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第十二話

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 分厚い本の表紙には、植物プラント、と書いてあることは分かるが、その次の単語が私には読めなかった。日常生活に不便がないくらいには読み書きができても、難しい単語は分からない。しょうがないので、素直にカレヴィへ聞く。

「カレヴィ様、この本は何と書いているんですか?」
「植物図鑑だ。うちの国だけじゃなくて、他の国の薬師や植物ハンターたちが競って出している、世界各国の植物について記された本だな。この棚は全部そうだ」
「全部!」

 はあ、とため息が漏れる。一面のたくさんの本は、すべて植物について書いている。本を開けると、緻密な薬草の線画がずらりと並んでいて、細かな文字で解説が記載されている。見覚えのある名前、文字、それから葉っぱや根の形はああ、あれだ、と文字が読めなくても何の草のことか何となく分かった。

 私があまりにも一生懸命読もうとしているものだからか、カレヴィは椅子を持ってきて座らせてくれた。小さなテーブルを引っ張ってきて、その上に植物図鑑を広げる。

「気に入ったか、よかった。文字は読めるか?」
「少しだけなら」
「うん、じゃあ、一緒に読めば覚えるだろ。もういっそ、うちに来い。うちでならお前の気が済むまでここにある本が読めるし、王城の裏庭の管理の仕事だってうちからなら歩いて通える」

 うちに来い。

 あまりにも飾り気のない言葉だから、一瞬何のことを言っているのか思いつかなかったが——この状況、お見合い、ということを思い出して、私は思ったことをそのまま口に出した。

「それってつまり、結婚!?」
「ああ。嫌か?」
「い、いいえ! わ、私でよければ、でも急すぎて、何が何だか」

 しどろもどろの私に、カレヴィはこう言った。

「気にするな。教える相手ができて嬉しいし、エイダは賢いから好きだ」

 その日、私はカレヴィと一緒に夕方まで植物図鑑を読み漁って、たくさんのことを教えてもらった。

 根気強く、これは何と読む、これはどんな意味だ、と尋ねる私へ、カレヴィは丁寧に教えてくれた。夕食もご馳走になって、帰るまでずっと勉強と、カレヴィの広範な知識を聞いて、私は思った。

 この人はいい人だ。愛ではなく尊敬できる人と結婚しなさいと言っていた母の言うとおり、私はこの人と結婚したい。

 その旨をカレヴィに伝えて、私は王城の宿舎へ一旦帰った。
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