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第3話 再現魔法の極意

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 レメスは無骨な剣を握りしめていた。
 風を斬るようにして舞い上がり、一寸先の大木が両断されていた。
 左手に無詠唱で炎の玉を出現させると両断された大木を燃やすのではなく爆発させた。
 次に左手に無詠唱で水の玉を出現させ増幅魔法で巨大化させる。
 一瞬で燃えている大木は沈静化した。

「す、すごいです旦那様」

「ああ、今まで知識として得てきたものすべてが再現出来るんだよ、君のイベントリだって仕組みを理解してるから再現できるよ」

「それでもぼくは旦那様の荷物持ちです」

「はは、君の役目を奪うつもりはないよ」

「さて、ここエルレイム王国から東の村に盗賊の集団が迫っている、向かい打つは1人の少年、未来視というスキルを再現魔法で再現した」

「はは、それで、その少年は」

「そうだね、どうなるかは見えなかった。つまり俺が関与しないといけない」

「なるほどですー」

「では、ヒュンケル、旅立ちの準備ですよ、ハルニレム王には伝えてありますから、念話でね」

「なんでもありですね」

「だが、本で得た知識だけなんだ。戦闘技術や魔法のテクニック、そういうものは達人を見て再現する必要があるからね」

「旦那様が恐ろしい」

 ドワーフ娘のヒュンケルは素早く荷物をイベントリに突っ込んで移動を始めた。


★★★ロイフル★★★

 その少年は獣そのものであった。
 傭兵のような身なり、周りには少年の傭兵の死体が20人は転がっている。
 少年は涙を流し、歯を食いしばり1本の剣を握りしめて、100人の盗賊に歯向かっている。
 
 今の所恐怖に震える村人達は家に隠れている。
 どうやら少年の傭兵団を雇った形のようだ。

「とまぁ、そんな所でしょう」

 とことこと散歩でもするようにレメスは鉄の剣を右手に左手には魔法をいつでも炸裂させる事が出来るようにスタンバイしていた。
 その後ろではドワーフ娘のヒュンケルが堂々としたもので、付き従っている。

 村は藁ぶき小屋のような古めかしい家が所々にあり、畑には馬鈴薯と呼ばれる作物が植えられている。

 一体盗賊達は何を奪うのか、要は人間を奴隷にするのだろう。

「お前はなんだ」

 少年がこちらを見て叫んだ。
 眼には血が滲み、頭には青い額当てがされていた。

「助けに来ましたよ」

「見たところ同年齢にしか見えん」

「そうですねーその額当ての中には八角の文様があるのではないですか?」

「ああ、あるねーきもいから隠してる」

「そうですか、では条件があります。おいらが君を助けたら、君はおいらの仲間になってもらいますよ」

「そんなんでいいのか、俺にはもう仲間なんて1人もいやしねーぞ」

「では一蓮托生と行きましょう、ヒュンケル下がっていてください」

「もちろんです旦那様」

 レメスは頭の中でイメージをする。
 子供の頃から戦記小説で動く戦士達の動きをイメージしてきた。
 再現魔法とは見た物や本で見たものを再現できる。
 それは本で見たイメージもその通りで、もちろん達人の動きを生で見た方が再現率は高くなる。

 だがそこには戦記小説で出てくる凄腕の殺戮兵士がいた。

「まずは、呼吸を整えて、ゆっくりと歩き」

「何をぶつくさと、かかれええええ」

 10人の盗賊が同時にかかってくる。

「剣を持つ手は軽く、肉を裁くように滑らかに動き、首を落とす」

 1人の盗賊の首が落ちる。

「足首を引き、後ろに下がり、腹に剣を串刺しにする」

 1人の盗賊の腹から血が出て。

「膝を落とした盗賊の首を跳ねる」

 腹から血を流している盗賊の首が跳ねられる。

「8人に囲まれたら、瞬時にしゃがむ、そして、足を切断する」

 まるで大車輪のように8人の兵士の両足が両断される。

「そして、1人ずつ首を突き刺す」

 1人ずつぐしゃと血しぶきを飛ばしながら死んでいく。

「そして呼吸を整える」

 かかった時間3秒。
 
 残りの90人の兵士は口を開いて唖然としている。
 一方で少年も唖然とし立ち上がる。

「俺はロイフルだ。覚えておけ、王様になるんだ。俺にはハルニレム王の血が流れてる。俺は放浪息子だばーか」

「はは、そんな事は知っていましたよ」

 ロイフルがレメスの隣に立つ。

「ば、化物か、あの2人」

「こっちは90人だ、全員で行くぞ」

 ロイフルは剣を構えると地を蹴った。
 まるで獣のように四足歩行で走る。
 剣は口に噛んで持ち替えている。

「またあれだ」

 盗賊の悲鳴が上がる。

 一瞬、ロイフルの首が翻るだけで、盗賊の首が落下する。

「スキル:肉体強化ですか」

 レメスはそれを見て再現する。

「本で見た肉体強化よりとてもリアルですね」

【レベル2:肉体強化】

「ほーリアル度を求めると、再現魔法で得たスキルが強化されるのですねぇ」

 レメスに向かってくる盗賊達を1人また1人とすれ違いざまにバッサリと両断する。
 レベル2:肉体強化を使用しているので、胴体を簡単に両断する事が出来る。
 右肩から左わき腹にかけて斜めに両断され、体が嫌な音を出して地面に落下する。
 それを連続でするものだから。

「ひ、ひいい、たすけてくれええええ」

 左手に魔法を構築。炎の玉を出現させ、増幅魔法を発動、さらに範囲魔法も発動させ、さらに爆発魔法も付与し、ただボールを投げるようにしただけで、辺り一面が吹き飛んだ。

 正確には森一面が吹き飛び、盗賊は全員死亡。
 ロイフルだけが肉体強化だけではなく、スキル:魔法耐性もあり丸焦げで無事だった。

「てめーは俺も殺す気か」

「いえ、きっと生き残るだろうなーと」

「ぎゃはははははは」

「そこのドワーフ娘笑うな」

「だって、丸焦げなんだもん」

「はぁ、さて、一度エルレイムに戻りますよ」

「あのバカクソ親父に合うのかよ」

「会う必要はありません、ただ休むだけです。あなたには休息が必用、おいらの魔法でね、あなたの心はもう壊れる寸前なのです。ここまでよくがんばりましたね、ロイフル・ゴッド・エルレイム殿下」

「ぐぬぬ」
「そこで泣かないのがあなたのよき所ですよ、そして悪き所です。王子よ沢山の物を失われた。そして勇者となるのです」

「は、はぁああああ」

「八角の文様、それが勇者の1人の証ですよ」

 その時、ロイフルは気を失ってそこにばたりと倒れた。

「ではレメス君、おいらは疲れたのでドワーフ娘として運ぶのをよろしくお願いします」

「そこはレディー扱いしてくださいよー」

「そうですね、レディーだからこそ、王子をかつぐのですよ」

「はは」

 村人達はこちらを心配そうに見ていた。
 レメスは事情を説明すると、村人達は頭を下げて涙を流していた。
 もうここには盗賊は来ない事も告げる。ちゃんと四方を鷹の目というスキルで再現習得して使用しておいたから。

「さて忙しくなりますよ」
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