原っぱの中で

紫奈

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受験が終わり、第一志望に落ちたことがわかった。手応え的に五分五分だったので、ほんの少し期待してしまった面もあっただけに、少しの間呼吸ができなかった。
結局滑り止めの私立に行くことになった。

皆が褒めてくれた。"2年分を自分で埋めることなんてそうそうできない"、"現役合格なんてすごい"


どの言葉も浮いて聞こえた。きっと私の問題だろう。周りは本当に喜んでくれたと思う。ちゃんと伝わっている。努力も認めてもらえた。
それなのに私は私自身を褒めてあげることが出来なかった。'落ちたくせに何故のうのうと生きているのだろう'とさえ思った。

きっと私は自分に失望した。こんなもんなのか、という気持ちが大半を占めた。こんなこと誰かに伝えたら、"お前は高望みしすぎだ"と言われるかもしれない。でもしょうがないのだ。自分がこのレベルだと諦めてしまいたくなかった。もっと家族を喜ばせたかった。祖父に最後のプレゼントをしたかった。
祖父はもう長くない。今回帰省したら次に会う時には眠っているのだろう。祖父は高学歴が好きだ。親もそう。私はその期待に応えられなかった。いや、既に諦められていたのかもしれない。
"もっと頑張ればよかった"と思わないことが唯一の救いだ。私なりの全力で頑張ることは出来たらしい。それでも、結果が全てだ。

上手くいかない。いつも中途半端だ。
これからもずっと中途半端なままなのだろうか。
人付き合いも、人生も、全てがぶつ切れになって続いている。

無性に君に会いたくなった。君に会わなくてはいけない、と思った。
君からの返事はいつも決まっている。


"いつでも、好きな時に、自由に俺のところにおいで"
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