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はじめての秋
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料理大会当日。
すべての仕事をマッハで終えて、急いで料理大会が開かれているという広場へと走り出す。
グロウも一緒なんだけれども、こっちはいつも通りで対して興味がなさそうだ。
「どうしたの、グロウ? なんか変なもんでも食べた?」
「いや……食べたっていうか今から食わされるっていうか……マリンから聞いたところによれば中々ハードルの高い祭りらしいんだよな」
「料理大会なのに?」
「ばか、料理大会だからだろうが」
そんなこんなを言い合っているうちに広場へと辿り着く。
まさにお祭りと行った感じで色んな所にテントが張られ、そこには試食用の料理が並べられているようだった。
「別に変なところはなさそうだけど……」
「……今のところはな」
そういうとスタスタとグロウは一人でどこかにいってしまい、僕は一人残される。
「えー、お集まりの皆さん! 美味しいと思ったお皿を本部テントに設置してある参加者の箱に投票してくださいー! 優勝者を決めるのはあなたですよー!」
そんなアナウンスが終始流れ、参加者たちも試食者の町の人々も賑わっている。
そんな中でオードちゃんのところを探すんだけれども、見つからず。
仕方なしに周囲をブラブラと歩いていると、仕様に人のいないテントが一つだけあった。
「キョウちゃん?」
「ノルズ!」
僕の顔を見つけた途端、ぱぁっと明るくなるキョウちゃん。
え、なに? どうしたの?
「ノルズが試食に来てくれるなんて嬉しいな! さあ、召し上がれ!」
「え? え?」
戸惑っている僕にズイと出されるお皿の上には、真っ黒に焦げた何かがのっている。
「これは……」
思わずゴクリとつばを飲む。なるほど、グロウが言っていたのはこういう意味だったのか……。
そういえば思い出してみれば、メインヒロインは料理が苦手という設定だった気がする。なにも現実でもそんなこと引き継がなくても……!
「クッキーだよ! 今年は自信作なんだ! 隠し味はコーヒーだよ!」
全く隠れてない色してるよ! とはいえず、恐る恐るとその皿を受け取って一枚口の中に放り込む。
口の中に拡がる、眉間が寄りそうな苦味と酸味。そしてなによりも、これはただ焦げているだけのえぐみだった……。
「どう!? おいしい!? ぜひ投票してね!」
「……う、うん。……是非投票させてもらうよ」
味はともかく、努力はとても感じた一品だったので投票はさせてもらおう。
そう思いつつ本部へと移動して、キョウちゃんの箱に投票する。中身は見えないようになっているけど、明らかに少ないのは明白だった。
さて、本部に居ると異様に人だかりの出来ているテントに目が行く。
目を細めてよく見てみると、そこではあたふたと動き回るオードちゃんの姿が見えた。
「オードちゃん」
後ろから回って声を掛けると、こちらに気づき驚いたのか、オードちゃんが目を見開く!
「ノルズくん! え、ダメだよ! 参加者以外は前からこなきゃ!」
「違う違う、手伝うよ。列の整理するから、それでいいかな?」
「いいの!? 助かるよぉ」
若干涙目になっているところを見ると、異常に忙しかったらしい。
そんなオードちゃんを放って置けるわけがなく、僕は前に立って列の整理を始める。
「はーい、皿は一人一枚ずつでお願いしますー! 二列に並んでくださいー!」
「お、なんだ旦那の登場か?」
「共同作業ってか? 良いねぇ、熱いねぇ」
「はーい、そんな風に茶化して二枚持っていこうとするのは禁止ですー! きちんと二列で、一枚ずつお願いしまーす!」
そんなこんなで二、三時間すると材料もなくなり結果発表へ。
「今年の優勝者はぁ……オードちゃんです!」
町長がそう宣言すると、わーという完成とともにオードちゃんがへとへとになりながら壇上へ。
「今年は完全に一人勝ちだったねぇ。おめでとう。二週間後の収穫祭もどうか頼むよ」
「はい、ありがとうございます。がんばります」
そう言って優勝トロフィーを受け取って頭上に掲げると、わーっという声援が更に大きくなる。
そうして、料理大会の幕は閉じたのだった。
すべての仕事をマッハで終えて、急いで料理大会が開かれているという広場へと走り出す。
グロウも一緒なんだけれども、こっちはいつも通りで対して興味がなさそうだ。
「どうしたの、グロウ? なんか変なもんでも食べた?」
「いや……食べたっていうか今から食わされるっていうか……マリンから聞いたところによれば中々ハードルの高い祭りらしいんだよな」
「料理大会なのに?」
「ばか、料理大会だからだろうが」
そんなこんなを言い合っているうちに広場へと辿り着く。
まさにお祭りと行った感じで色んな所にテントが張られ、そこには試食用の料理が並べられているようだった。
「別に変なところはなさそうだけど……」
「……今のところはな」
そういうとスタスタとグロウは一人でどこかにいってしまい、僕は一人残される。
「えー、お集まりの皆さん! 美味しいと思ったお皿を本部テントに設置してある参加者の箱に投票してくださいー! 優勝者を決めるのはあなたですよー!」
そんなアナウンスが終始流れ、参加者たちも試食者の町の人々も賑わっている。
そんな中でオードちゃんのところを探すんだけれども、見つからず。
仕方なしに周囲をブラブラと歩いていると、仕様に人のいないテントが一つだけあった。
「キョウちゃん?」
「ノルズ!」
僕の顔を見つけた途端、ぱぁっと明るくなるキョウちゃん。
え、なに? どうしたの?
「ノルズが試食に来てくれるなんて嬉しいな! さあ、召し上がれ!」
「え? え?」
戸惑っている僕にズイと出されるお皿の上には、真っ黒に焦げた何かがのっている。
「これは……」
思わずゴクリとつばを飲む。なるほど、グロウが言っていたのはこういう意味だったのか……。
そういえば思い出してみれば、メインヒロインは料理が苦手という設定だった気がする。なにも現実でもそんなこと引き継がなくても……!
「クッキーだよ! 今年は自信作なんだ! 隠し味はコーヒーだよ!」
全く隠れてない色してるよ! とはいえず、恐る恐るとその皿を受け取って一枚口の中に放り込む。
口の中に拡がる、眉間が寄りそうな苦味と酸味。そしてなによりも、これはただ焦げているだけのえぐみだった……。
「どう!? おいしい!? ぜひ投票してね!」
「……う、うん。……是非投票させてもらうよ」
味はともかく、努力はとても感じた一品だったので投票はさせてもらおう。
そう思いつつ本部へと移動して、キョウちゃんの箱に投票する。中身は見えないようになっているけど、明らかに少ないのは明白だった。
さて、本部に居ると異様に人だかりの出来ているテントに目が行く。
目を細めてよく見てみると、そこではあたふたと動き回るオードちゃんの姿が見えた。
「オードちゃん」
後ろから回って声を掛けると、こちらに気づき驚いたのか、オードちゃんが目を見開く!
「ノルズくん! え、ダメだよ! 参加者以外は前からこなきゃ!」
「違う違う、手伝うよ。列の整理するから、それでいいかな?」
「いいの!? 助かるよぉ」
若干涙目になっているところを見ると、異常に忙しかったらしい。
そんなオードちゃんを放って置けるわけがなく、僕は前に立って列の整理を始める。
「はーい、皿は一人一枚ずつでお願いしますー! 二列に並んでくださいー!」
「お、なんだ旦那の登場か?」
「共同作業ってか? 良いねぇ、熱いねぇ」
「はーい、そんな風に茶化して二枚持っていこうとするのは禁止ですー! きちんと二列で、一枚ずつお願いしまーす!」
そんなこんなで二、三時間すると材料もなくなり結果発表へ。
「今年の優勝者はぁ……オードちゃんです!」
町長がそう宣言すると、わーという完成とともにオードちゃんがへとへとになりながら壇上へ。
「今年は完全に一人勝ちだったねぇ。おめでとう。二週間後の収穫祭もどうか頼むよ」
「はい、ありがとうございます。がんばります」
そう言って優勝トロフィーを受け取って頭上に掲げると、わーっという声援が更に大きくなる。
そうして、料理大会の幕は閉じたのだった。
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