農場経営?そんなことより僕は恋が仕事です!

ただのひと

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はじまりの夏

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 結局僕の案だからと牧場の名前は『ルロヨシ牧場』となった。

 誰の牧場だよとグロウには言われるし、語呂感がないとキョウちゃんには言われるしで散々だったんだけど、それでも二人は笑わないでいてくれた。

「よし、完成! 後は乾くのを待ってこの門に下げるだけだね」
 キョウちゃんはそう言って満足げにふんすと鼻を鳴らすと、そのまま地べたに座り込む。
「ふいー。疲れちゃったよ。やっぱり大きなものを書くのは大変だねぇ」
「お疲れ様。これ、自家製のしそジュースだけどよかったら」
「ありがとー。うーん、さっぱりしてて生き返るー」
 キョウちゃんはぐっと一気にそれを飲み干すと、ぐぐーっと伸びをしてぱたりと地面に倒れた。
「あ。そう言えば二人とももう準備できてるよね?」
「準備?」
 何の話かさっぱりわからなくてそう問えば、グロウがしまったという顔をする。
「やべっ、ごめん! お前に伝え忘れてたわ!」
「へ? へ?」
「ちょっとー。どうするのよ、それ。オードが悲しむわよ?」
「へ? へ? へぇぇえ?」
 わけがわからなくて目を白黒させていると、丁度そこにオードちゃんの姿が見えてくる。
 手を振ってこちらに駆け寄ってくるオードちゃんの姿に、キョウちゃんがあきれたような声でグロウをにらみながら言うのだった。

「オードの誕生日、明日なのよ」
「はぁあああああ!?」
 思わずの叫びにオードちゃんの体がびくっと揺れ、恐る恐るとこちらにやってくる。

「ど、どうしたのノルズくん。似合わない大声なんて出しちゃって」
「あ、いや、そのなんでもないん、いやなんでもあるんだけど、いや、え? え?」
「ノ、ノルズくん?」
「オード、ちょっと彼はそっとしておいて上げて。ちょっと今大混乱中なのよ。グロウのせいで」
「ちょ、俺がそこまで悪い!? ……いや、悪いのか?」

 え、え、どうしよう。何も準備できてないって言うか何も準備してないというか、何を準備すればいいのかさえわからない!

「そ、そっか。とりあえず今日のお弁当、ここにおいて置けばいいかな?」
「多分そのうち戻ってくるからそれでいいんじゃない?」
「そうかな?そうだよね……。あ、看板出来たんだ。『ルロヨシ牧場』かー。いい名前だね」
「本当に!?」
 思わずいい名前に反応してしまった僕は、オードちゃんに詰め寄って。
「え! え、うん。いい名前だと思うよ? なんか仲良しって感じの雰囲気を感じるかな?」
「ありがとう!」
「ど、どういたしまして?」
 大混乱中の僕は混乱するオードちゃんの手を思わずとって、ぶんぶんと上下に振って感謝を表す。
 ほらみろ、わかってくれる人はいるんだい!

「あー……ノルズのやつ、これ絶対後から何やったか気づいて後悔するパターンだわ」
「このくらいで? まあ私にもさっぱりな感性だけど、この二人ってこういうところ似てるのかもしれないわね」
「それには同意。俺にはわからんもん」
 そうして繰り広げられたカオスな状況に僕が冷静になったのは、オードちゃんの手を握っているという事実に気づくまでの十分かかったのであった。


「で、どうするんだ? 誕生日プレゼント」
 二人の帰った後、グロウが悪気もなくそう聞いてくる。
 元はといえばグロウがもっと早くに教えてくれれば……って、自分で聞けばよかったんだからグロウを批判するのも間違っている気がしてきた。
「オードちゃん、何が好きなんだろう……」
「卵だろ」
「それは知ってた!」
「あー……包装した卵でも贈っとけば喜ぶんじゃね?」
「適当だね! さすがに僕もそれはないと思うよ!?」
「あ、わかった!今から花でも摘んでいこう」
「……それ、悪くないかもしれない」
 花を台座にして温泉卵を真ん中において……。
「お、じゃあ決まりだな! よし、山まで花摘みに行こうぜ」
「うん!」
 でも、もともと朝から一個贈ってるわけだし、それなら普通の卵のほうが喜ぶかもしれないよなぁ。
 温泉卵ならいくつでも食うって前に豪語してたからなぁ……。
 じゃあ温泉卵も一応入れることにしよう。
 ……喜んでもらえると良いなぁ。
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