不遇な神社の息子は、異世界で溺愛される

雨月 良夜

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第七章 かの地に導かれて

教皇の間へ

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紅炎騎士団員に横抱きされていセラフィス枢機卿を、皇太子殿下は振り返る。


「……さて。……教皇の間とやらに、案内してもらおうか。」


幾分か呼吸が整ったセラフィス枢機卿は、俺たちの正面にある扉を指差した。その扉は、両開きで、やはり天井近くまで高さがある。

豪華な金色のゴテゴテと凝った装飾に、扉の中央には神殿のマークが金色で刻まれていた。


「あの扉の先に教皇の間があります……。この先は多くの魔物が待ち構えている……。」

なんでも、セラフィス枢機卿でさえ、教皇の間に入ったことは片手で足りる回数しかないらしい。そのたびに、魔物が蔓延る廊下を通っていたそうだ。


本来、人がいる建物内には魔物は生息しない。
おそらく、邪神シユウが創り出したか、呼び寄せた魔物だろう。教皇の間付近にいる魔物は、明らかに狂暴化している姿だと、セラフィス枢機卿が教えてくれた。


大広間の大きな扉を開き、俺たちは先へと進んだ。幅の広い長い廊下が続いている。

神殿本部内は白色で統一され、明るい印象のはずだが、邪気の黒い靄が周囲を漂い仄暗い。

魔道具のランプは点々と壁に設置されている。しかし、その明りも靄によって霞んでいた。


側面にガラス窓があるのに、陽光が全く入ってこない不気味な廊下。仄暗い闇に紛れて、グルルッと唸る声や、獲物を狙う荒い息遣いが聞こえてくる。

忍び足で足音を消しながら、こちらを探り、確実に近づいてくる気配がする。俺の『感知』には、至る所に魔物の反応が表示されていた。


「お前たちは魔力を温存しろ。……魔物は、俺たちが引き受ける。」

皇太子殿下の言葉に合わせて、紅炎騎士団員も俺たちに視線を向けて頷いてくれる。一緒に魔物討伐をした彼らの強さは、とても頼もしい。

俺たちパーティーを内側にして守り、外側を騎士団員達が守ってくれている。そして、何処からともなく、狼型の魔物が闇に紛れながら躍り出てきた。


異形の餓えた唸り声を聞きながら、廊下を駆ける。所々で騎士団員が剣をとり魔物と戦闘している。皇太子殿下が先頭で駆け、魔物を屠っていく。


「チッ。切りがねえな……。」


皇太子殿下は、おもむろに懐へと手を差し入れた。片手に収まる大きさの魔石に、鎖が巻かれた変わった魔道具を取り出している。

魔道具を持っていた皇太子殿下の手から、白金色の魔力が魔道具へと流れ込んでいった。


「全員伏せろ。」


そう言うが早いか、その魔道具を皇太子殿下が、前方にひょいっ、と下から軽く投げた。ちょうど、魔物達が蔓延っている廊下の地面に、魔道具が音を立てて落ちる。


ドゴォォォォオン!!


大気が震える凄まじい爆発音が響いた。それと同時に、眩しい閃光で視界が遮られる。衝撃がこちらにも伝わり、爆風が俺たちの服や髪を乱暴に翻す。

眩しさが止み目を開けると、前方にいた魔物が横になって倒れ、絶命していた。ビクビクと痙攣して、僅かに生きている魔物を見ると、ビリッと時折電気がその身体に流れているようだった。


「光魔法を流すと爆発して、電流が流れる爆発物だ。魔導師団長の特注品だぞ。」


なんと、魔導師団長は第二王子らしい。しかも、かなりの魔法オタクだと皇太子殿下に説明された。


「また、えげつないモノを渡されましたね……。」

スフェンが遠い目をしている。
皇太子殿下とスフェンは、よく第二王子から魔道具の試作品を渡されるらしい。光魔法があれば防御結界が張れるからだ。

ちなみに、魔力の消耗を抑える腕輪を作ったのも第二王子だそうだ。


皇太子殿下は、その爆発物と長剣を駆使しながら、廊下の奥へと進んでいく。騎士団員と皇太子殿下の攻撃で、魔物の数は確実に減らされ、やがて一匹もいなくなった。
俺たちパーティーメンバーは、全く手を出していない。


廊下の奥にある扉は、先ほどよりもさらに豪華だった。赤い艶のある木製の扉は、天井までの高さがあるのはもちろん、天使の彫刻が施され、宝石が散りばめられていた。花の彫刻は金で装飾されている。


神官は質素な生活を送るはずだが、この扉は明らかに贅の限りが尽くされていた。白磁のシンプルな壁に、過剰までに豪華な装飾の扉は、不釣り合いで醜い。


「……神官タグで開きます。皆さん、下がって。」

騎士団員に横抱きにされていたセラフィス枢機卿が、地面に降ろしてもらっていた。先ほどの先頭でヒビが入った神官タグを、騎士団員がセラフィス枢機卿に渡す。

セラフィス枢機卿は、神官タグを右手に持つと軽く額に当てた。そして、額に当てた神官タグを扉に嵌め込まれた宝石の1つに宛がう。その宝石は、扉に彫刻された花の一部だ。キラリと一瞬、宝石が光り輝いた。


ゴゴゴォォォっと言う音とともに、重厚な扉が独りでに内側に向かって開く。


「……ここが、教皇の間です。」


セラフィス枢機卿が、重々しく口を開いた。



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