infinite love

谷山佳与

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第2章 学園祭編。

トラブル

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龍がちゃんと井ノ口さんを抱きとめたの感じると、ひゅんと空を切る音に身体をそらす。

目の前に現れたのは長身の男。
その手にはナイフ。動きからしてこの人、慣れている。
突然現れた男を認識した会場は固まったようにしん、っと静まり返った。
パニックを起こされるよりはいい。

『リアム、ルーク、鬼ごっこで迅速に』

持っていたマイクでそう、はっきり言うとマイクを放り投げた。
会場に来ている二人の兄に対してメッセージを伝える。
言葉を聞き取れたとしても、本当の意味を知らなければ伝わらない。
幼い頃からさつきさんに護身術と、もしもの時のための対処法を叩き込まれていた。
さっきの“鬼ごっこ”は私たち兄妹が遊びで考えた私たちにしかわからない合言葉。
もちろん龍も知っているが、今ここで動かれると男に気づかれてしまう。
観客へ目の前の男の意思が向かない為には、龍は動かない方がいい。
“鬼ごっこ”の意味は“犯人にバレないように逃げて”である。
それに正直、私はナイフも知らない男の人も大嫌いだ。
昔一度ストーカー被害にあった時のトラウマが癒えていない。
ディも理由は違うけれど似たような境遇で、女性が嫌いだ。
私達はお互いがお互い似たような境遇に陥っても、互に平気だった。
だから、お互い身内以外寄せ付けないし、傍に居る。
この男の狙いは、私か井ノ口さんのどちらか。それとも誰かと勘違いされているのか。
狩る勢いで戦闘体制に入っている相手からは殺気がだだもれである。
話す暇もなさそうだ。

くるっ!

男が踏み込んだんのと同時に背中に隠し持っていたナイフを取り出し相手の力の流れにのせ流す。
少し前のめりの体制になった時背後からディの蹴りが綺麗に顔に入り、手からナイフが離れた。
ギルもステージに上がってきて、龍と井ノ口さんがステージを降りるのを捉えながら、離れたナイフをステージ下に蹴り落とす。
心拍数が一気に上がり少し息苦しい。
銃を構えギルが男に近づいていく、私も持っていた銃をギルの後ろから構える。

「FBIよ、両手を挙げなさい!」

うめき声を上げていた男はギルに言われる通りに両手を上げた。

「誰を狙った?誰に頼まれた?それとも私怨か?」

ディが男の頭を床に押さえつけている。
声音は最高潮に低い。

「聞いているんだ。答えろ!!」
「ディ!!」

男からもれる声に苦痛が滲んでいるし、血も少し流れている。
どれだけの馬鹿力で押さえつけているんだ!

「ダニエル・ディ・ウィリアム!!!」

私の声にディが顔をあげる。
魔王様モード、通常ブラック。ストレスその他要因含み、最悪な状態だ。この間の夜の帝王(色気ダダ漏れ)とは違う。
しかも、邪魔するなって表情をしている。
だけど、そうもいかない。
依頼主がいるのか男の独断なのか聞きたいところだけれど、一先ず龍が連れてきてくれたであろうさつきさんの姿を確認し手錠がはめられると、ディは男の上から離れた。
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