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前世の世界
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死んだようにひっそりと自室で本を読んで過ごしていた僕は気づけば16歳になっていた。
最後に両親に会ったのはいつだったか。もう僕の顔など覚えてもいないのではないだろうか。
アリスティアは今14歳。彼女とはほとんど話したことがないままここまできてしまった。もう今後も関わることなどないだろう。
そしてもう1人、僕が10歳の時、両親はついに優秀な養子を迎えた。その子の名前はテオドアで、アリスティアと同い年だ。薄ら青みがかった金髪に青い瞳で属性は水らしい。魔力量も多く成績も優秀な彼を遠い親戚から養子にと譲り受けたのだと言う。
「お前が役に立たないから優秀な養子を迎え入れたのだ。」
そう言って父に顔合わせの場に連れて行かれたのがテオドアと会った最初で最後の記憶だ。
その頃には僕は感情が抜け落ちていて、小さく「申し訳ございません…」とだけ言ったのを覚えている。テオドアは僕たちを見て狼狽えていたけれど、簡単な挨拶を済ませて再び自室に戻った僕に、敢えて関わろうとはしなかった。
そして、アリスティアとテオドアが14歳となったその年、事件は起きた。
最近聖女だと発覚した男爵令嬢イザベラをアリスティアが虐めていたと言うのだ。さらには毒殺未遂まで…
そんなわけであれよあれよと侯爵家は罪を問われ現在に至る。
他の家族は何やら喚いていたけれど、僕は抵抗も何もせず衛兵へと捕まり別々の牢へと入れられた。
「本当にいたのか。ウッドセン家のゴースト…」
「ああ、初めて見た。まるで死人みたいだな…」
僕を捕まえた衛兵たちからそんな声が聞こえる。ほとんど部屋を出たことがないのだから、見たことがないのは当然だと思いつつ、何もかもどうでもいいと言うふうに僕は牢の中で寝転がった。
そんな中で僕に面会を申し込む人物が2人だけいた。
1人は義弟のテオドアだ。彼はアリスティアの断罪に一役買ったとして、罪を免れるどころか、一族が断罪された後ウッドセン家を引き継ぐらしい。
「お兄様、お久しぶりですね。本当に…」
「テオドアか…久しぶりだね。」
「元気そう…ではないですね。出会った頃からずっと。」
「そうかな。よくわからないや…」
力なく返事をする僕をテオドアは真剣な顔でじっと見つめた。
「お兄様は今回の事件とは何も関係がない。」
「…そうだね。」
「だから、お兄様だけなら…助けることができます。」
僕は最初その言葉の意味がわからなかった。助けるって、テオドアは一体何を言っているのだろう。
「ねぇ、お兄様。お兄様はここから出たらウッドセン家の名は名乗れなくなります。でも、こんなところで死なないで、平民としてやり直しませんか?」
そうしてやっとテオドアが何を言っているのがわかった。もともと存在しているのか謎だった僕をウッドセン家から消し、ただのジョシュアとして生き直せと言っているのだ。
でも僕はゆっくりと首を振った。
「な、なぜですか?このままだと処刑されてしまうんですよ?」
「それで、良い…生きていたいとは思わないから。」
「そんな…」
僕の言葉にテオドアはひどく悲しそうな顔をした。
なぜほとんど話をしたこともない僕のことをそんなに想えるのだろう。あまり知らなかったけれど、テオドアは優しい子だったのだな。
僕は何かに耐えるように唇をキツく結んだテオドアを無言で見つめることしかできなかった。
「わかりました。でも、まだ…まだ3日あります。その間に気が変わったら衛兵に言って僕を呼んでください。」
そう言って去ろうとしたテオドアに、せめて礼を言わなければと思った。
「テオドア。ありがとう、僕のことを気にかけてくれて。」
こんな僕のことをここまで考えてくれるなんて、血の繋がらない彼が1番自分を気にかけてくれた。そう思って礼を言う。僕の意思が変わることはないけれど、それでも最後にこんな優しさに触れることができてよかった。
「っ!」
そう思っての礼だったのに、テオドアは泣きそうな顔をしたと思ったら、くるっと背を向けて去ってしまった。
最後に両親に会ったのはいつだったか。もう僕の顔など覚えてもいないのではないだろうか。
アリスティアは今14歳。彼女とはほとんど話したことがないままここまできてしまった。もう今後も関わることなどないだろう。
そしてもう1人、僕が10歳の時、両親はついに優秀な養子を迎えた。その子の名前はテオドアで、アリスティアと同い年だ。薄ら青みがかった金髪に青い瞳で属性は水らしい。魔力量も多く成績も優秀な彼を遠い親戚から養子にと譲り受けたのだと言う。
「お前が役に立たないから優秀な養子を迎え入れたのだ。」
そう言って父に顔合わせの場に連れて行かれたのがテオドアと会った最初で最後の記憶だ。
その頃には僕は感情が抜け落ちていて、小さく「申し訳ございません…」とだけ言ったのを覚えている。テオドアは僕たちを見て狼狽えていたけれど、簡単な挨拶を済ませて再び自室に戻った僕に、敢えて関わろうとはしなかった。
そして、アリスティアとテオドアが14歳となったその年、事件は起きた。
最近聖女だと発覚した男爵令嬢イザベラをアリスティアが虐めていたと言うのだ。さらには毒殺未遂まで…
そんなわけであれよあれよと侯爵家は罪を問われ現在に至る。
他の家族は何やら喚いていたけれど、僕は抵抗も何もせず衛兵へと捕まり別々の牢へと入れられた。
「本当にいたのか。ウッドセン家のゴースト…」
「ああ、初めて見た。まるで死人みたいだな…」
僕を捕まえた衛兵たちからそんな声が聞こえる。ほとんど部屋を出たことがないのだから、見たことがないのは当然だと思いつつ、何もかもどうでもいいと言うふうに僕は牢の中で寝転がった。
そんな中で僕に面会を申し込む人物が2人だけいた。
1人は義弟のテオドアだ。彼はアリスティアの断罪に一役買ったとして、罪を免れるどころか、一族が断罪された後ウッドセン家を引き継ぐらしい。
「お兄様、お久しぶりですね。本当に…」
「テオドアか…久しぶりだね。」
「元気そう…ではないですね。出会った頃からずっと。」
「そうかな。よくわからないや…」
力なく返事をする僕をテオドアは真剣な顔でじっと見つめた。
「お兄様は今回の事件とは何も関係がない。」
「…そうだね。」
「だから、お兄様だけなら…助けることができます。」
僕は最初その言葉の意味がわからなかった。助けるって、テオドアは一体何を言っているのだろう。
「ねぇ、お兄様。お兄様はここから出たらウッドセン家の名は名乗れなくなります。でも、こんなところで死なないで、平民としてやり直しませんか?」
そうしてやっとテオドアが何を言っているのがわかった。もともと存在しているのか謎だった僕をウッドセン家から消し、ただのジョシュアとして生き直せと言っているのだ。
でも僕はゆっくりと首を振った。
「な、なぜですか?このままだと処刑されてしまうんですよ?」
「それで、良い…生きていたいとは思わないから。」
「そんな…」
僕の言葉にテオドアはひどく悲しそうな顔をした。
なぜほとんど話をしたこともない僕のことをそんなに想えるのだろう。あまり知らなかったけれど、テオドアは優しい子だったのだな。
僕は何かに耐えるように唇をキツく結んだテオドアを無言で見つめることしかできなかった。
「わかりました。でも、まだ…まだ3日あります。その間に気が変わったら衛兵に言って僕を呼んでください。」
そう言って去ろうとしたテオドアに、せめて礼を言わなければと思った。
「テオドア。ありがとう、僕のことを気にかけてくれて。」
こんな僕のことをここまで考えてくれるなんて、血の繋がらない彼が1番自分を気にかけてくれた。そう思って礼を言う。僕の意思が変わることはないけれど、それでも最後にこんな優しさに触れることができてよかった。
「っ!」
そう思っての礼だったのに、テオドアは泣きそうな顔をしたと思ったら、くるっと背を向けて去ってしまった。
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