魅了魔法の効かないあなたと婚約したくありません!〜麗しの侯爵令嬢、空回りする〜

ルーシャオ

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第十六話

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 ブランシュ、デルフィーヌ、リオネルの三人があることを計画して、一週間後のことだ。

 コシェ王城の大広間では、国王と大臣たちによる会議が行われていた。と言っても、議題はシャルトナー王国からの併合案に乗るか、断るかというもので、コシェ王国にとっては実質的に選択の余地はなくなってきていた。

 最後まで悩む国王へ、大臣の一人が急かす。

「陛下、ご決断を。シャルトナー王国の使者たちも、もう待ちきれないと訴えてきております。引き止めるのも限界です」
「う、うむ、しかし」

 コシェ王国がシャルトナー王国に併合となれば、間違いなく国際問題になる。リュクレース王国もクエンドーニ王国も、シャルトナー王国の野心を警戒し、戦争に近くなってしまうかもしれない。そうなればコシェ王国領は各国の睨み合いの場となり、最悪戦場とされてしまうだろう。しかし、このままコシェ王国が独立を貫いても、どこかの国に攻め込まれればおしまいだ。

 どうすべきか。国王は優柔不断なのではなく、重大すぎる決断を強いられ、最後まで足掻く道を選んでいるだけである。

「フローケ、何か妙案はあるか?」

 国王は、腹心である財務大臣のフローケ伯爵へ意見を求めた。怜悧な印象のモノクルをつけたフローケ伯爵は、固い表情ですらすらと語る。

「はっ。残念ながら、我が国は西と南北の三方を大国に囲まれており、東には因縁深い小国たちがあるのみ。また農業も工業も近年は振るわず、税収も減るばかり。一方で大国は競争を激しくし、我が国を併合したいなどと無礼千万の圧力をかけてくる始末です」

 聞けば聞くほど絶望してしまう情報しかない、フローケ伯爵の話には国王だけでなく大臣たちも落ち込んでいく。

「しかし、それに抵抗する手は残されておりません。我が国がどこにも属さず、中立を保つことは不可能です。いかに精強な騎兵隊を持っているとはいえ大国と戦えるほどの数はなく、銃や大砲の運用で戦場の趨勢を左右する時代とあっては、装備で劣っている我が国が今後大国に優勢を得ることは困難と考えます。これはあくまで現実的にこの国内外の現状を分析した結果の話であり、国庫を預かる身としましても懐に余裕がないことは断言できます」

 収入が少なくなっている国庫と毎日にらめっこをしている財務大臣が言うだけに、この国はもうダメだろうという説得力は半端なく、国王もうなだれる。

「そうかぁ……せめてシャルトナー王国から少しでも有利な条件を得られるよう交渉を進めたほうがマシだろうか」

 弱気になった国王が、今後の方針を定めようとしたそのときだった。

 大広間の扉が開き、一人の紳士が声を上げる。

「お待ちくだされ、陛下。トリベール侯爵ウジェーヌ、ただいままいりましてございます」
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