。
今日も杏は学校に来なかった。2日連続。ということは明日も休むのかも。つわりってそんなに大変なのかな? 昨日は午後の授業がなかったから速攻で家に帰ったけど、今日は午後もある。今日は弁当にしようか、学食に行くか……。
「侑ちゃん、一緒にご飯食べない?」
授業が終わって夏帆ちゃんに声をかけられた。一緒にいるのは確か……穂花さん。いつも夏帆ちゃんと一緒にいる子。
「うん、是非。」
きっと夏帆ちゃんと仲のいい穂花ちゃんの話を聞いているだけになるだろうけど、それでも独りで食べるよりいいや。そんな気持ちになりながら、荷物をまとめて立ち上がった。
「侑ちゃんって、侑香ちゃんだよね? あれ? 侑ちゃんが正解なの?」
聞き役に回ろうと思ったはずなのに、外に出た途端に穂花ちゃんに話しかけられた。自分の両側に夏帆ちゃんと穂花ちゃん。後ろを歩くぐらいがちょうどいいのに。
「侑香だけど侑って呼んで? みんなにそうお願いしてる。」
穂花ちゃんとは1年の時に少しだけ話をしたことがある。あの時は「侑香」と呼ばれる方が多かった。
「侑ちゃんってさ、背が高いよねーー。」
「うんうん、カッコいい。」
両側から顔を覗かせて和かに話す顔が見える。2人とも同じくらいの背の高さ。杏よりは高いけど、160あるかどうか、そんな程度。
「そうかなあ。」
適当に返事をする。背の高さなんて問題じゃない。ま、自分が他の女の子より背が高めなのは自覚はしているけど。けれども「カッコいい」とは先週の金曜日に夏帆ちゃんに言われたばかり。
今日はいつもの茶色のダウンじゃなくて、ベージュのコートを着てきた。合わせてきたのはネル生地で裏起毛の温かなチェック地のズボン。少しだけ裾が広がっているのがお気に入り。
キャスケットの帽子を被ろうかと思ったけどやめた。茶色のキャスケットはこのズボンに似合わない。ズボンは全体的に深緑色に見えるから。
「でも今日はいつもと雰囲気違う。」
「うん、私もそう思った!」
2人の言葉に苦笑する。いつもジーンズが多いからかな。でも何も答えずに、それから何を食べようかと話が移り変わった2人に合わせながら、学食の入り口に入って行った。
つわりが酷いらしい。今は実家に帰っているとか。昨日はあれから彼氏とそのご両親と一緒に自分の実家に行ったらしかった。
『大丈夫だったの?』
つい心配になって踏み込んだことを聞いてしまった。でも、杏の答えにホッとしている自分がいた。
『お父さんは激怒していたけどね。こっちはご両親も一緒に行ったから思ったほどじゃなかったよ? 来週、また彼が来てくれるんだ。大丈夫だと思う。父さんに堕ろせとは言われなかったし。私の体は心配してくれてるしね。』
良かった、大丈夫そう。授業のノートは見せるから、そう杏に伝えてメールを終えた。授業に集中しなくちゃ。冬休みの後はすぐにテストになる。そこからは自分のためにもノートを取ることに集中した。
今日も杏は学校に来なかった。2日連続。ということは明日も休むのかも。つわりってそんなに大変なのかな? 昨日は午後の授業がなかったから速攻で家に帰ったけど、今日は午後もある。今日は弁当にしようか、学食に行くか……。
「侑ちゃん、一緒にご飯食べない?」
授業が終わって夏帆ちゃんに声をかけられた。一緒にいるのは確か……穂花さん。いつも夏帆ちゃんと一緒にいる子。
「うん、是非。」
きっと夏帆ちゃんと仲のいい穂花ちゃんの話を聞いているだけになるだろうけど、それでも独りで食べるよりいいや。そんな気持ちになりながら、荷物をまとめて立ち上がった。
「侑ちゃんって、侑香ちゃんだよね? あれ? 侑ちゃんが正解なの?」
聞き役に回ろうと思ったはずなのに、外に出た途端に穂花ちゃんに話しかけられた。自分の両側に夏帆ちゃんと穂花ちゃん。後ろを歩くぐらいがちょうどいいのに。
「侑香だけど侑って呼んで? みんなにそうお願いしてる。」
穂花ちゃんとは1年の時に少しだけ話をしたことがある。あの時は「侑香」と呼ばれる方が多かった。
「侑ちゃんってさ、背が高いよねーー。」
「うんうん、カッコいい。」
両側から顔を覗かせて和かに話す顔が見える。2人とも同じくらいの背の高さ。杏よりは高いけど、160あるかどうか、そんな程度。
「そうかなあ。」
適当に返事をする。背の高さなんて問題じゃない。ま、自分が他の女の子より背が高めなのは自覚はしているけど。けれども「カッコいい」とは先週の金曜日に夏帆ちゃんに言われたばかり。
今日はいつもの茶色のダウンじゃなくて、ベージュのコートを着てきた。合わせてきたのはネル生地で裏起毛の温かなチェック地のズボン。少しだけ裾が広がっているのがお気に入り。
キャスケットの帽子を被ろうかと思ったけどやめた。茶色のキャスケットはこのズボンに似合わない。ズボンは全体的に深緑色に見えるから。
「でも今日はいつもと雰囲気違う。」
「うん、私もそう思った!」
2人の言葉に苦笑する。いつもジーンズが多いからかな。でも何も答えずに、それから何を食べようかと話が移り変わった2人に合わせながら、学食の入り口に入って行った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる