不遇な神社の息子は、異世界で溺愛される

雨月 良夜

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第八章 決戦

教皇




ゴゴゴォォォっと言う音とともに、重厚な扉が独りでに内側に向かって開く。


「……ここが、教皇の間です。」

セラフィス枢機卿が、重々しく口を開いた。


艶のある白色の石壁に床。とても長く広い道。
その先には、数段の階段が続く。

階段の先には、円状の舞台。舞台には天井からの光が一身に降り注いでいた。どうやら、そこだけに光が燦燦と降り注ぐように設計されているようだ。


その舞台のある壁の上部には、円状の大きな嵌め殺しの窓。ステンドグラスで出来た窓は、細かな幾何学模様を描き、室内に鮮やかな光彩を散らしていた。


舞台の横幅いっぱいに設置された石像。全てが3メートル近くある巨大な石像だ。中央にあるのは創造神の石像。
そのほかにも女神や天使の石像が、部屋の円状の壁に沿って弧を描いて設置されていた。


石像の前には、一つの椅子。白色の椅子は、背もたれから脚の先の細部にわたり、金で細工が施されている。座面には赤色の上質な布が張られ、見るからに柔らかそうだ。

猫の手のように先が丸まったひじ掛けに、両腕を乗せた傲慢な姿で座る人物が一人。


純白の裾の長い神官服は、今まで見た神官の中で一番豪華なものだ。ローブには金色の複雑なアラベスク模様が、裾や襟元に幾重にも刺繍されている。


頭には縦に長い五角形の、同じく純白の帽子を被っていた。帽子の中央には、神殿のマークである星に似た幾何学模様が、宝石と金糸で縫い付けられている。

右手には金色の杖を持ち地面についていた。


此方の世界では、いささか小柄と言っていい、
中年男性だ。


俺は目を見開いた。

贅肉を揺さぶる、たるんだ身体。
首から顎、目も肉に埋もれながら、弧を描く下卑た笑み。

そのどれもが不快で怖気がした。

あれが、教皇か。


「……ほお、ただの人間風情が。ここまで辿り着くとはな。」

ねっとりとした、嗤笑を隠しもしない声。
伯父に背格好がよく似た、小太りの醜悪な男性が鎮座していた。


日本刀の黒色の柄を握っていた右手が、カタカタと震えた。


落ち着け。
俺を襲った伯父は、餓鬼によって殺されて死んだ。
体格と、あの貼り付けたような下卑た笑みが似ているだけだ。目の前にいるのは伯父ではない。


ただ、その視線が。その声音が。
俺の内に巣食っていた恐怖を煽る。


邪気が濃く、部屋自体が暗い。今までで一番濃い邪気は、長くいれば息苦しくなりそうだ。
俺は浄化の呪文を唱えて、部屋全体を浄化した。
浄化が部屋全体に行き渡ったとき、教皇が侮蔑と嫌悪を含んだ様子で笑った。


「……はっ!忌々しい。……やはり、あの陰陽師と同じ力か。」

そう言って、教皇は左手で頬杖をついた。


「この世界まで来て、我を封印しようなどと、愚かなことよ……。…しかし、目の前にすると、そなたはあの男と違って実に美しい。……食せば、さぞ美味であろうなあ。」

口を開けて教皇が舌なめずりをした。その舌は顔の顎下までも届くほどで、人間にしては異様に長い。

俺の全身から内部までも舐めまわす様に、教皇の視線が這う。その視線に、俺は全身から嫌悪の鳥肌が立った。


教皇の目の色が、みるみると変わっていく。白目部分が黒色に、瞳孔部分は血色の赤黒いドロリとした色。


「……まあ、これもまた一興。遊んでやるとしよう。」

杖を突いて立ち上がった教皇の足元から、赤黒い魔力が立ち昇る。その魔力は木の根のように太く、床から上に向かって這い出ていた。
燻って揺れ動く様は、数多の蛇がこちらを向いて獲物を狙うかのようなに、おどろおどろしい。


黄金の杖にも、魔力が蛇のように絡みつく。もはや、杖自体が赤黒い魔力で見えなくなりそうだ。教皇は右手を上に掲げ、地面を杖で打ち鳴らす様に一度だけ突いた。


杖を中心に、赤黒い炎が四方八方に地面を這う。地面を一線になって這う速度は、速い。俺たちは各々が跳躍して回避をする。炎はしばらく迸り、火柱が立つ。


ふははははっと、教皇が醜い肉を揺さぶりながら、上を見上げて高らかに笑った。


「……人間など、我にとっては羽虫だ。邪魔なただの虫に過ぎん。……どれぐらい耐えうるだろうなぁ?……瞬き一つの刻と、さほど代わらぬであろう。」


全員の魔力と闘気が、一斉に張り詰めた。


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