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第二十六話
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私は書籍商として、まだまだ働くつもりでした。
しかし、アレクはちょっとだけ不満そうです。
「エミー、その、俺の妻になっても働くつもりか?」
私はきょとんと首を傾げ、アレクへ尋ねます。
「だめですか?」
「だめじゃないが……俺も来年には皇子になるし、お互い忙しいと、もしかすると一緒にいられる時間が減るかもしれないだろう」
どうも、アレクはちょっとだけ拗ねているようです。自分にもっと意識を向けてほしいと思って、そう言っているのでしょう。
だから、私はこう説得しました。
「大丈夫ですよ。私が書籍商を続けて、文学の本の翻訳をしないと、あなたが読む本に困るでしょう?」
「むう、それはそうだが」
「私はあなたのために、本を見繕います。そのためには自分で本を取り扱える書籍商のままのほうがいいですし、何より」
何より、もっと重要なことがあります。
「もし、あなたが皇子なんか辞めたくなっても、私の手に職があれば養っていけるかなって」
アレクは目を丸くしていました。そんなことは考えたこともなかった、と顔に書いています。私の考えに気を害したふうもなく、アレクは納得していました。
「なるほど、それは思いつかなかった。そうか、皇子だから皇帝位を争うことしか頭になかったな。嫌になれば捨てたっていいんだ」
アレクは、気難しくて、率直で、私と文学の本のことを第一に考えるような人です。そんな人が権力争いに嫌気を差して何もかも投げ出したくなることだって、十分考えられます。もしそうなったとき、私はアレクを支えるために、稼ぎがないといけません。もしかすると貴族さえも辞めてしまうかもしれないからです。
それがどうにもアレクには愉快で、頷けることだったようです。
「エミー、ありがとう。そう考えると、少しは楽になった。実を言うと、兄と争うのは気が重かったんだ。できるかぎりはやるが、俺のことを支えてくれると助かる」
アレクの感謝は、私にとっては勲章のようなものです。アレクのために何かができるなら、私は頑張れるのですから。
「あなたが皇帝になっても、私は書籍商をやめませんよ。皇帝だって辞めたくなるかもしれませんから」
「そこまでは……いや、あり得るな。うん、その気になるかもしれない。そうなったら、エミーを頼ろう」
「ふふっ、任せてください」
たとえアスタニア帝国を追われたって、私はアレクについて行って、本を片手に商売をして彼を支えるでしょう。
それくらいのこと、やってみせます。いらぬお節介かもしれませんが、私はそんなことまで考えるほど、アレクのことが好きになっていました。
しかし、アレクはちょっとだけ不満そうです。
「エミー、その、俺の妻になっても働くつもりか?」
私はきょとんと首を傾げ、アレクへ尋ねます。
「だめですか?」
「だめじゃないが……俺も来年には皇子になるし、お互い忙しいと、もしかすると一緒にいられる時間が減るかもしれないだろう」
どうも、アレクはちょっとだけ拗ねているようです。自分にもっと意識を向けてほしいと思って、そう言っているのでしょう。
だから、私はこう説得しました。
「大丈夫ですよ。私が書籍商を続けて、文学の本の翻訳をしないと、あなたが読む本に困るでしょう?」
「むう、それはそうだが」
「私はあなたのために、本を見繕います。そのためには自分で本を取り扱える書籍商のままのほうがいいですし、何より」
何より、もっと重要なことがあります。
「もし、あなたが皇子なんか辞めたくなっても、私の手に職があれば養っていけるかなって」
アレクは目を丸くしていました。そんなことは考えたこともなかった、と顔に書いています。私の考えに気を害したふうもなく、アレクは納得していました。
「なるほど、それは思いつかなかった。そうか、皇子だから皇帝位を争うことしか頭になかったな。嫌になれば捨てたっていいんだ」
アレクは、気難しくて、率直で、私と文学の本のことを第一に考えるような人です。そんな人が権力争いに嫌気を差して何もかも投げ出したくなることだって、十分考えられます。もしそうなったとき、私はアレクを支えるために、稼ぎがないといけません。もしかすると貴族さえも辞めてしまうかもしれないからです。
それがどうにもアレクには愉快で、頷けることだったようです。
「エミー、ありがとう。そう考えると、少しは楽になった。実を言うと、兄と争うのは気が重かったんだ。できるかぎりはやるが、俺のことを支えてくれると助かる」
アレクの感謝は、私にとっては勲章のようなものです。アレクのために何かができるなら、私は頑張れるのですから。
「あなたが皇帝になっても、私は書籍商をやめませんよ。皇帝だって辞めたくなるかもしれませんから」
「そこまでは……いや、あり得るな。うん、その気になるかもしれない。そうなったら、エミーを頼ろう」
「ふふっ、任せてください」
たとえアスタニア帝国を追われたって、私はアレクについて行って、本を片手に商売をして彼を支えるでしょう。
それくらいのこと、やってみせます。いらぬお節介かもしれませんが、私はそんなことまで考えるほど、アレクのことが好きになっていました。
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