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番外編(王立騎士・魔導士団対抗武道大会)
魔法剣術部門、決勝戦の行方
しおりを挟む真っ白な雪。獰猛で気高き、白き狼。
イメージは氷河期。
氷の花が舞うほどの氷点下、凍てつく吹雪。
美しく厳しい、自然の猛威。
そこに立つ、静かな猛獣。
「……白狼。」
呟いたと同時に、俺は左足で地面を蹴って大きく踏み込んだ。
足元から、地面を覆う氷の軋む音が聞こえる。俺の周囲の地面だけ霜が降りた様に白く、氷が凍てついた。角が鋭い幾何学模様が地面を彩る。
そのまま、身体を反らせて捩じると、刀を右に大きく薙ぎ払う。
月光のように静かな佇まい。
ふわりとした雪を思わせる真っ白な身体。
すらりとした筋肉の付いた4本の足。
凍える氷の水色をした、切れ長の瞳。
薙ぎ払った斬撃は冷気。その冷気が白狼の姿となって、ロト副団長へ宙を駆けていく。駆け抜けた道筋には、白色の氷が一線になっている。
氷嵐を纏った白狼の1匹が、ロト副団長に大きな口を開いて、強固な氷でできた白色の歯を剥き出しにして迫る。
「冷気の狼か。やるな。」
左手に炎が揺らめく頭部ほどの火球を作り出し、至極冷静に手を突き出した。灼熱の玉は火の粉を散らしながら、白狼へと飛んでいく。白狼はそれを軽々と避けると、冷気を纏いながら狩りをするように、ロト副団長の横に回った。
ロト団長の鈍色の細剣が、冷気を浴びて白っぽくなり光を失う。今頃、ロト団長の周りは極寒だろう。白い息を口元から吐いたかと思うと、ロト団長は初めて表情を変えた。
「っ、身体が凍る。」
眉根を寄せて、少し嫌そうな声音で呟いた。振り向きざまにロト団長は細剣に、炎の渦を巻きつける。ロト副団長に左から迫っていた白狼の、額を突き刺した。
白狼の額には雪の華を思わせる、透き通った透明の模様に、切っ先が触れる。
キンッ!
「っ?!!!」
甲高く鋭い衝突音が聞こえた。白狼は姿を消し、鋭利な切っ先が突き刺さった雪の華は、粉々に散ると結晶形の花びらが散らした。太陽の光を反射した花びらが、一つの氷華として生まれ変わる。
キンッ、キンッ、キンッ、
散った花びらは、氷華の種に。幾重にも舞い散った花びらが、華となりロト副団長の周りを囲う。大小さまざまな氷華は、やがて細い氷柱で繋がる。
白狼だけをイメージしたのではない。
相手を瞬時に、戦闘不能にするために編み出した魔法。
「囲え!」
キンっ。
その凍てつく一音を最後に、魔法が止まる。
透き通った氷の檻が、闘技場に出現する。白く凍り付いた床に、鋭利な氷華と細い氷柱が繋がり、繊細な編み目のような模様を描いている。
檻の中には、足元を氷結晶で氷漬けにされた、ロト副団長が立っていた。
「……寒い。」
銀色のスノーダストが吹き荒れた吹雪が、ロト副団長を襲う。いくら火魔法が使えたとしても、凍てついた強風が踊る檻の中では、火を付けれないだろう。言葉を紡いでいるロト副団長の身体を、氷が這い上って覆っていく。
白い吐息を一つ。ロト副団長がため息交じりに呟いた。
「………参った。」
パリンッ!!
しばらくして、ロト副団長の右胸に付けされた魔石が砕ける。
光魔法に防御結界がロト副団長を覆った。俺はそれを確認して、氷の檻を解いた。粉々に砕けた氷が、風に流れて観客席まで粒子を飛ばした。
「そこまで!勝者、蒼炎騎士団ミカゲ!!」
審判員の合図で、俺は日本刀を鞘に納める。歓声が響く中で、ロト副団長が俺に近づいて、右手を差し出した。俺も手を差し出して、お互いの健闘を称えて、硬く握手を交わす。
「君はすごいな。危うく凍え死にそうになった。それに、恐ろしく美しい魔法だ。……また、機会があったら、手合わせ願いたい。」
「ロト副団長の魔法も剣術も、早くてギリギリの戦闘でした。俺も是非、機会があれば手合わせをお願いします。」
強者と交えるのは、自分の戦闘を成長させるうえで重要だろう。今回の戦闘も大変勉強になったし、今後とも指導していただきたい。
俺の言葉にロト副団長は、少しばかり目を細めた。
僅かに口角が上がって、すぐに戻る。
そして、各団長たちが集う舞台上を仰ぎ見た。
「君のところの団長と対戦するのだろう?……控室から見守っているよ。」
ロト団長の目線の先には、濃紺の特別制服に身を包んだ男性。
金糸の髪は、太陽の光を一身に受けて強く輝く。
エメラルドの美しき宝石は、
内側から己の強さを誇らしげに示す。
不敵に口角を片方だけ吊り上げた、形の良い唇。
強烈にして苛烈。
戦闘においては、冷酷ともいえる判断の速さ。迷いの無さ。
我らが蒼炎騎士団団長、スフェレライト・グラディウス。
美しくも恐ろしいと言う言葉は、
我らが団長に一番ふさわしい。
遠くにある舞台上から、その深緑色の宝石に射貫かれた。
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