悪役令嬢の兄のやり直し〜侯爵家のゴーストと呼ばれた兄ですが、せめて妹だけは幸せにしたいと思います〜

ゆう

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やり直し

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そして帰宅後、やっと両親と同じ空間から解放されて一息つく。僕は自室で少し休憩した後、アリサに頼んでお茶を用意してもらいティアの部屋へとやってきた。

「ティア、入ってもいいかい?」

軽めのノックをすると、中から「お兄様?どうぞ。」という声が返ってくる。

僕はドアをそっと開けて中へと入った。休憩中だったらしいティアが出迎えてくれる。

「今日はお疲れ様。お茶を持ってきたんだけど、一緒にどう?」
「まあ!ありがとうございます。」

嬉しそうに笑ったティアに勧められて席に着く。

そして席につくと、彼女は少し気まずそうに目配せした後おずおずと口を開いた。

「お兄様…その、先程は私のせいで嫌な思いをさせてごめんなさい。」
「お父様の言葉のことかい?それならどうってことないから気にしないでくれ。それより僕のせいで婚約が危なかったなんて…すまないね。」

今回のことで、自分でも知らず知らずのうちにティアたちの足を引っ張っていることもあるのだと知った。

今回の婚約が結果的に結ばれたことについては正直複雑だが、今度も自分の存在のせいでティアやテオの選択肢が狭まるようなことがあったらどうしようかと不安になる。

「そんな、それこそ気にしないでください!お父様とお母様が認めてくれたのは嬉しいですけど…婚約自体はどちらでもよかったですし。」
「ティアはエドワード王子が好きじゃ無いの?」

僕はここに来た本題を尋ねてみた。今後の策を練るのにも、ティアがどう思っているのかを知っておきたい。

「正直、まだよくわからないんです。嫌では無いんですけど…」

返ってきた答えは意外にも煮え切らないものだった。過去では聖女を毒殺しようとするほど嫉妬していたのだから、さぞ愛していたのだろうと思ったが…

「そうか…まあ、こう言ってしまうと淡白だけど、貴族の婚姻に恋愛が必要なわけじゃ無いからね。でも、ティアがどうしてもあの王子が好きになれないって言うなら僕も手を尽くすから。」

僕にできることなどたかが知れているが、ティアの気持ちが楽になればいいと思って虚勢を張る。すると、彼女は大きな瞳をぱちくりさせた後、吹き出すように笑いました。

「ふふっ、ありがとうございます。頼りにしていますね。」

そう言ってティアが僕によりかかる。僕は、彼女がまだ僕に甘えてくれることを嬉しく思いながら頭を撫でてやった。

「それにしてもティアが婚約か。早いものだね。」
「ええ、私もびっくりしました。ずっとお兄様のお嫁さんになるつもりでしたのに。」
「まだそう言ってくれるのか。てっきりもう忘れてるかと思ったよ。」

小さい頃にそんなことを言ってくれたっけ。幼い子の気まぐれな一言だとしても、純粋な好意を向けられたことがどれほど嬉しかったか。

「忘れるわけありませんわ。今回婚約が決まって一番残念なことですもの。」
「ふふっ、そう言ってもらえると兄としては嬉しい限りだよ。」
「そうでしょう?私、お兄様が結婚なんかしなければ良いと思ってますもの。」
「それは酷いな。実際難しいだろうけどさ。」

まだ結婚など考えてもいないけれど、幸せな家庭というものには興味がある。僕がそんなものを作れるとは思えないが…

そう思ってティアの言葉にわざとらしく顔を顰めれば、彼女はクスクスと笑って最後にため息をついた。

「はぁ、あの女がいなければその言葉を鵜呑みにできたのですけど…」
「ん?」
「なんでもありませんわ。お兄様が未婚でいてくれたら、私が王子とうまくいかなかったとき一緒に暮らせるので、それはそれで良いなと思いましたの。」
「そうだね。そんな生活も悪くなさそうだ。」

周囲の評判さえ気にしなければそんな未来も楽しいだろう。

そして何より、ティアの中でそんな未来が候補として存在することに安心した。これなら、王子と婚約破棄になっても自棄になったりしなそうだ。

少なくとも今のところは…
 
「それじゃ、僕はそろそろ戻るよ。ティアも今日は疲れただろうからゆっくり休むと良い。」
「ええ、ありがとうございます。」
「あと…僕は何があってもティアの味方だから。王子との婚約についても何か悩みがあったらいつでも頼ってくれ。」

僕は最後にそう言って彼女の部屋を後にした。


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