農場経営?そんなことより僕は恋が仕事です!

ただのひと

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はじめての秋

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 次の日、ルンルン気分で朝から苗の手入れをしてお昼を待つ。

 今朝、じゃあまたあとでねと言って別れたオードちゃんの耳の先がちょっと赤くて可愛かった。
「ノルズくーん!」
 納品する卵の準備をしてチーかまと遊んでから、ついでにはなちゃんのブラッシングをしているとオードちゃんが手を振ってやってきた。
 急いで牧場の入口まで駆け出して、オードちゃんを迎え入れる。

「いらっしゃい、オードちゃん」
「うん、ありがとう。あれ? 今日はグロウいないんだっけ?」
「うん。なんかマリンさんと用事があるんだってさ」
「あそこも仲いいねぇ」
「ねー。僕らのことは茶化すくせに、自分たちのことを茶化されると怒るんだよ、あいつ」
 ぶーぶーとそう文句を言うと、ぷっとオードちゃんが吹き出す。

「本当に仲良いね、ふたりって。なんだかちょっと妬けちゃうよ」
「え、妬いてくれるの!? あ、でもグロウとのことが妬けるなら僕だってキョウちゃんとオードちゃんのことが妬けちゃうよ。キョウちゃん、雑貨屋が休みの日は酒場に入り浸るんでしょ? 僕もやってみたいや」
「そんなに妬くことかな? 暇な時におしゃべりしてるだけなのに」
「それがずるいんだよ。僕だってもっとオードちゃんと一緒にいたいのに」
「……私もノルズくんともっと一緒にいたいよ?」
「……うん、ありがとう」
 二人でそう照れあっても、誰からも茶化されることもなく。
 なんだかそれが寂しい気もするけれど、その代わりにチーかまが僕らの周りをぐるぐる回ってわんわんと吠えている。

「チーかま、めっ、だよ。これは僕らのお昼ご飯!」
「チーかまちゃんも食べたいんだ。へへ、なんかちょっと嬉しくなっちゃうなあ」
 そう言いながら僕らは木陰に移動して、オードちゃんが持ってきてくれたシートを広げてお弁当を広げる。
「では、広げさせていただきます」
「はいどうぞ、召し上がれ」
 そんなやりとりをしつつ、バスケットを開けると沢山のサンドイッチが中から出てきて。ついでに唐揚げやたまご焼きといった定番のおかずも入っている。
「うわ、いっぱいだねぇ。食べきれるかな?」
「ごめんね、グロウも一緒だと思ったから多くなっちゃった。残してくれていいからね?」
「いや、意地でも全部食べきるよ!」
「じゃあ私も頑張って食べようかな!」
 そうすると僕も! と言わんばかりにチーかまがわん! と鳴くので二人で揃って笑って。
 ゆっくり話をしつつ、二人でお弁当の中身を食べていく。
 結局チーかまにもサンドイッチのパンの部分をちょっとだけお裾分けして、二人で笑って。
 とても楽しい昼食となった。

「さて、と」
 シートをたたみ終えて、今度は納品する卵のかごを持つ。
「シートはここに置いていってもいいかな? 明日からも使えるし」
「そうだね。じゃあそうしようか」
 そうしてシートは僕の家にしまわれて、そのまま牧場を出ることに。
 重い方は僕が持つと言い張ったから、空のバスケットはオードちゃん、卵のかごは僕が持つことになった。

 それから今日は天気がいいねとか、でも雨もそろそろ多くなってくるよとかそんな話をしつつ歩いていると、コツンと手に温かなものが当たる。
 なにかなと思って手の方を見れば、それはオードちゃんの手で。
 あ、と意識したら急に手が繋ぎたくなってどうしようもなくなる。

 どうしよう、ここで急に手を繋いだら怒られるかな? でももう、何度だって繋いだことあるし……。
 そこまで考えてふと気づく。僕ら、付き合ってからはちゃんと手を繋いだことがないんだった。
 でも、付き合ってたら手を繋ぐとか普通だよね? そうだよね?

 そう思っていると、またコツンと手があたって。

 ここは言っても言いべきなのかどうなのか、わからなくてオードちゃんの顔をちら見したら、少し赤くなっているのが見えた。

『お前がしたいなって思った時に、タイミングが合えばそう言うことになるもんだよ』

 ここでグロウの言葉が思い出されて。
 なんとなく、雰囲気ってこういうものなのかなって、そう思う。
 ここで手をつないでもいいかな? なんて聞くのも野暮な気がして、エイッとオードちゃんの手を優しく掴んで、そのままきゅっと握り込んで。

 そこから数歩歩いてから何かこれじゃ違うなって思って、手の方を見ようとしたらバチンとオードちゃんと目が合った。

「……なんか、違うよね?」
「……やっぱりそうだよね?」
 二人でそう笑い合ってから、改めて今度はきちんと手をつないで二人でまた歩き出す。

 そうしてこれは、ここから僕らの午後のデートの定番となったのだった。
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