君が届かなくなる前に。

谷山佳与

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第1章 王太子殿下の婚約者候補

歪みが始まる4。 ✩ 〜ラザルートside〜

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自室の執務室で急ぎの仕事を終わらせている時に、ぞわりと悪寒が身体が走り抜けた。
発生源は、レティに渡している指輪からで、悪意は無い。
ガタっと椅子から立ち上がった所で、図書館へお使いを頼んでいたレオが帰ってきた。

「どうされました?」

立ち上がっている俺を見て、レオが資料を渡しながら聞いてきた。

「いや、少しレティに渡した指輪から魔力を感じたから。」
「あぁ、レティならライラック殿下と図書館へ行っていましたよ。ルイ殿下へ用事があるとかで。」
「・・・・叔父上か・・。」

なら大丈夫だろうと、そのまま椅子へ腰を下ろす。
叔父上は身内には常識の範囲ではあるがとことん甘い人間だ。
特にレティと姪であるジェニファーを可愛がっていて、二人からのお願いであれば基本的に叶えてしまうだろう。
それが、安全を守るためのものであれば尚更だ。
先ほど感じた、悪寒も私の魔力を付与している指輪に少し強引に、叔父上が組み上げた魔力か術式か何かを付与した反動だろう。

では、付与した理由は?

安易に学院で何かあったのだろうと言う答えになったが、詳細が気になってきた。

「レオ、少し抜けても大丈夫か?」
「え?まぁ少しなら大丈夫ですが。ルイ様の所へですか?」
「あぁ、やはり気になるのでな。」
「分かりました。私の方である程度まとめておきますので、気になることを終わらせて仕事に集中してくださいね。」
「勿論。」

再び椅子から立ち上がると、そのまま執務室のドアを開けて図書館へ目指す。
執務室から図書館までは少し距離があるが時間が掛かる程ではない。
早足で図書館を目指すと、ライとレティの後ろ姿が目に入った。
どうやら二人の用事は終わったようだ。
入れ違いになってしまったが、図書館へ入ると出していた書籍を棚へ戻している叔父上の姿があった。

「叔父上。少し宜しいでしょうか。」
「おや、今日は珍しいお客さまが来ますね。」

と柔和な笑を浮かべているが、理由は分かっているといった表情をしている。

「レティーシアの指輪に関してでしょう?なるべく貴方に不快感を与えないようにしたつもりでしたが、その分ですと伝わりましたか。」
「えぇ、そうです。何を付与したのか気になりまして。」
「精霊寄けの結界ですね。どうやら最近レティーシアの周りにはいたずら好きな子達がいるようですよ。」
「精霊が?」
「そこまで力は強くはないですし大丈夫でしょうが、用心に越したことはありません。」
「そうですね。」

叔父上が大丈夫だというのなら、大丈夫なのだろうけれど、何故精霊があの学院にいるのだろうか?
基本的に精霊は自然の多いところを好むはず。
そして、人がいるところにはなかなか姿を現すことはない。
何事もなければいいが、何か胸騒ぎがする。

「ふふ、大丈夫ですよ。あの子の周りには頼りになる子達が居るでしょう?」
「はい。」
「私のお友達が一人レティーシアを気に入り傍に行っていますから、大丈夫です。何かあれば友人が守ってくれますよ。」
「ありがとうございます。」

叔父上の友人というのは基本的に、裏の人間か若しくは精霊か。
どちらも可能性があるが、そんなことよりレティが皆から守れている事に密かに安堵した。

「お時間ありがとう御座ました。叔父上。」
「心配の種が減ったのであれば、よかったですよ。」

ニコニコと微笑む叔父上には、父上以上になんでもお見通しだと言われた気がした。


ラザルートが図書館を出たあと、一人になった空間に、ルイと変わらない身長で、頬にかかるくらいの薄い琥珀色の髪、同色の瞳を持った男性が姿を現した。

「貴方が姿を現すなんて珍しいですね。」
「あぁ、俺の娘がさっきのお姫さんに興味を持ってついて行ったからな。」
「やはり、力が漏れてきてるのでしょうか?」
「子供の精霊は敏感だからな。なに、俺の娘は強いから問題ないぞ?」
「そこは疑ってませんよ。それにしてもレティーシアは色々な者達に好かれますね。」
「それは仕方無いと思うぞ?俺は。」
「それもそうですね。」
「それ、闇の精霊石だろ?あいつはまだ眠ってるはずだが?子供らの方が先に起きたか?」
「それは私も分からいません。貴方が気づかないのでしたら、目覚めていないのでしょう。可能性としては故意に、強制的に目覚めさせられた子供らか。」
「俺の方でも少し調べてみるか。」
「お願いします。」

そう言って、男は静かに姿を消した。

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