麗しの勘違い令嬢と不器用で猛獣のような騎士団長様の純愛物語?!

miyoko

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25.クッキーのいい匂いで目を覚ましました

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「美味しそうな匂いだわ…。」
私は美味しそうな匂いで目を覚ましたの。
「いま起こそうと思っていたんだが、目が覚めたようだね。クッキーを焼いてみたんだ。一つ食べるかい?」
「カール様のクッキー、食べたいですわ。」
「アーモンドの粉末をたっぷり入れたクッキーだよ。」
「美味しい…。」
「ロザリーどうしたんだい?どこか痛いのか?」
「幸せ過ぎて、勝手に涙が出てきてしまいましたわ。どうしましょう。止まりません。」
「ここには誰もいないから安心して泣くといい。きっと気が張り詰めていたんだろう。最近色々とあり過ぎたからね。」
カール様は優しく私を抱きしめてくださったの。カール様の匂いだわ。ホットする…大好き。
「ロザリー、愛している。こんな体躯の私を好ましいと言ってくれた。私の好きな食べ物も喜んでくれた。趣味の菓子作りもこんなに喜んでくれて、こんなに嬉しい日々がくるなんて…。もちろん麗しい容姿も素敵だが、なによりあなたの心が美しい。」
「カール様、も、もう十分です。カール様も同じですわ。見た目はもちろん素敵ですが、普段から私の歩幅に合わせて歩いてくださる優しさや小さなものや弱いものを大切にする優しさを知って、ますます大好きになりました。」
「ロザリー、ありがとう。私の内面も見てくれるのはロザリーだけだよ。私はどこかでこの体躯のせいで本当に自分が好きなものや、やりたいことを諦めていたんだ。自分には似合わないと思ってね。ロザリーのおかげでありのままで良いのだと思えるようになったよ。ロザリーありがとう。」

カール様に強めに抱きしめられて、
「カール様、ちょっと力が強いですわ、息が…。」
「すまない、つい力が入りすぎてしまった。」
「だ、大丈夫ですわ。それより皆様のところに戻りましょう。」
「いや、私はもう少しこうしていたいんだが、誰か来たようだね。」
カール様は耳もいいのね。少ししてドアをノックする音がして、カール様のおばあ様が紅茶を入れてきてくださったわ。
「クッキーに合う紅茶を入れてきたから飲まない?」
「ありがとうございます。ダージリンティー…美味しい。」
「落ち着く紅茶と悩んだのよ、気に入ってもらえたようで良かったわ。」
「とてもすっきりしているので、クッキーが進みますね。」
「あとでロザリーちゃん、少しだけ私の部屋に来てくれないかしら?実は私もロザリーちゃんと同じような趣味をもっているの…。」
「ああ、刺繍ですか?」
「えっ?そちらも好きだけど、それではなくて…。来てくれたら分かるわ。」
「分かりました。このクッキーと紅茶をいただいたら伺いますね。」
「ありがとう。待っているわ。」
カール様のおばあ様は嬉しそうに出て行かれたけど、
「はぁ~、困ったな。」
「どうされたのですか?」
「いや、祖母の趣味はたしかに、ロザリーと同じだとは思うのだが、少し行き過ぎているというか、びっくりしないでもらえるとありがたい。」

「分かりましたわ。人の趣味は様々ですものね。ところでどんなご趣味をお持ちなのですか?」
「それがだな、趣味というのかは分からないが、祖母も私のような体躯の男が好きなのだ。祖父の容姿は私にそっくりなんだよ。」
「まぁ、それは素敵なご趣味ですわ。」
「でも、祖父のことが好きすぎてだな、いまだに近衛騎士団の服やら、礼装やら、飾ってあるのだ。それも祖父そっくりの人形が着ている…。」
「ひっ!」
「だから、私も祖母の部屋は少し苦手なんだよ。いまでは私が沢山いるようでね。」
「たしかに、それは怖いかも知れませんね。」
「きっとおばあ様は本当に寂しかったのでしょうね。」
「ロザリーは優しいね。そう言ってもらえるとありがたいよ。家族の者もそう思っているから強く言えないんだよ。それに、ロザリーのことを話した時には本当に嬉しそうに話がしたいと言っていたからね。あんなに生き生きした祖母は初めて見たよ。」
「そうだったのですね。それはなんとなく分かる気がします。残念ですが、どの方にお話ししても筋肉に関してはいい反応は返ってきませんから。」
「そうだろうね。まぁそういうことだから、驚かないでもらえるとありがたい。もともと祖母は国王陛下の叔母にあたるんだ。ただ、若い頃は病弱でほとんど社交の場に出なかったらしい。そこで前国王の護衛をしていた祖父を見初めたと聞いている。」

「まぁ、なんて素敵なお話でしょう。いまは丈夫になられたのですね。」
「祖父と過ごすうちに自然と体力もついてきたと言っていたよ。」
「愛の力ですね。」
「そうかもしれないね。少しづつ、外に出られるようになり、初デートでは先程のシロツメクサの生えていた草原に行ったそうだよ。そのシロツメクサを一株取ってきて増やしたのがあの温室なんだよ。」
「まぁ、なんてロマンチックなお話でしょう。」
「だろう?でも周囲からは私と同じであの猛獣がと笑われていたらしい…。」
「許せませんわ。そのギャップがいいのではないですか。どうして分からないのかしら?」
「ギャップ?それでも祖父は恥ずかしがらずに堂々と、クッキーを作ったり、花を生けたりしていたらしい。それも王宮でね。私よりよっぽど男らしいよ。」
「カール様の器用なところはおじい様譲りなのですね。」
「そのようだ。そろそろ、祖母の部屋に行こうか?きっと、今か今かと待っているよ。」
「そうでした、あまりお待たせしてはいけませんね。すぐに伺います。私も楽しみになってきましたわ。」
私とカール様は急いでおばあ様の部屋に向かったの。

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