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第二十一話
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「嫌だけど、しょうがないじゃない。ことがここまで大きくなったのは私のせいでもあるし。お姉様はどうなの?」
「あら、結婚は貴族の義務よ。家がよりいい条件を得るため、よりいい殿方と結ばれるのなら、断る理由はないわ」
「はあ……私はそこまで割り切れないわ。もうリオネル殿下との婚約も決まっちゃったようなものよね……」
姉の貴族令嬢らしさは素晴らしいとは思っても、ブランシュ自身はそこまで我を捨てることはできない。リオネルの婚約者という立場で一度公の場に出てしまった以上、ブランシュはもうリオネルと婚約したも同然だ。国と家のためとはいえ、そこまでしてしまったことを後悔する気持ちは確かにあって、どうにもやるせない。
しかし、文句ばかり言っていても始まらない。いいことにも目を向けるべきだ、そう、リオネルがシャルトナー王国へ『留学』するのなら婚約者であるブランシュも行くことになる。それは先進の外国へ行きたかったブランシュの望みどおりなのだ。
「でもでも、シャルトナー王国に行けるんだから、そこは目を瞑るわ。ああ、憧れのヴィルストーン大劇場! 世界の一流工房が集まるレミューズ国王通り! この目で見られるのね!」
ブランシュが手を広げて感激するのも束の間、メイドのマルティーヌが急いだ様子で部屋に戻ってきた。
「失礼しまぁす! たたた大変です! リオネル殿下がいらっしゃいましたぁ!」
このとき姉妹の行動は正反対だった。ブランシュは椅子から飛び跳ねて逃げ出し、デルフィーヌは平静さを保ったまま指示を出す。
「落ち着いて、マルティーヌ。お茶を早くご用意して」
「はい! ただいま!」
ぱたぱたとマルティーヌはお茶の用意にまた出ていく。ブランシュはあたふたとベッドの布団の間に潜り込み、天蓋のカーテンを引いてこう言った。
「私は寝込んでるってお伝えして!」
どうにもリオネルに会わせる顔がない。このまま会ってしまえば流れで婚約が確定するし、かといって断れる雰囲気でもない。無駄な足掻きと知っていても、ブランシュは少しでも婚約の話を遠ざけるためにベッドに潜り込んで隠れる。
当然、デルフィーヌは無理に引き摺り出したりしない。ただ、静かに応じただけだ。
「ブランちゃん、そこで聞いていてちょうだいね」
デルフィーヌの言葉のすぐあと、リオネルが足音を立ててやってきた。
「む? ブランシュ……ではなく、姉君の」
「デルフィーヌですわ、殿下。ようこそおいでくださいました、そちらにおかけくださいまし」
「ああ!」
リオネルは何の疑いもなく、さっきまでブランシュが座っていた椅子に腰掛ける。キョロキョロと周囲を見回し、天蓋付きベッドのカーテンが閉まっていることにあっという間に気付いた。
「あら、結婚は貴族の義務よ。家がよりいい条件を得るため、よりいい殿方と結ばれるのなら、断る理由はないわ」
「はあ……私はそこまで割り切れないわ。もうリオネル殿下との婚約も決まっちゃったようなものよね……」
姉の貴族令嬢らしさは素晴らしいとは思っても、ブランシュ自身はそこまで我を捨てることはできない。リオネルの婚約者という立場で一度公の場に出てしまった以上、ブランシュはもうリオネルと婚約したも同然だ。国と家のためとはいえ、そこまでしてしまったことを後悔する気持ちは確かにあって、どうにもやるせない。
しかし、文句ばかり言っていても始まらない。いいことにも目を向けるべきだ、そう、リオネルがシャルトナー王国へ『留学』するのなら婚約者であるブランシュも行くことになる。それは先進の外国へ行きたかったブランシュの望みどおりなのだ。
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「失礼しまぁす! たたた大変です! リオネル殿下がいらっしゃいましたぁ!」
このとき姉妹の行動は正反対だった。ブランシュは椅子から飛び跳ねて逃げ出し、デルフィーヌは平静さを保ったまま指示を出す。
「落ち着いて、マルティーヌ。お茶を早くご用意して」
「はい! ただいま!」
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「私は寝込んでるってお伝えして!」
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「ブランちゃん、そこで聞いていてちょうだいね」
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「む? ブランシュ……ではなく、姉君の」
「デルフィーヌですわ、殿下。ようこそおいでくださいました、そちらにおかけくださいまし」
「ああ!」
リオネルは何の疑いもなく、さっきまでブランシュが座っていた椅子に腰掛ける。キョロキョロと周囲を見回し、天蓋付きベッドのカーテンが閉まっていることにあっという間に気付いた。
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