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第1章命ある武器

7話 強くなるためには

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 僕の修行は始まりを告げていた。右膝が負傷しているなか、
 ジェイスさんは右ひざに薬草の湿布みたいなものをつけてくれた。

 病院に行くと素性がばれるので、いけないと僕が言うと、考えてくれたのがジェイスさんだった。

 ジェイスさんの鍛冶屋は現在武器があまり存在しておらず、
 最近はもっぱら道具と防具ばかりの注文だった。

 しかし僕が強くなるためには武器が必要だと知ったジェイスさんは仕事の傍らで武器を作ってくれている。

 ジェイスさんは作り方をちゃんと見ろと師匠ならではのアドバイスをくれたりした。

 いくら右膝がうごかなくても、
 椅子に座ってジェイスさんの勇士をみることくらいはできる。

 ジェイスさんの武器づくりはとても激しくて、
 ドワーフの体からみなぎる力をフル活用しているように見える。

 何度も金づちで武器を叩きつけては、
 炉の中にいれて柔らかくして、
 また叩きつけてはの繰り返しだった。

 かくして出来上がった武器は鉄の槍、鉄の斧、鉄のメイス、鉄の杖、鉄の双剣などであった。なぜ鉄シリーズばかりかというと、ジェイスさんも貧乏で、鉄以外の武器を作るだけの材料を整えることができなかったからだ。

 僕はひたすら鉄シリーズに生命付与(武器)のスキルを使用した。

 鉄の槍=マブ 鉄の斧=イガール 鉄のメイス=メイル 鉄の杖=ボマ 鉄の双剣=テルとデル

≪【鉄の槍】を吸収しました。スキル【攻撃命中率up】を覚えました≫
≪【鉄の斧】を吸収しました。スキル【回転斬り】を覚えました≫
≪【鉄のメイス】を吸収しました。スキル【殴り込み】を覚えました≫
≪【鉄の杖】を吸収しました。スキル【知恵up】を覚えました≫
≪【鉄の双剣】を吸収しました。スキル【連撃】を覚えました≫

「こんにちはマブというものだよ、気さくなおっさんだよ、精神年齢は40台かな、世の中はいろいろと進歩していておっさんにはつらい時代のようだね」
「お初にお目に書かれてうれしいです。イガールのことは真面目な青年だと思ってくださいませ、それで、主人は強くなるとはどういうことかと思いますか?」

「メイルなの、ふわあああ、眠たいときはいいことがあるのよ、とろい女性だからってすぐにやれると思わないでね」

「ボマだぜ、へいへい、はーい、ふぉーーーーーボマのことはテンションハイな女性だとおもっちんぐ」

「「はいなの、テルとデルは双子なのです。いつも一緒に話す生意気な子供だと思ってほしいの」」

「すんまへんロンというものです。仲間がたくさんできてうれしいですぞい」
「これはイガールとして感銘をうけますあなたはかの有名なロンギヌスの槍殿ではございませんか、武器世界では有名ですぞ」
「そんなにほめないでくださいよ、てれるなぁああ」

 たくさんの武器が会話をしている。
 それだけでも異常な光景なのだが、 
 ドワーフのジェイスさんはにこりと微笑んでいる。

「テツノブよ、わしが作れる鉄シリーズはここまでだ。次は鋼なのだが、鋼を仕入れる方法がないときている。わしとお主で冒険者ギルドに登録しようと思っている。そなたの足の怪我はすでに治癒しているだろう、あれから1週間がたったのだぞ、お主気づいているのか?」

 僕は唖然と口を開いていた。
 生命付与を集中しており、
 どのような武器に魂を与えていくのか、
 そればかりを考えて、
 
 朝になろうと夜になろうと、必死で武器をつくるジェイスさんを見続けていた。
 その結果、ジェイスさんの武器づくりに夢中になっていた。

 いつしか僕自身でも作ってみたいとも思っていたのだから。

 ゆっくりと右膝を動かすと、
 不思議なほど動き、
 ギブスのようなものを外すと、とてつもなく軽い感覚になり、
 薬草の湿布の効果がてき面だと思った。

 リアルの世界にいてはすぐには治らなかったであろう傷。

 あとピエロの仮面という不思議なものがある。 
 最近では毎日のようにつけているが、顔にくっつくので、
 違和感はあまりなく、
 ジェイスさんと一緒に街に鉄のインゴットを購入しに行くとときだって、
 衛兵とすれ違っても誰も気づくことはなかった。

 だからついに動きだすべくして動き出すのだと、
 この時の僕は思っていた。

―――冒険者ギルドにて―――

 そこは大きな建物だった。まるで小学校を半分にしたくらいの大きさでもあった。
 そこにはたくさんの人々が出入りしている。
 
「あそこに見えるのが受付だ。あそこでクエストを受けるのじゃ、あそこで説明を受けるといい、わしからの説明も結構昔だからいろいろと抜けるところがあるかもしれんからのう」
「分かりました」
「わしはあそこでいいクエストがないか探してみる」
「はい」

 僕はびくびくと歩きながら、 
 周りを見据える。
 周りにはいろいろな種族の人がいた。エルフと呼ばれる種族の人や獣人と呼ばれる人、 
 一番目についたのは天使族と悪魔族だった。天使族は背中に白い天使の翼がある一方で悪魔族は角のようなものがでており、さらには黒い翼が生えている。

 本当にいろいろな種族がギルドにやってきている。

 受付は全部で3つあり、3つとも美人な女性が担当をしている。
 とりあえず一番元気のない女性のもとへ向かう。
 そこにはあまり人がいなかったということもあるからだ。

「いらっしゃいませ、あなたは初めての方ですね、冒険者ギルドに登録しますか?」
「はい、お願いします」
「ではステータスの書を見せてください」

 僕はアイテムボックスを出現させると、そこからステータスの書を抜き取る。
 受付嬢の人はステータスの書を見ていながらうなずき。

「あなたはFランクからとなります。Fランク冒険者と名乗れるようになりました。ステータスの書にも記載しておきましょう」

 受付嬢の人はにこやかにしながら、ステータスの書に魔法を付与するみたいにする。
 
「それにしてもすごい能力ですね生命付与ですか? 見たことがありませんし、スキルだって化け物クラスですよ、それでもFランクなのはステータスが非常に弱いということです。スキルで補ってがんばってください」
「あ、はい」

「あとはそうですね、あなたの担当になるシェイナと申します。人間族であります。周りからはあまり人気はないですけどね」
「そんなことはありません、暗そうに見えてとてもやさしいし、魅力的だと思います」

 するとシェイナさんは顔を真っ赤にさせる。
 あれほど冷たい表情ばかりの彼女の変貌ぶりに、
 逆に僕は戸惑って。

「では説明しますわね、クエストはパーティーメンバーがCランクのクエストを受けたらあなたはFランクですがCランクを受けることができます。ただし1人のときはFランクだけです。あそこのたくさんのフォルダーがあるところでクエストの紙を選んで私のところに持ってくると受給できます」

「なるほどです。助かります」
「あなたは、もしかして、異世界から召喚されたという人たちの仲間では?」
「いえ彼らと僕は関係ありません」
「そ、そうですか、失礼しました」

 僕はジェイスさんのほうへとゆっくりと歩いて行った。

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