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はじめての秋
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「お嬢さんとお付き合いをさせていただくことになりました!」
夏の終わり。
花火大会の次の日のことだった。
ボロ屋も新築の家に変わり、宿屋を出る時の出来事である。
お世話になしましたと挨拶をする際に、もうひとつご報告がありますと九十度に頭を下げてそんな事をテッドさんに言い出したのは僕だった。
「…………」
それを聞いたテッドさんは無言になり、オードちゃんは驚いて何言ってるの?! と言わんばかりに僕の腰あたりをバシバシと叩く。
オードちゃんに秘密にしていたのは悪かったと思っているけれども、それでも言わなければいけないと心に決めていたことだった。
「ノルズ」
「はい!」
たっぷり三分ほどは経った頃だったろうか。
頭の上からそんな声がかかり、僕は頭を下げたまま思い切りよく返事をする。
「ちょっとこい」
「はい!……は?」
言われたことがよくわからなくて顔を上げれば、厨房の方を親指で指差すテッドさん。
「ちょ、ちょっとお父さん?!」
「なんだ?」
「ノルズくんに変なことしないでよね!?」
「ちょっと話をするだけだ。いいからこい」
そうしてガシリと肩を組まれると、僕は厨房へと連行される。
心配そうにこちらを見ているオードちゃんに大丈夫だよとにっこりわらってみせたけれども、恐怖でちょっと硬かったかもしれないのは許して欲しいところである。
「で、オードと付き合ってるって?」
「は、はい! 昨日の花火大会からそういうことになりました!」
「いちいち叫ばんでいい。耳がおかしくなる」
「す、すみません」
「にしてもそうか……。オードが恋人を作ってきたか……」
「こ、こいび……」
「なんだ? 違うのか?」
「い、いえ。そうなんですけど、その、なんかなれなくて……」
そう言って頭をかくと、テッドさんの睨みがキツくなった気がした。
で、でもおつきあいするんだたらきちんと言わなきゃいけないってずっと思ってたんだ。
テッドさんは、ウチの娘を嫁にもらってくれるか? って言ってくれた人だから。
こういう事はきちんとしたいし、きちんとしないといけないことだと思ってたんだよ。
そんな事を考えていると、組まれた肩を更に強く締め上げられる。
「よくやった、坊主!」
そう言って笑顔で祝福してくれるテッドさんに痛いですとはなんとなく言えなくて、とりあえず笑顔を返した。
それからようやっと肩組みを外してくれると、こんぢは顎髭に手をやってテッドさんは口を開いた。
「だがまあ、付き合い始めたのが昨日ってことはまだまだ今からだな」
「は、はい」
「お前のことは認めているが、まだ結婚は早い!」
「それはまだ考えて……なくはないですけど早すぎますから大丈夫ですよ!?」
「まあそうだな。お前のことだから結婚を前提に付き合うって意味だと思ってな」
「ま、まあそれはその……もちろん、はい……」
そう言ってとたんにもじもじとし始める僕のことをキロリともう一度睨まれて、思わず背筋がぴんと伸びる。
この人、気さくでいい人なんだけどいかんせん外見がよろしくない。大男で怖いのだ。
「さて、ではこれからの話しだが……」
「は、はい」
「オードのことは十一時までには返せ」
「午前中のですか!? お昼時、忙しいですもんね……そうですよね」
「バカモン! 夜の十一時に決まってるだろうが」
「むしろそれはそれで門限遅すぎませんか!? というか夜の営業どうするんですか!」
「む……。言われてみればそうだったな……」
この人、案外抜けてるのか。さすがオードちゃんの父親である。
「じゃあ申請制で行こう。お前たちがデートしたい時は俺に言え。そうしたらその日はオードは休ませる」
「な、なかなかハードル高いですぅ……」
「なに、このくらいやってみせろ。漢を見せろ、漢を」
「は、はい……」
「あとはそうだな……。外泊には許可を取れ」
「外泊しませんよ、多分!?」
「そうか? 若いもんには必要だろう?」
「ち、誓って変なことはしませんから! というか同じ町なのに帰らせないような事態にはしません!」
「そうなのか?」
「そうですって!」
「今はそうでも……」
「ああああああ!もうそれ以上はいいです、それはその時考えましょう!」
この人、アバウトすぎる!
むしろ門限は守れ、外泊はするな、変なことは考えるなくらい言ってもらわないとこっちが困る!
「ノルズくん、大丈夫? なんかさっきからところどころノルズくんの大声が聞こえるんだけど……」
「キノセイデス! では、テッドさん。そういうことで!」
「おう。まあお前に任せたよ」
全力でそれを否定して、オードちゃんを連れてとにかくこの場を去ることにする。
というか最後のお前に任せたよって、どうとでも取れる発言やめてくださいぃ!
夏の終わり。
花火大会の次の日のことだった。
ボロ屋も新築の家に変わり、宿屋を出る時の出来事である。
お世話になしましたと挨拶をする際に、もうひとつご報告がありますと九十度に頭を下げてそんな事をテッドさんに言い出したのは僕だった。
「…………」
それを聞いたテッドさんは無言になり、オードちゃんは驚いて何言ってるの?! と言わんばかりに僕の腰あたりをバシバシと叩く。
オードちゃんに秘密にしていたのは悪かったと思っているけれども、それでも言わなければいけないと心に決めていたことだった。
「ノルズ」
「はい!」
たっぷり三分ほどは経った頃だったろうか。
頭の上からそんな声がかかり、僕は頭を下げたまま思い切りよく返事をする。
「ちょっとこい」
「はい!……は?」
言われたことがよくわからなくて顔を上げれば、厨房の方を親指で指差すテッドさん。
「ちょ、ちょっとお父さん?!」
「なんだ?」
「ノルズくんに変なことしないでよね!?」
「ちょっと話をするだけだ。いいからこい」
そうしてガシリと肩を組まれると、僕は厨房へと連行される。
心配そうにこちらを見ているオードちゃんに大丈夫だよとにっこりわらってみせたけれども、恐怖でちょっと硬かったかもしれないのは許して欲しいところである。
「で、オードと付き合ってるって?」
「は、はい! 昨日の花火大会からそういうことになりました!」
「いちいち叫ばんでいい。耳がおかしくなる」
「す、すみません」
「にしてもそうか……。オードが恋人を作ってきたか……」
「こ、こいび……」
「なんだ? 違うのか?」
「い、いえ。そうなんですけど、その、なんかなれなくて……」
そう言って頭をかくと、テッドさんの睨みがキツくなった気がした。
で、でもおつきあいするんだたらきちんと言わなきゃいけないってずっと思ってたんだ。
テッドさんは、ウチの娘を嫁にもらってくれるか? って言ってくれた人だから。
こういう事はきちんとしたいし、きちんとしないといけないことだと思ってたんだよ。
そんな事を考えていると、組まれた肩を更に強く締め上げられる。
「よくやった、坊主!」
そう言って笑顔で祝福してくれるテッドさんに痛いですとはなんとなく言えなくて、とりあえず笑顔を返した。
それからようやっと肩組みを外してくれると、こんぢは顎髭に手をやってテッドさんは口を開いた。
「だがまあ、付き合い始めたのが昨日ってことはまだまだ今からだな」
「は、はい」
「お前のことは認めているが、まだ結婚は早い!」
「それはまだ考えて……なくはないですけど早すぎますから大丈夫ですよ!?」
「まあそうだな。お前のことだから結婚を前提に付き合うって意味だと思ってな」
「ま、まあそれはその……もちろん、はい……」
そう言ってとたんにもじもじとし始める僕のことをキロリともう一度睨まれて、思わず背筋がぴんと伸びる。
この人、気さくでいい人なんだけどいかんせん外見がよろしくない。大男で怖いのだ。
「さて、ではこれからの話しだが……」
「は、はい」
「オードのことは十一時までには返せ」
「午前中のですか!? お昼時、忙しいですもんね……そうですよね」
「バカモン! 夜の十一時に決まってるだろうが」
「むしろそれはそれで門限遅すぎませんか!? というか夜の営業どうするんですか!」
「む……。言われてみればそうだったな……」
この人、案外抜けてるのか。さすがオードちゃんの父親である。
「じゃあ申請制で行こう。お前たちがデートしたい時は俺に言え。そうしたらその日はオードは休ませる」
「な、なかなかハードル高いですぅ……」
「なに、このくらいやってみせろ。漢を見せろ、漢を」
「は、はい……」
「あとはそうだな……。外泊には許可を取れ」
「外泊しませんよ、多分!?」
「そうか? 若いもんには必要だろう?」
「ち、誓って変なことはしませんから! というか同じ町なのに帰らせないような事態にはしません!」
「そうなのか?」
「そうですって!」
「今はそうでも……」
「ああああああ!もうそれ以上はいいです、それはその時考えましょう!」
この人、アバウトすぎる!
むしろ門限は守れ、外泊はするな、変なことは考えるなくらい言ってもらわないとこっちが困る!
「ノルズくん、大丈夫? なんかさっきからところどころノルズくんの大声が聞こえるんだけど……」
「キノセイデス! では、テッドさん。そういうことで!」
「おう。まあお前に任せたよ」
全力でそれを否定して、オードちゃんを連れてとにかくこの場を去ることにする。
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