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番外編(王立騎士・魔導士団対抗武道大会)
各戦況
しおりを挟む控え室に帰ると、蒼炎騎士団の皆が「おかえり」と出迎えてくれた。
「いつも通り、舞のような美しい剣術ですね。」
怪我がないか確認されつつ、ヴェスターがふわりと微笑んだ。自分ではあまり自覚がないが、以前、スフェンにも同じようなことを言われた。
「……属性の制限があるが、今のところは大丈夫そうだな。」
ヒューズの言葉に、俺は頷いた。
実は、今回の大会に俺が参加する際に、スフェンと約束をしたことがあった。
それは、使用する魔法属性を2つに制限すること。
俺は精霊王ベリルに授けられたチート能力で、全属性の魔法を使用できる。しかし、さすがに全属性を操れることは、公には出来ない。常人ではあり得ないからだ。それこそ、精霊王の愛し子など、何か勘繰られる可能性がある。
一般的に主に使用できる魔力属性は、1つか2つ。3つ以上使用できるのは稀で、優秀な魔導士になれる。だから、俺も今大会では2つに絞った。
スフェンと相談の上、使用するのは、風、水、になった。
俺の得意とする氷魔法は、水属性魔法になる。
「……今のところは大丈夫だ。……でも、油断は出来ないな。」
魔法剣術部門は、やはり基礎的な戦闘能力が高い人が多い。一瞬の隙が命取りになりそうだ。
その後も、順調に蒼炎騎士団のメンバーは勝ち上がっていく。
魔法部門では、ヴェスターが決勝まで進み、魔導士団副団長に敗れて2位。マルスさんも、準決勝で魔導士団副団長と対戦して負け、3位に入賞した。
剣術部門は、ヒューズが決勝まで勝ち上がり、紫炎騎士団副団長と対戦する。
ツェルは、準決勝で緑炎騎士団員に敗れて、3位だった。
……ツェルは、本気を出していないな。それなりの成績を収められるように加減したのだろう。
俺も、何とか決勝戦まで勝ち上がった。
ここまで対戦した中でも、魔導士団員の魔道具が難敵だった。その魔道具とは、金属で作った巨大なゴーレムだった。
何というか、ファンタジーのメカニックみたいな……。
どっしりとした全長3メートルほどの大きさで、会場入りするときには、仲間の魔導士団員の人が、マジックバッグからその巨体を出していた。
魔道具の中心部分に簡易的な座席があり、魔導士団員が腰かける。魔道具の至るところに描かれた魔法陣に魔力を流して、操るという代物だった。操縦者は、「フフフフっ」と笑っていた、あの魔導士団員である。
金属自体も固かったし、巨体から繰り出される一発の威力が凄かった。
……ただ、関節部分の魔石が動力であり、なおかつ弱点だった。しかも、機能性を重視してか、全く弱点を隠していなかったため、とても的にしやすかった。
魔石を攻撃して破壊し、機体をバラバラにしてしまったけど……。なんだか、ごめん……。
可哀そうなことをしたが、こっちも必死だったんだ。
魔導士団員の人は、「改良してリベンジします!」と意気込んでいた。
俺の決勝の相手は、緑炎騎士団副団長だ。剣術もさることながら、魔法騎士としても有名な人だ。街の治安維持活動でも、より凶悪な者たちを相手にしている。
気を引き締めないといけないな。
決勝戦は1試合ずつ行われていた。体術部門は緑炎騎士団の補佐官が優勝、魔法部門は魔導士団副団長が優勝した。
ヒューズは激しい攻防の末に、なんと紫炎騎士団の副団長を倒して優勝。この試合が終われば、剣術部門の最高峰である、紫炎騎士団長と対戦することになった。
そして、俺の順番がやってきた。
「ミカゲの対戦相手は、緑炎騎士団のロト副団長か……。あの人は中々に強いし、日頃悪漢を相手にしているから、戦闘になると遠慮がない。ミカゲでも気を引き締めて行けよ。」
ヒューズにアドバイスをされながら、俺は決勝戦へと臨んだ。
闘技場で向かい合った緑炎騎士団のロト副団長は、30代後半の落ち着いた男性だった。
この熱気渦巻く闘技場の中で、落ち着いて淡々とした様子は、強者の風格だった。今まで戦ってきた人達よりも、隙がない。
狩りをするときの、息を殺して獲物を狙うような、そんな静けさのある人だ。
ロト副団長は俺を見ると、僅かに目を見開いた。
そして、気を取り直した……。というよりは、より一層警戒を引き上げたようだ。
キンッと、よく研ぎ澄まされた薄く鋭い刃のような、鋭利な闘気が向けられる。それだけでも、相手を十分威圧できるだろう。
俺は、意識を集中した。
深い意識の泉に沈む。
たとえ、殺気や闘気をどんなに向けられようとも、
意識の水面は揺れない。
それで、いい。
「始め!」
魔法剣術部門の、決勝戦が始まった。
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