農場経営?そんなことより僕は恋が仕事です!

ただのひと

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はじまりの夏

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 好きな人が、出来ました。

 初めての好きな人でした。

 最初はなんとも思っていなかったけれども、私の思いを肯定してくれて。
 私の思いを、優しさで包んでくれる人でした。

「待って!」

 けれども、その好きな人が好きな人は別にいて。
 最初からバレバレなくらい、その人のことだけを思っていて。

 だから少しだけ、背中を押してあげようって、そう決めたんです。

「い、今嬉しいって。キョウ、もしかしてもう……」
「うん。受け取ってもらえたよ。私の気持ち」

 私の好きな人の好きな人は、私の大親友で。
 恋愛に臆病で、自信がなくて、動けないような子で。

 だからその子の背も押してあげることにしたんです。

「そんな……だって――」
「だって? 最初から私は言ったよね? 今日渡すことにするって。オードはどうするのって、きちんと聞いたよ、私」
「あ、あのぅ……何の話で――」
「ノルズくんは黙ってて!」
「はい!」
 気をつけの姿勢で背筋をぴんと張る、私の言いなりのこの人。
 この人が私の好きな人です。とってもとっても、優しい人です。

「オードはさ、遅すぎたんだよ。自分にもっと自信を持って、ちゃんとあたってあげればよかったんだよ。そしたらこんな風にはならなかったのに」
「でも……」
「でももだってもいらないよ、オード」
 そう、でももだっても、もしかしたらも何も要らない。

 もしかしたら先に私がこの人に会っていたら、なんて考える自分も、いらないんだ。

「じゃあ私、先に戻ってるから。あ、ノルズくんはそれ、大事にしてね」
「え。あ、うん、ありがとう」

 そうして、二人をお置き去りにして私は二人の待つ場所へ戻る。

 涙は家に帰ってからって、そう思ってたけど、大丈夫かな。
 マリンにあったら泣いちゃいそうで、怖いけど。

 私はこの前、初めて大好きな町以外の絵を書きました。
 それは私の大好きな人の絵で、小さな小さな絵だったけれども。

 それを渡せてよかったと、今は心から思います。
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