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勇者逆襲の章

45話八人のゴーストマスター

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 気づいたらチャコブの回りが平原となっていた。
 敵はほとんどが蒸発した。
 それでも数千の魔物たちが兵士たちとセバスダンたちとたたっている。
 だが魂【王】の周辺にはいなかった。 
 
「今こそ俺たちの力を一つに」
「若きものにたくそう」
「われたちをわすれるな」
「僕の墓には甘いおかしをね」
「おぬしたちいいかげにせぬか」
「うわっはっは」
「息子よ勝て」
「「「「「「「それがみなの意思じゃ」」」」」」」
「はい!」

 チャコブは【死者召喚剣】の力を活用し、七人のゴーストパワーを吸収すると、七聖剣を融合させた。

 そこには頂戴な五メートルはあるであろう大剣が出現した。
 チャコブは思った。自分の力だけでこの巨大なゴーストソードをもつことができるのかと。

 チャコブは頷くと、中空に浮いているその大剣を持ち上げた。
 思った以上に軽かった。
 体がみなぎる。すべてが軽く感じ。


 そのとき戦いが始まった。

 魂【王】が跳躍した。

 目の前から消えたと思ったら、チャコブ自体も消えていた。
 空中で2人の化物はぶつかり合った。衝撃はが地面をえぐり、クレーターを作り出した。

 剣と剣がぶつかりあって、たくさんの衝撃が生み出され、地面という地面にたくさんのクレーターをつくる。両者共に引かなくて、ひたすらぶつかり合う、肉体と肉体が、武器と武器が。死に物狂いで、戦い二人は弾かれる。

 チャコブが魂【王】みると巨大なゴーストの塊の魂【王】がいて、チャコブは背中から七人の祖先たちが応援してくれるのをひしひしと感じている。

「下がるわけにはいかんのです」
「ふん、お主強いのう」

 魂【王】が笑うと、またもやそこから消失した。
 時間がとまったように二秒の間で十数撃の剣の衝突、何度も何度も衝突するため肉体は空へと浮かび上がり、雲の上へと到達する。
 背中にゴーストの翼を生やしたチャコブは、相手もこちらの見よう見まねでゴーストの翼を生やしていた。

「いざ」
「まいる」

 2人は雲を突き破り、隕石を衝撃波で破壊し、風が停止した。
 2人は息をすい上げる。そしてまたぶつかり合う。
 何度でも何度でも体の機能が停止するまで。 わずか少年のチャコブは魔王である魂【王】と互角で渡り合っていた。

 チャコブは吹き飛ばされると、地面に激突した。
 地面にやはりクレーターができる。
 この戦争が終わったら、氷の国から賠償金を請求されるのではと少し恐怖しつつもせなかにクッションのゴーストをつくりだして、衝撃を和らげる。

 空からまっすぐ剣をつきだすように落下してきた魂【王】をチャコブは後ろにジャンプしてよける。その地面に巨大な亀裂ができる。

「うああああああああ」

 チャコブは叫び声をあげて、思いっきり走る。背中のゴーストを噴射して、秒速でそこに到達した。また剣と剣がぶつかり合う。衝撃はが木々をなぎ倒す。 
 
「お前は少年のくせにしつこいいい」
「お前も魔王のくせにしつこいいいい」

 2人の言葉を唾となった両者に降りかかる。頭の髪の毛がもさもさに風でばたばたしながら、衣服には両者ともに触れ合ったためにどちらの汗かわからないものがつき。両者ともに無傷だった。

 2人とも血はついていない。
 2人は走りながら、剣戟を振るう。
 チャコブは逃げない、チャコブは闘う、この世界のため、そしてこの世界を壊そうとする魔王から人々や生き物を守るため。
 
 吹き飛ばされる。湖に落下する。氷を突き破っため上昇してみ氷がジャマで抜け出せない。だけどチャコブの意識はクリアになっていく。ここで溺れて死ぬのか?
 それもいいかもしれないなぁ。

ふと脳裏に妹のチヤがよぎり父親がよぎり、母親がよぎり、祖父や先代たちがこちらを見て荷仮と笑った。

「強すぎるよ、勝てるわけないよ」
「わしはお前が良くやったと思うわしはお前がここで脱落してもいいと思う」
「じいちゃん」
「だがそうすると、愛しいチヤや仲間たちが死ぬかも知れんなぁ」

 祖父はにかりと笑いながら言った。

「そんないやじゃろう?」
「いやです」

「息子よ」

 父親がこっちを見ていた。

「お前は凄い闘った。だけど、まだ闘えるんじゃないか?」
「うん」
「お前は俺の誇りだ」
「うん」
「さぁ、やってみろ」
 
 すべてを解き放て。

「ぐあはあああああああああああ」

 断末魔が響き渡る。氷の湖はすべてが蒸発した。
 そこには全身がゴーストにまみれ、すべてがゴーストそのものになった。チャコブがいた。
 チャコブは消えた。気づくと魂【王】の後ろにいた。


「ヴぁななああああ」


 もはや悲鳴をこえ断末魔になった魔王の言葉、魔王は遥か空に吹き飛ばされる。

「テレポートでもしたのか」
「俺にそんなことができるとでも?」

 空に吹き飛ばされていた魂【王】のすぐ上をチャコブがいた。彼は大剣で思いっきり、魂【王】を両断しようと振り落とした。

「なるほど」
 
 魂【王】はそれをゴーストパワーで防ぐと、二人は宙と地面に落下していく。
 宙にぐるぐる回転しながらチャコブは跳躍した。そして魂【王】が大の字になって地面に倒れているところに出現する。

「お前はゴースト化したのだろうな、肉体のゴースト化は心霊学者たちの夢だった。ゴースト肉体を融合したもの、それは物理法則の反中をこえる。すなわちスピードや時間といった概念がないんだな。なるほどなるほど、悔しいのは」
 
 無言のチャコブは大剣を思いっきり魂【王】の心臓に突き刺した。

「悔しいのは、ここで我は退場だからじゃのう」

 目の前から魂【王】は消滅した。

 チャコブはすべての力を使い果たし、そこにぶっ倒れた。
 チャコブの後ろでは沢山の魔物と魔人たちが撤退していった。
 セバスダンがこちらにやってくる。チャコブを抱きかかえると頷いた。

「少しみていた。お前はすごい、しばらく休め」

====ウィトリー====
 意識が戻った。どんどんと音が鳴り響いている。
 そのたんびに地下要塞に閉じこもっている人々はびくびくとしている。
 ウィトリーにはもう闘う力なんて残っていない。

 おそらく異変に気づいた敵の魔人たち、おそらく外にいたオーガたちが朝になっても開かない扉をみて、無理やり開けようとしているのだろ。

 人々は絶望の顔をしている。 
 朝まで仲間たちはこなかった。
 本当にくるのだろうか?

 ウィトリーは空気を吸い上げる。


「諦めるな、あらゆるものをバリケードに使いたい、みんな強力してくれ」

 民たちは一人、また一人といろんなものをもってきた。
 それでも死を覚悟したものたちばかりだった。
 ウィトリーは死ぬつもりはない。
 ここには裏口はない、腹をくくった。

「みんな聞いて欲しい、何もしないで奴隷になるか、反抗して殺されても戦うかどっちか選んでくれ」

 それは民に死ねといっているようなものだった。
 ウィトリーは歯を食いしばる。
 すると一人、また一人と立ち上がる。
 一人の少年が立ち上がる。

「僕の父ちゃんと母ちゃんはおもちゃのように殺された。だから死んでもいいから反抗するよ、この小さな口でオーガやオークやゴブリンの耳を噛み千切ってやる」
「俺もだ」「私も」「わしもじゃ」

 一人、また一人と立ち上がる。

 人々は歓声をあげて立ち上がった。
 彼等は死ぬかもしれない、それでもウィトリーは一人でも多く守る、そう決心した。

ごうん、どば、ぐしゃ。


 とう変な音がした。ついにバリケードが壊れたか? 
 そう思った。
 だがしばらく振動はとまり。

 声が響いた。

「我らはウルフワールドから、きた。わしは三王の一人、ウルフキング、そのほかにはベアーキング、ホークキングがきた。わしらは傍観をやめる。そなたたちを助けにまいった」

 その場の全員が耳を疑った。 
 人々は過去を思い出す。 
 彼等を森の奥底に押し込めたのは自分たち人間だと思っているようだ。 
 ウィトリーはここの生まれではないが、念のためにここらへんの歴史は学んでいる。

 村長らしき人が声をあげる。

「わしたちはおぬしたちを迫害してきた、なぜいまごろわしらを」
「一人のレッドウルフがいた。彼女は人間と強力してこの世界を魔王たちから守ろうとしている。彼女はこんなみみっちいことは気にしない、どうか、また一緒に手をとりあわぬか?」

 するとそこにいた人々は鳴き声と歓声をあげた。 
 彼等はバリケードを壊していった。
 壊すのに数時間を要した。
 
 扉が開かれる。
 そこからたくさんの日光が自分たちを貫き。
 数え切れない人々は歓声をあげて、獣人たちと抱擁をかわした。


 そこには人種差別を通り越した何かがあった。


「おぬしが、ウィトリー殿ですね」
「はい」
「セバスダン殿から伝書鳩が届いております。こちらへ、民はここか避難させよとの命令です。おそらくここが戦場になるからでしょう」
「なるほど、誘導は任せていいですね?」
「わしらの故郷に送り届ける所存、わし、ウルフキングとベアーキング、ホークキングが誓うと宣誓する」


 ウィトリーは頷くと。

「見たところ分身【王】を倒されたのでは?」
「はい、なんとか」
「やはりミルが見つけた仲間ということじゃて、神【王】と魂【王】もセバスダン殿とチャコブ殿が倒したともかかれてありました。残りは城にいる魔王です。そいつはどんな魔王かはわかっておりません、ホーク一族が偵察に行っています」

 ウルフキングの説明では現在ヒエラル王と魔王が城に閉じこもっている。
 氷の草原にて戦闘が繰り広げられていたが、魔王と魔人の軍勢はほぼ壊滅して、火山の国に撤退を始めている。
 それを許さないヒエラル王が魔王を押しとどめている可能性が。真実は分からない。
 城で何が起きているのを偵察するためにホークキングの配下向かっているとのこと。

「ですので、ウィトリー殿は休んでください、ドルイドオオカミたちに治療させましょう」
 
 ウィトリーはローブに包み込んだ魔術師のようなオオカミたちに治療されていく。頭ん回転がどんどんはやくなっていき、復帰も近かった。

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