3 / 49
前世の世界
3
しおりを挟む
そして2人目の面会者。現れたのは赤い髪に紫の瞳の令嬢だった。
「久しぶりね、ジョシュ…」
「ゾーイ…」
彼女はゾーイ・アダムス。伯爵令嬢だ。僕がまだ6歳の頃、ウッドセン家で開かれたお茶会で出会った。
もちろん、僕はお茶会に参加していた訳ではない。それどころか、お茶会が開かれていたことも知らず、図書室と自室を往復していた際に邸宅内で迷子になっていた彼女と出会ったのだ。
「ちょっとそこのあなた!」
後ろから快活な女の子の声がしたが、僕は素知らぬ素振りでそのまま自室へ戻ろうとした。まさか自分に声をかけられたのだとは思わなかったのだ。
「ちょ、ちょっと!あなたよ、あなた!あなたしかいないでしょう!」
そう言って慌ててこちらへ駆け寄ってきた彼女は僕の腕を掴んだ。
「っ!」
そして振り返った僕の顔を見て固まった。
「き、綺麗…」
「?」
しばらくそこから動かない彼女に仕方なく僕から声をかける。
「あの…何か?」
「あっ!そうだったわ、私会場の場所がわからなくなってしまって。悪いけれど、案内してくださない?」
「会場?」
「お茶会の会場よ!」
「お茶会をやってるの?」
「…あなたお茶会の参加者じゃないの?」
その言葉に僕はフルフルと首を振る。
「それじゃあ…?」
「僕は…ジョシュア。一応この家の子なんだ。」
「まあ、そうだったの!ならウッドセン家当主様の肖像画がある部屋といえばわかるかしら?」
「ああ…」
そうして僕は彼女をお茶会の会場とやらまで案内することになった。…本当は一刻も早く部屋に戻って本を読みたかったけれど。
彼女は道中もとてもよくしゃべった。
「私はゾーイと言うの。アダムス伯爵家の長女よ!うちの家はお父様がやり手で、子爵家から伯爵家へ上り詰めたの。」
「へぇ、それはすごいね。」
「ええ!弟も生まれてうちは安泰だって皆言ってるわ。」
「そうなんだ…その、ゾーイは…ご両親と仲はいいの?」
楽しそうに自分の家族について話をする彼女を見て、ふとそんな疑問が口をついて出た。
「ええ、うちは家族全員仲がいいわ。あなたは?」
「僕はあまり…僕以外の家族がどうかは知らないけど…」
「そう、なの…」
雰囲気を暗くしてしまっただろうか。そう思って彼女の顔色が気になったが気づけば目的地のすぐ近くまで来ていた。僕はやっと自室に戻れることにホッとして、ゾーイに向き直る。
「ほら、あそこの部屋が肖像画のある部屋だよ。」
「あなたも一緒にお茶会に参加しましょうよ。」
「いや、僕は…両親に嫌われてるから。」
「そんなになの…?」
僕は曖昧に笑って頷いた。
「それじゃあ、さようなら。」
そう言って去ろうとすると、彼女が僕の背に向かって話しかけてきた。
「あの!手紙を送るわ。」
「?」
「だ、だから気が向いたら返事を書いてね。」
そう言ったかと思うと彼女は逃げるように部屋へと入っていった。
「久しぶりね、ジョシュ…」
「ゾーイ…」
彼女はゾーイ・アダムス。伯爵令嬢だ。僕がまだ6歳の頃、ウッドセン家で開かれたお茶会で出会った。
もちろん、僕はお茶会に参加していた訳ではない。それどころか、お茶会が開かれていたことも知らず、図書室と自室を往復していた際に邸宅内で迷子になっていた彼女と出会ったのだ。
「ちょっとそこのあなた!」
後ろから快活な女の子の声がしたが、僕は素知らぬ素振りでそのまま自室へ戻ろうとした。まさか自分に声をかけられたのだとは思わなかったのだ。
「ちょ、ちょっと!あなたよ、あなた!あなたしかいないでしょう!」
そう言って慌ててこちらへ駆け寄ってきた彼女は僕の腕を掴んだ。
「っ!」
そして振り返った僕の顔を見て固まった。
「き、綺麗…」
「?」
しばらくそこから動かない彼女に仕方なく僕から声をかける。
「あの…何か?」
「あっ!そうだったわ、私会場の場所がわからなくなってしまって。悪いけれど、案内してくださない?」
「会場?」
「お茶会の会場よ!」
「お茶会をやってるの?」
「…あなたお茶会の参加者じゃないの?」
その言葉に僕はフルフルと首を振る。
「それじゃあ…?」
「僕は…ジョシュア。一応この家の子なんだ。」
「まあ、そうだったの!ならウッドセン家当主様の肖像画がある部屋といえばわかるかしら?」
「ああ…」
そうして僕は彼女をお茶会の会場とやらまで案内することになった。…本当は一刻も早く部屋に戻って本を読みたかったけれど。
彼女は道中もとてもよくしゃべった。
「私はゾーイと言うの。アダムス伯爵家の長女よ!うちの家はお父様がやり手で、子爵家から伯爵家へ上り詰めたの。」
「へぇ、それはすごいね。」
「ええ!弟も生まれてうちは安泰だって皆言ってるわ。」
「そうなんだ…その、ゾーイは…ご両親と仲はいいの?」
楽しそうに自分の家族について話をする彼女を見て、ふとそんな疑問が口をついて出た。
「ええ、うちは家族全員仲がいいわ。あなたは?」
「僕はあまり…僕以外の家族がどうかは知らないけど…」
「そう、なの…」
雰囲気を暗くしてしまっただろうか。そう思って彼女の顔色が気になったが気づけば目的地のすぐ近くまで来ていた。僕はやっと自室に戻れることにホッとして、ゾーイに向き直る。
「ほら、あそこの部屋が肖像画のある部屋だよ。」
「あなたも一緒にお茶会に参加しましょうよ。」
「いや、僕は…両親に嫌われてるから。」
「そんなになの…?」
僕は曖昧に笑って頷いた。
「それじゃあ、さようなら。」
そう言って去ろうとすると、彼女が僕の背に向かって話しかけてきた。
「あの!手紙を送るわ。」
「?」
「だ、だから気が向いたら返事を書いてね。」
そう言ったかと思うと彼女は逃げるように部屋へと入っていった。
22
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
どうやら悪役令嬢のようですが、興味が無いので錬金術師を目指します(旧:公爵令嬢ですが錬金術師を兼業します)
水神瑠架
ファンタジー
――悪役令嬢だったようですが私は今、自由に楽しく生きています! ――
乙女ゲームに酷似した世界に転生? けど私、このゲームの本筋よりも寄り道のミニゲームにはまっていたんですけど? 基本的に攻略者達の顔もうろ覚えなんですけど?! けど転生してしまったら仕方無いですよね。攻略者を助けるなんて面倒い事するような性格でも無いし好きに生きてもいいですよね? 運が良いのか悪いのか好きな事出来そうな環境に産まれたようですしヒロイン役でも無いようですので。という事で私、顔もうろ覚えのキャラの救済よりも好きな事をして生きて行きます! ……極めろ【錬金術師】! 目指せ【錬金術マスター】!
★★
乙女ゲームの本筋の恋愛じゃない所にはまっていた女性の前世が蘇った公爵令嬢が自分がゲームの中での悪役令嬢だという事も知らず大好きな【錬金術】を極めるため邁進します。流石に途中で気づきますし、相手役も出てきますが、しばらく出てこないと思います。好きに生きた結果攻略者達の悲惨なフラグを折ったりするかも? 基本的に主人公は「攻略者の救済<自分が自由に生きる事」ですので薄情に見える事もあるかもしれません。そんな主人公が生きる世界をとくと御覧あれ!
★★
この話の中での【錬金術】は学問というよりも何かを「創作」する事の出来る手段の意味合いが大きいです。ですので本来の錬金術の学術的な論理は出てきません。この世界での独自の力が【錬金術】となります。
私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。
【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます
なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。
過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。
魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。
そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。
これはシナリオなのかバグなのか?
その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。
【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】
精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた
アイイロモンペ
ファンタジー
2020.9.6.完結いたしました。
2020.9.28. 追補を入れました。
2021.4. 2. 追補を追加しました。
人が精霊と袂を分かった世界。
魔力なしの忌子として瘴気の森に捨てられた幼子は、精霊が好む姿かたちをしていた。
幼子は、ターニャという名を精霊から貰い、精霊の森で精霊に愛されて育った。
ある日、ターニャは人間ある以上は、人間の世界を知るべきだと、育ての親である大精霊に言われる。
人の世の常識を知らないターニャの行動は、周囲の人々を困惑させる。
そして、魔力の強い者が人々を支配すると言う世界で、ターニャは既存の価値観を意識せずにぶち壊していく。
オーソドックスなファンタジーを心がけようと思います。読んでいただけたら嬉しいです。
悪役令嬢に転生しましたが、全部諦めて弟を愛でることにしました
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢に転生したものの、知識チートとかないし回避方法も思いつかないため全部諦めて弟を愛でることにしたら…何故か教養を身につけてしまったお話。
なお理由は悪役令嬢の「脳」と「身体」のスペックが前世と違いめちゃくちゃ高いため。
超ご都合主義のハッピーエンド。
誰も不幸にならない大団円です。
少しでも楽しんでいただければ幸いです。
小説家になろう様でも投稿しています。
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる