農場経営?そんなことより僕は恋が仕事です!

ただのひと

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はじめての秋

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 作付けから一週間ほど経って、そろそろバタタールの実が収穫できる頃になってからのことだった。

「料理大会?」
「そう、料理大会があるの! 優勝者には秋の収穫祭で指揮を取る権利が与えられるんだよ! で、私は毎年出てるんだけど、実はノルズくんにお願いがあって……」
 上目遣いでそんなことを言われたら、いいですともー! と答えたくなってしまうが我慢我慢。せめて内容を聞いてからにしよう。
「お願いって? 僕が出来ることならぜひ協力するけど」
「本当!?」
 そう言ってキラキラと目を輝かせるオードちゃんの瞳が眩しくて、思わず顔をそらしてしまいたくなるが耐える。僕はこの子の彼氏だ。このくらい耐えてみせる!
「あのね、卵はいつもお願いしてるから良いとして、ミルクを分けて欲しいなって。ノルズくんのところはミルクもおいしいからって評判だから……」
「ああ、いいよ。特に納品先も決まってるものじゃないし、はなちゃん一匹だけだから趣味みたいなものだしね。欲しいだけあげるよ」
 どんなお願いなのかとドキドキしていたけれども、、案外簡単なお願いだった。
「ありがとー! じゃあ瓶三本分くらい貰っていってもいいかな? 毎日とは言えないけど……」
「毎日でも良いよ? はなちゃん、毎日瓶五本分くらいは搾乳できるからね」
「そんなに!?」
「そんなに。僕も最初は驚いたよ。でもまあ、自分の分も確保できるし毎日助かってるんだけどね」
 そう、作物に続き酪農物の量というか品質もなぜかすごいのだ。
 僕も最初は驚きはしたけれど、グロウと同じでもう驚かなくなった。なんでだろうね? 程度だ。
「じゃ、じゃあ毎日瓶三本、お願いしていいかな? あ、もちろん料金は払うから!」
「いいよいいよ。これは僕からのプレゼントってことで。だから頑張って優勝してね?」
「うん、頑張る! 去年は和食対決でクメさんから負けちゃったけど、今年は洋食! 私は最高のオムレツで優勝するよー!」
 そう言っておー! っと手を挙げるオードちゃんに合わせて、僕もおー! っと手を上げてみせる。
 二人での初めての共同作業だなぁなんて僕はぽんやりしてたけど、オードちゃんは本気の目でメラメラと燃えていた。そしてその姿に僕は萌えていた。

「あー、そこのお二人さんや。燃えるのはいいんだがそろそろ昼休憩は終わりにして納品行ってきてくんねぇ? 秋なのに暑くてかなわんし」
 来るバタタール収穫のために農業用三輪車を改造しているグロウが、そんな事を言いだした。
「あ、そっか、そろそろそんな時間だね。いこっか」
「そうだね。じゃあグロウ、少しの間牧場のこと頼んだよー」
「へいへい、いってらっしゃいましー」

 そうしていつもの卵と、新しく三本のミルクを持った僕らは午後のデートへと繰り出す。
 もう手へ自然と繋がれていて、むしろこの手がないと寂しいくらいな気分だ。

「浮かれてんなー……」

 ぼそりと呟かれたグロウのその言葉は、聞こえないふりをした。
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