僕の想い人は婚約者ではなく婚約者の側近でした。

小町 狛

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第2章

18話~交錯~

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金曜日ー。
 空は快晴で、冬だが比較的暖かい日となりデート日和になった。歌羽は身支度をし終わり、緊張していた。

「はあぁ...緊張する~。誠さん、ちゃんと来てくれるかな?」

「来るに決まってるじゃないですか。来なかった人は腐れ外道ですよ。」

「腐れ外道って...!龍仁朗もそんな言葉使うんだ!」

他愛のない話をしながら二人は駐車場へと向かう。

「お嬢様は何時にお戻りになられるご予定ですか?」

「ん~...それがよく分からないの。私が帰る時に連絡するでいいかな?」

「もちろん宜しいですよ。ただし、その場合は私の送迎の車が来るまで誠様と一緒にいて下さい。何かあったら一大事ですので。」

「うん、分かった!」

そう笑顔で歌羽が微笑むと、龍仁朗も微笑みかけ、車のドアを開いた。

二人は車に乗り、龍仁朗はエンジンをかけながら目的地の確認を始めた。

「お二人の集合場所は銀座四丁目交差点ですよね?」

「うん!運転よろしくね。」

「安全運転かつスピーディーに走行させて頂きます。」

「頼もしいなぁ~!」

二人が世間話やグループの話をしていると、あっという間に目的地に到着した。

龍仁朗は運転席から降り、ドアを開いた。

「お嬢様、目的地に到着しました。まだ誠様は来られていないようなので私が同伴いたします。」

二人は集合場所で待っていたら、数分もかからない内に誠が載っている車が到着した。

誠は車の窓から二人を見つけると、小走りで向かってきた。

「悪い、待たせた。」

「いいのいいの!私たちもついさっきに来たし、龍仁朗が一緒にいてくれたから!」

誠が龍仁朗に目線を移すと、龍仁朗は丁寧にお辞儀をした。

龍仁朗は笑顔だが、不安そうにも感じられる笑顔を見せた。

「...お嬢様を宜しくお願い致します。よい1日を。」

誠は作り笑いを浮かべた。

「...ああ。」

歌羽は誠の手を取って龍仁朗に手を振りながら人混みの中に消えていった。

龍仁朗は二人を羨ましそうな目で見つめていたのに気づかないまま、車に乗り込むと、瑛里華から着信がきた。

(何だ?)


ーピッー


「もしもし。瑛里華様、何かござ...。」

『もしもしー?good morning!龍仁朗チャン!突然ですが問題です!』

瑛里華のマシンガントークについていけず、龍仁朗は慌てて口を挟む。

「あ、あの!問題じゃなくて、何のご用件でしょ...。」

『ジャラン!私は今どこにいるでしょーか!制限時間は10秒!さあ答えて!』

「話を食い気味に入れ込まないで下さい!(ツ、ツッコミが追いつかん...!)」

瑛里華の突然の問題に仕方なく考える。

「...この時間ですし、成田行きの飛行機の中、ですか?」

龍仁朗がそう答えると、瑛里華は高笑いをすした。

『残念!不正解です!正解はぁ~...








成田空港でーす!我慢できなくて予定の便より早いの乗っちゃたのよ~!お迎えよろしくね~!』

「そ、そんなぁ~~!!!今すぐ迎えに行きます~~!!!」

龍仁朗は車を急発進させて猛スピードで成田空港へ向かった。








一方歌羽と誠はブティックに来ていた。歌羽は真剣な顔で誠の服を選んでいた。当の誠はいきなり走らされてゲンナリしていた。

「走らされてどこに行かされるのかと思ったら...ブティックかよ...。」

「うーん...誠さんはやっぱり青系統の色で攻めていった方がいいかな...うん。あ、ちゃんと立っててよね。服を合わせづらい。」

「...なぁ、他人の服選んで楽しい?」

その質問に歌羽は満面の笑みで答える。

「あん!とっても!服を選ぶことで、その人の印象ってガラリと変わるし、気分も変わるんだよ!私のお母さんが言ってた。あ、私のお母さんて海外のファッションデザイナーなんだよ!知ってた?」

「...知ってる。...お前はそんなことに楽しさを見出すんだな。」

「誠さんてさ~ほら、服のセンスないから服選びが楽しいって思えないんだよ!」

歌羽は容赦なく誠に毒づき、誠は面食らったような顔つきになる。

「あのなぁ...人を簡単にセンスないとか言うなよ。」

「え、なに、もしやセンスいいと思ってるとか?

...プププ。」

「いいから続きをしろよ。」

「わーゴメン!ゴメンってば!そんなに不貞腐れないでよ~!」

歌羽はそう言いながら楽しそうに服選びを続けた。
 誠はふと思ったことを歌羽に言った。

「お前はファッションデザイナーになりたいのか?」

「違うよ。メイクアップアーティストになりたいの。」

「メイク...。」

誠はそう呟くと、脳裏に交流会の時の龍仁朗が浮かんで来た。

その時の龍仁朗は歌羽にメイクをされていたのだ。

(そういえば龍仁朗のメイクをしてたっけ...。龍仁朗の白い肌を上手く活かしていたな。

...あの時の龍仁朗は、綺麗だった。)

そう考えていると、誠は知らぬ間にこう呟いていた。

「そういえば交流会の時、龍仁朗にメイクしてたよな。」

「そうだよ!結構上手く出来てたでしょ?龍仁朗の美人な顔がより一層輝いてたよね~...。

ねっ!」

歌羽の問いかけに誠は我に帰り、すかさず頷いた。

「...え、ああ、まあな(つい喋っちまった...。龍仁朗のことは忘れないといけないのに...)。」

歌羽が誠の服選びをして数分後、誠のコーデは完成した。
 色は落ち着いた青系統で統一され、ロングシャツの上に黒のベストを着ており、青のロングコートと水色のマフラーを羽織るコーデになっている。

誠は歌羽の高いコーディネートのセンスに口が開いたままだった。

歌羽は子供のように感想を訪ねてくる。

「どう?中々いいでしょ!誠さんは背が高いしスラッとしてるから、知的で青年っぽさがでる青がいいんじゃなないかなーって思ったの!どうどう?気に入った?」

誠は鏡を見たままで歌羽に返事をしない。そんな誠に歌羽は不安を覚える。


「え...もしかして、気に入らなかった?」

恐る恐る尋ねると、誠はゆっくりと目線を歌羽に向け、口を開いた。

「いや、いいと思う。こんな才能があるんだな...って思った。」

その言葉に歌羽はいつもの明るい笑顔を見せる。

「本当!?やったー!気に入って貰えて良かった!」

好評価を貰えたことに歌羽はガッツポーズをして喜んだ。誠はそんな歌羽を不思議そうな目で見つめた。

(こいつ、ちょっと褒められただけでこんなに喜ぶのか...。単純な奴だな。)

そう考えていると、ふと龍仁朗と初めて口喧嘩した時の龍仁朗の言葉を思い出した。

『お嬢様は亜麻音グループの為と貴様を本気で愛せるように努力をしているのだぞ!』

(ああ...なるほど。最初は何でコイツに異常なほど龍仁朗は執着しているのかと不思議に思ったが...。そうか、そういうことか。

コイツが素直な努力家なんだ。頑張りすぎるところがあるから、一生守りたいって、龍仁朗は思うんだ。)

喜んでいた歌羽はボーッとしている誠に気づき、顔を覗いた。

「誠さん?何ボーッとしてるの?イケてるフェイスが台無しになるよ!」


「っ!

わ、悪い。次はどこに行きたい。」

「そうだな...あ!食べ歩きしたいな!誠さんに銀座の美味しいものたくさん食べてもらいたいし!」

「分かった。お前の行きたいところから行っていいぞ。俺はそれに合わせる。」

「あのさー、私のこと、そろそろお前って呼ぶのやめない?」

歌羽を頬を膨らませる。

「...じゃあ何で呼べばいい。」

「お前以外ならなんでもいい!歌羽でも、亜麻音でも、なーんでもいいよ!私、苗字も名前も大好きだから!」

歌羽の言葉に誠は目を丸くする。

「...そんなに家族好きだとは思わなかった。
 ...亜麻音。」

誠の苗字呼びに歌羽は大笑いした。

「何だよ、なんでもいいって言っただろ。」

「いや、ここまで来ても苗字呼びなんだと思うと...あははははっ!誠さん面白いねー!」

「じゃあ呼び捨てがいいのかよ。」

「ううん、別にいいよ!誠さんがその呼び方が好きなら、私大歓迎だよ!じゃあ、食べ歩き、レッツゴー!」

歌羽は誠の手を引っ張りながら走っていく。

「おいっ、店内だぞ!走るなって...聞いてない!」








成田空港ー。
多くの人がケースを持って受付を済ませたり、時間を確認するなど、人で溢れかえっていた。そこに龍仁朗は到着し、瑛里華を見つけるため、空港内を走り回っていた。

「瑛里華様っ...!どこにいらっしゃるのか...。何故ここで隠れんぼをしようと思ったのかあの方は!」

数分前ー。

「瑛里華様!申し訳ございませんでした!只今成田空港に着きましたので、すぐにお迎えに参ります!」

『あら、早いわね~!龍仁朗チャン、簡単に私が見つかっちゃったら...



つまらないと思わない?』

瑛里華の意味不明な言葉に龍仁朗は呆れた声を漏らす。

「はい?な、何を仰って...。」

『はーいそれでは!瑛里華オバさんを探せin NARITA airport!
 Ready...go!!』

「えぇ~~~!?」

龍仁朗は自由奔放な瑛里華の言動に気絶しそうになりながら人で溢れる成田空港に入っていった。

一方寺崎財閥でデスクワークをしている今宮は、腕時計で時間を確認し、窓から成田空港がある方角を見つめていた。

「瑛里華夫人の場合は予定の飛行機の便より一つ早い便に乗るのは当たり前...。

龍仁朗さんに伝えておけばよかったな...。」
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