2 / 123
2.前世を思い出したら崖っぷちでした②
しおりを挟む
「それで私は誰に転生するんですか?」
「それはまだ決まってないから選べるわよ。」
そうなの?! それなら問題は、ないんじゃないかしら?ヒロインになれば、なんとかなるわよね。最初に言って欲しかったわ。ほっとしすぎてそんなことを考えていると、おばあちゃんが話しかけてきた。
「真理ちゃんは誰と恋がしたいの?」
ーーーーそんなのずっと前から決まってる…。ずっとずっとずっと好きだった。ゲームの中の人だから、本気で好きになっちゃだめだって、諦めてた人…。自分の足で歩くのと同じくらい諦めてた。
「私はアーサー様と…。」
・・・恋をしたい。
「あさひ君に似ている子ね。」(あさひ=おじいちゃんです)
キャー!隠していたのにさらっと言われちゃった。恥ずかしすぎてもう一度死ねそう。自分の顔が一気に真っ赤になったのが分かったけどおばあちゃんは私の顔に気付くこともなく話してくる。
「そうすると真理ちゃんはマリーちゃんになりたいってことでいいのかしら?」
「ヒロインのブロッサじゃなくて、悪役令嬢のマリーに?」
ありえない、たしかになぜかは分からないけど、アーサー様はヒロインのブロッサにさえ冷たいのにマリーにだけは微笑んでいた。攻略対象じゃないから細かい設定までは分からないけど。ただ時々見せるアーサー様の、せつなそうな顔が、自分みたいな人間は生きていていいのかなって思っていた頃の自分と、なぜか少し重なって見えた気がするのよね。
そもそも初代乙女ゲームは学生向けですごく残虐非道な行為はないし、悪役令嬢もちょっと意地悪な令嬢レベルだし、怪我をさせたらかわいそうだからとやることが優しいのよね。やることがとっても緩すぎて、気付いてもらえないこともあったわね。なんだかマリーってお気の毒ね。
ゲームをしている時は、ヒロイン目線だからヒロインが怪我しなくて良かったなぁとか、もう次から次へと意地悪するのやめてよねって思っていたのに、ちょっと不思議…。アーサー様もマリーのこと不憫に思っていたのかしら?マリーに微笑むアーサー様、素敵だったな。マリーのこと、うらやましーって思ったのよね。
だけど悪役令嬢はやっぱり悪役令嬢で、最後はどのルートを選んでもマリーの放ったへなちょこ黒魔法が、運悪く威力を何百倍にもする鏡にあたり、マリーに跳ね返って息もできないくらいに苦しんで、目を覚まさなくなるのよね。それを必死に助けようとするのがヒロインのブロッサ。なんていい子なのって思ったのよ。おかげでマリーは死なずに済むんだけど、魔法の影響で、心が壊れてしまって、笑うことも、しゃべることも、怒ることもなくなってしまう。ただ人形のように生きていくだけ…。
アーサー様は、人形のようになったマリーでもいいと言って、結婚するんだけど…。う~ん、マリーは死なないし、牢屋にも入らないけど、やっぱり心が壊れるとか怖すぎるわ。自分なりに考えてみたけど、やっぱりヒロインのブロッサの方がいい気がするんだけど…。おばあちゃんは、なんでマリーって思ったのかしら?
「なんで、マリーなんですか?ブロッサではだめなんですか?」
「う~ん、アーサー君ってマリーちゃん以外にそもそも興味がない気がするのよね。マリーちゃんが人形のようになってもそばを離れないでしょ。なぜかは分からないけど、アーサー君にとってマリーちゃんは唯一の人で、アーサー君のすべてなんじゃないかしら。」
「・・そんな・・。」
てっきりヒロインになるつもりでいたから不安になってきちゃった。アーサー様の唯一の人、すべて…。私だって、アーサー様以外の人なんて考えられない。どんなアーサー様でも、アーサー様がいい。
「真理ちゃん、そんなに難しく考えなくていいのよ。生きていれば人生は変えられるわ。マリーちゃんに転生しても、真理ちゃんらしく、マリーちゃんを生きればいいのよ。」
「私らしいマリー…。」
そうだわ、その通りだわ。私は人を虐めたりしないし、我がままも言おうとは思はない。健康な体になるなら、元気に外で遊んでみたい気はするけど、なんでマリーはあんなに我がままになっちゃったのかしら?
よくよく考えてみたら、私はアーサー様にしか興味がないし、攻略対象者なんてどうでもいいから、マリーでも問題がない気がしてきたわ。
よーし、なんだかやる気がみなぎってきたわ。
「私は、マリーになりたいです。」
「わかったわ。天国から私とあさひ君はずっと見守っているからね。」
おばあちゃんの言葉が終わらないうちに、辺りがきらきらと眩しくなって、目がくらんだ次の瞬間、誰もいなくなっていたわ。私の感覚も、真理からマリーに戻って、
「前世の回想が終わったのね…。色々と思い出せたわ。あれ?まだ目が覚めないのね?まだ何かあるのかしら?」
思わず独り言を言ってしまった。
「続くわよ、あなたが乙女ゲームのマリーちゃん(赤ちゃん)として、新しい家族から祝福され、生まれたところまで見せてあげる。」
小さな小さな声で返事が返ってきた。もう分かるわ。おばあちゃん(さっちゃん)だわ。私は心の中でお礼を言ったの。神様にばれないように、一生懸命教えてくれたのね。ありがとう。
たしかに、いま教えてもらえる情報は非常にありがたい…。
だって明日はデビュタント(初の夜会デビュー)。攻略対象者に会いまくる日。今までの私だったら声を掛けまくっていたでしょうね。
わ・た・く・し、かなりの崖っぷちでしたわ。
今まで転生したこともすっかり忘れて、のんきに十五年間もこの世界でマリーとして生きてきちゃった。
今の私は、前世では信じられないけど、アーサー様のことをアーサーと呼び捨てにするような女の子。逆にアーサー様なんて恥ずかしくて絶対に言えないわ。呼んだらみんなが心配しそう…。
でも前世を思い出して、冷静に今の自分を分析すると、悪役令嬢っていうより素直になれないツンケン令嬢かしら…。あとは無意識に健康な体が嬉しかったのか、かなりのお転婆令嬢?かな?今日も、侍女のサリーの頭の上にカエルを落としちゃって、気絶させちゃったのよね。わざとじゃないのよ。カエルがピョンって…。謝りたかったんだけど、なんか素直になれなくて。サリーがそんなところ通るから悪いのよって、だめね、このままいくと悪役令嬢になれそうね。
そんなことを考えていたら産声が聞こえてきたわ。前世の記憶がなかったから、すんなり新しい家族を受け入れられたんだろうけど…。今はそれをよかったなんてとても思えないくらい崖っぷちですけど、おじいちゃん、おばあちゃん、崖っぷちマリーは頑張ります。
「それはまだ決まってないから選べるわよ。」
そうなの?! それなら問題は、ないんじゃないかしら?ヒロインになれば、なんとかなるわよね。最初に言って欲しかったわ。ほっとしすぎてそんなことを考えていると、おばあちゃんが話しかけてきた。
「真理ちゃんは誰と恋がしたいの?」
ーーーーそんなのずっと前から決まってる…。ずっとずっとずっと好きだった。ゲームの中の人だから、本気で好きになっちゃだめだって、諦めてた人…。自分の足で歩くのと同じくらい諦めてた。
「私はアーサー様と…。」
・・・恋をしたい。
「あさひ君に似ている子ね。」(あさひ=おじいちゃんです)
キャー!隠していたのにさらっと言われちゃった。恥ずかしすぎてもう一度死ねそう。自分の顔が一気に真っ赤になったのが分かったけどおばあちゃんは私の顔に気付くこともなく話してくる。
「そうすると真理ちゃんはマリーちゃんになりたいってことでいいのかしら?」
「ヒロインのブロッサじゃなくて、悪役令嬢のマリーに?」
ありえない、たしかになぜかは分からないけど、アーサー様はヒロインのブロッサにさえ冷たいのにマリーにだけは微笑んでいた。攻略対象じゃないから細かい設定までは分からないけど。ただ時々見せるアーサー様の、せつなそうな顔が、自分みたいな人間は生きていていいのかなって思っていた頃の自分と、なぜか少し重なって見えた気がするのよね。
そもそも初代乙女ゲームは学生向けですごく残虐非道な行為はないし、悪役令嬢もちょっと意地悪な令嬢レベルだし、怪我をさせたらかわいそうだからとやることが優しいのよね。やることがとっても緩すぎて、気付いてもらえないこともあったわね。なんだかマリーってお気の毒ね。
ゲームをしている時は、ヒロイン目線だからヒロインが怪我しなくて良かったなぁとか、もう次から次へと意地悪するのやめてよねって思っていたのに、ちょっと不思議…。アーサー様もマリーのこと不憫に思っていたのかしら?マリーに微笑むアーサー様、素敵だったな。マリーのこと、うらやましーって思ったのよね。
だけど悪役令嬢はやっぱり悪役令嬢で、最後はどのルートを選んでもマリーの放ったへなちょこ黒魔法が、運悪く威力を何百倍にもする鏡にあたり、マリーに跳ね返って息もできないくらいに苦しんで、目を覚まさなくなるのよね。それを必死に助けようとするのがヒロインのブロッサ。なんていい子なのって思ったのよ。おかげでマリーは死なずに済むんだけど、魔法の影響で、心が壊れてしまって、笑うことも、しゃべることも、怒ることもなくなってしまう。ただ人形のように生きていくだけ…。
アーサー様は、人形のようになったマリーでもいいと言って、結婚するんだけど…。う~ん、マリーは死なないし、牢屋にも入らないけど、やっぱり心が壊れるとか怖すぎるわ。自分なりに考えてみたけど、やっぱりヒロインのブロッサの方がいい気がするんだけど…。おばあちゃんは、なんでマリーって思ったのかしら?
「なんで、マリーなんですか?ブロッサではだめなんですか?」
「う~ん、アーサー君ってマリーちゃん以外にそもそも興味がない気がするのよね。マリーちゃんが人形のようになってもそばを離れないでしょ。なぜかは分からないけど、アーサー君にとってマリーちゃんは唯一の人で、アーサー君のすべてなんじゃないかしら。」
「・・そんな・・。」
てっきりヒロインになるつもりでいたから不安になってきちゃった。アーサー様の唯一の人、すべて…。私だって、アーサー様以外の人なんて考えられない。どんなアーサー様でも、アーサー様がいい。
「真理ちゃん、そんなに難しく考えなくていいのよ。生きていれば人生は変えられるわ。マリーちゃんに転生しても、真理ちゃんらしく、マリーちゃんを生きればいいのよ。」
「私らしいマリー…。」
そうだわ、その通りだわ。私は人を虐めたりしないし、我がままも言おうとは思はない。健康な体になるなら、元気に外で遊んでみたい気はするけど、なんでマリーはあんなに我がままになっちゃったのかしら?
よくよく考えてみたら、私はアーサー様にしか興味がないし、攻略対象者なんてどうでもいいから、マリーでも問題がない気がしてきたわ。
よーし、なんだかやる気がみなぎってきたわ。
「私は、マリーになりたいです。」
「わかったわ。天国から私とあさひ君はずっと見守っているからね。」
おばあちゃんの言葉が終わらないうちに、辺りがきらきらと眩しくなって、目がくらんだ次の瞬間、誰もいなくなっていたわ。私の感覚も、真理からマリーに戻って、
「前世の回想が終わったのね…。色々と思い出せたわ。あれ?まだ目が覚めないのね?まだ何かあるのかしら?」
思わず独り言を言ってしまった。
「続くわよ、あなたが乙女ゲームのマリーちゃん(赤ちゃん)として、新しい家族から祝福され、生まれたところまで見せてあげる。」
小さな小さな声で返事が返ってきた。もう分かるわ。おばあちゃん(さっちゃん)だわ。私は心の中でお礼を言ったの。神様にばれないように、一生懸命教えてくれたのね。ありがとう。
たしかに、いま教えてもらえる情報は非常にありがたい…。
だって明日はデビュタント(初の夜会デビュー)。攻略対象者に会いまくる日。今までの私だったら声を掛けまくっていたでしょうね。
わ・た・く・し、かなりの崖っぷちでしたわ。
今まで転生したこともすっかり忘れて、のんきに十五年間もこの世界でマリーとして生きてきちゃった。
今の私は、前世では信じられないけど、アーサー様のことをアーサーと呼び捨てにするような女の子。逆にアーサー様なんて恥ずかしくて絶対に言えないわ。呼んだらみんなが心配しそう…。
でも前世を思い出して、冷静に今の自分を分析すると、悪役令嬢っていうより素直になれないツンケン令嬢かしら…。あとは無意識に健康な体が嬉しかったのか、かなりのお転婆令嬢?かな?今日も、侍女のサリーの頭の上にカエルを落としちゃって、気絶させちゃったのよね。わざとじゃないのよ。カエルがピョンって…。謝りたかったんだけど、なんか素直になれなくて。サリーがそんなところ通るから悪いのよって、だめね、このままいくと悪役令嬢になれそうね。
そんなことを考えていたら産声が聞こえてきたわ。前世の記憶がなかったから、すんなり新しい家族を受け入れられたんだろうけど…。今はそれをよかったなんてとても思えないくらい崖っぷちですけど、おじいちゃん、おばあちゃん、崖っぷちマリーは頑張ります。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
121
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる