不遇な神社の息子は、異世界で溺愛される

雨月 良夜

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第六章 最後の精霊の棲み処へ

北の農村ゲレルドルプ

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農村ゲレルドルプは、村の周囲を背の低い木製の柵で囲っていた。大体、俺の腰くらいの高さだろうか。
村の入り口には木造の屋根の付いた見張り台あり、村名の看板が吊り下げられている。とても長閑な田舎の風景だ。


入り口には人がおらず、出入りが自由となっていた。村の中心に向かって、人の足で踏み固められた道が続いている。
左右をよく見渡すと、少し土が高く盛られた畝が作られていた。どうやら広い畑のようだ。
ただ、その畑の様子がおかしいことに、すぐに気が付いた。

土が乾ききっているのか、黄土色に変色し土煙が頻繁に吹く。農作物が植えられていた跡があるが、全てが枯れて横倒しになっていた。本来の畑にある、青々と繁る葉が見当たらない。

中心部に向かって歩いていくにつれて、この村の異様さが目立ってくる。

『牧場』と看板を屋根掲げた家。木の柵で囲われた敷地内には、生き物が一匹もいない。家自体も窓に木板を釘打ちされていた。人が住んでいる気配が全くしないのだ。

果樹園だったであろう場所は、葉が一枚も生えていない。枯れて朽ちた木が並んでいるだけだった。

民家がぽつぽつと並び始めた、村の中心部に到着する。
白い漆喰と、木製の屋根で出来た簡素な平屋建てがほとんどだ。

どの民家も窓に板張りをして、静かに佇んでいるだけだった。生活の景色が全く見えない。民家の庭を見ると、どの家にも小さな畑がある。やはり植物は枯れていた。

村の入り口から歩いて30分ほど、村人とすれ違っていないし、見かけることも無かった。明らかにおかしい。


「……以前は畑も潤い、果樹園には果物が実って豊かな村だった。今年に入って農作物の不作が続き、村を出ていった若者が多いんだ。」

周りの寂し気な景色を見ながら、スフェンが説明してくれた。


しばらく人のいない静かな民家の並びを通り過ぎると、他の家よりも大きく造りがしっかりした家が建っていた。庭も広く、柵で囲われた敷地内に大小の平屋の建物が2つ並んでいる。

その家の庭で、水を撒く男性がいた。この村で初めて見かけた村人だった。その男性もこちらに気が付いたのだろう。畑に水をあげながら、驚いた顔をしていた。


「……こんにちは。冒険者の方ですか?それとも旅人さんですか?」

男性が俺たちを訝し気に見ながらも、丁寧に話しかけてくれる。歳は30代後半くらいだろうか。
赤茶色の髪に瞳が紫色。小麦色の日焼けした肌、体格が少しがっちりとした男性だ。


「こんにちは、冒険者です。私はこのパーティのリーダーをしているスフェンと言います。……この村には、貴方しか村人がいないのですか?」

自己紹介をした後に、スフェンが男性に尋ねる。男性は首を振ると、申し訳なさそうな顔をした。


「私はこの村の村長の息子、タンドレッスと申します。村には、私たち家族を含めた4家族が残っています。不作続きで生活が立ち行かず、親戚を頼ったり街に出稼ぎに行ったりしている者がほとんどです。……この村にも宿屋があるのですが、今は閉めています。泊る場所がなく、申し訳ない……。」

この家が他の民家より大きいのは、村長の家だったからか。タンドレッスと名乗った男性の足元には、かろうじて緑を保っている小さな畑があった。


「テントもあるし、野宿には慣れています。……もしよろしければ、この村の話をお伺いしてもいいでしょうか?」

この村の現状を正確に知ったほうがいいと、スフェンが考えたのだろう。スフェンの言葉に一瞬驚いたような顔をしたタンドレッスは、その後に嬉しそうに微笑んだ。


「久々に外から来たお客様とお話をします。なんだか嬉しくもあり、寂しいですね……。良かったら、私の家にお入りください。少し長い話になるでしょう。」

俺たちは村長の家の庭に入ると、右側に建てられた小さな平屋に案内された。ちなみに、左側の家が、村長家族が住んでいる住居だという。


その小さな平屋の建物は、村の集会所としている建物で、縦長だった。案内された部屋は会議室で、中に入ると木製の床に白い漆喰の壁。
部屋の左右にはガラス窓が複数設けられていており、日差しが入るようにされていた。

一つの長テーブルに椅子が10個ほど設置されている。タンドレッスは俺たちを椅子に座るように促すと、お茶を用意すると言って席を立った。
他の部屋に、キッチンやトイレを設けているのだと、タンドレッスが説明してくれた。しばらくして、タンドレッスは老人と共にお茶を運んで戻ってきた。


「冒険者の皆さま、この村によく足を運んでくださいました。私は村長のセネクスと申します。……いやはや、この村にお客様が来るのは何時ぶりでしょう。嬉しくて私もお話に参加させていただけませんか?」

村長のセネクスさんは、薄い赤茶色の髪と瞳の優し気な老人だった。スフェンが了承の意を伝えると、俺たちと村長たちは、向い合わせで椅子に座った。

パーティーメンバーそれぞれが自己紹介をしたあとに、村長はこの村について話を始める。


「この村は豊かな農村でした。村民は自然と共存して、自然の恵みに感謝しながら生活していました。……光精霊の恩恵を受けていた土地なのです。」


目元を哀しげに歪めて、セネクスさんは話を続けた。




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