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はじめての秋
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その日も朝から雨だった。
いつものように収穫をして、作物の様子を見て、はなちゃんとシリカの世話をして。チーかまには小屋から出ないように言いつけた。
ずぶ濡れになったレインコートを新しいレインコートに変えて、傘を指して卵の納品をしに酒場に出かけた。
道中、歩いている人影が二つ見える。
片方がオードちゃんだと気づいて声をかけようと走るけれども、追いつけなくて。
仕方がないから酒場に入ってテッドさんに卵を納品とおみやげを渡して、はて、と首を傾げる。
「あれ? さっきオードちゃんのこと見かけた気がしたんだけど」
「ああ。オードならさっき帰ってきて上の部屋で打ち合わせ中だよ。収穫祭の」
「あ、なるほど。そうだったんですか」
「ちょっと顔を出してきたらどうだ?」
「え、いいんですか?」
「気にせん気にせん。むしろ喜ぶだろう」
そう言われて喜んで宿屋になっている上の部屋に駆け上がれば、そこには臨時収穫会会議場の文字。なんだか少し気後れしながらノックをすれば、はーい! と元気な声が返ってきた。
「あれ、ノルズくん!?」
出てきたのはオードちゃんで、中にはノースとキョウちゃんがいた。
「あー! ノルズ、料理祭の時はありがとう! 皿を入れてくれたの一枚だったって聞いて、ノルズだって思ったよ! 美味しいって言ってくれたもんねっ!」
「あ、あはは……」
そこにはなるだけ触れたくなかったんだけど。
そしてその言葉を聞いて、ノースの視線が厳しくなる。
「……お前か。こいつを調子づかせたのは」
「へ?」
意味がわからなくて首を傾げれば、オードちゃんが寄ってきて耳打ちしてくれる。
「なんかね、料理祭で票が入ったんだから私も収穫祭の料理に参加しても平気なはずだってキョウが言い出して……それで今ノースとバトル中……」
「あー……」
なるほど、確かにそれは僕のせいでもあるわけだ。
「とにかく! 私も料理の腕は上がってきてるんだもん、皆の中に入れてよ! 毎年食器並べとかそんなんばっかでぜーんぜん楽しくないんだもん!」
「いいか、自分の力量を間違えるなとクメさんからも口を酸っぱくして言われているだろう? そもそも皿一枚でえばるな! 優勝したオードを見習え!」
「じゃあオード! 料理教えてよ!」
「オードにそんな時間はないんだよ! お前みたいな暇人と違ってな!」
あーあ、派手にやっちゃってる。
キョウちゃんもキョウちゃんだけれども、ノースの言い方もちょっと酷い。
この二人ゲームでは他のヒロインを選ぶと結局くっつくはずなのに、そういうのが一切見られない。いや、それとも喧嘩するほど仲がいいってやつなのかな?
「そうだ、お前が責任を取れよ」
「へ?」
そんな事を考えていると、まさかのこちらに矢が飛んできた。
「お前が皿を入れたんだろう? だったら最後まで責任を持て」
「ま、待って待って! 僕だってそんなに料理は得意じゃないし、他人の面倒まで見れるほどは……」
「そもそも皿を友情票だなんて言って入れるお前が悪いんだ。これだからよそ者は――」
「す、ストーップ! それ以上はやめやめ! そうだ、お茶にしよう! 今淹れてくるから! ノルズくん、手伝って!」
「え? あ、うん」
オードちゃんは僕の背を押して急いでドアをくぐると、ふぅっと長いため息をつく。どうやらよっぽどお疲れのようだ。
「……大丈夫、には見えないねぇ」
「大丈夫、とは言えないねぇ」
お互いハハハと力なく笑って、他の客室に備え付けてあるティーッセットでお茶を淹れる。
「キョウもねー、諦めてくれると良いんだけど今年は頑固で。……まさかキョウに皿を入れる人がいるとは誰も思って無かったから、気持ちはわかるんだけど」
「そ、そのせつはなんというか……」
「いやいや、別にノルズくんが悪いわけじゃないんだよ? ただなんていうか、ちょっとタイミングが悪かっただけで……それに私に入れてくれなかったのにキョウに入れるなんてなんか悔しいし」
「え?」
最後のあたり、声が小さすぎて聞き取れなくてもう一度聞き返せば、なんでもないとオードちゃんは手を振って。
「ま、まあとにかく今年はノルズくんに他にもお願いしたいことがあったから、来てくれてちょうど良かったよ」
「お願いしたいこと?」
「うん。ちょっとバタタールのことでお願いがあって……それはあっちで話すね」
「あ、うん。それ、持つよ」
そう言って淹れたお茶を置いた盆を持ち、また部屋へと戻る。
部屋の中は険悪な雰囲気で、お互い顔さえ見ようとしない様子だ。
「え、えーと! とりあえずノース、バタタールのことでノルズくんにお願いしようって話を先にしたいんだけど」
「はん、したいなら勝手にしろよ。俺は今まで通りカノン農場でいいと思うけれどな」
「まあまあそう言わず……。あのね、今年の煮込み料理にバタタールを使いたいんだけど、規格外品とかってないかな? それを安く買い取らせてほしいの」
「規格外品でいいの? それなら今日丁度お土産に持ってきてるよ」
「え?」
「規格外で悪いけどお土産には出来るかなって思って。待ってて、今持ってくるから」
そう言って階段を駆け下りてテッドさんに事情を説明して、バタタールをうけとってまた部屋に戻る。
「はい、これ」
「でっか!」
ノースが思わずと言った風にそんな風に声を上げて、あたりもしんと静まり返る。
あ、あれ? 規格外品でよかったんだよね?
いつものように収穫をして、作物の様子を見て、はなちゃんとシリカの世話をして。チーかまには小屋から出ないように言いつけた。
ずぶ濡れになったレインコートを新しいレインコートに変えて、傘を指して卵の納品をしに酒場に出かけた。
道中、歩いている人影が二つ見える。
片方がオードちゃんだと気づいて声をかけようと走るけれども、追いつけなくて。
仕方がないから酒場に入ってテッドさんに卵を納品とおみやげを渡して、はて、と首を傾げる。
「あれ? さっきオードちゃんのこと見かけた気がしたんだけど」
「ああ。オードならさっき帰ってきて上の部屋で打ち合わせ中だよ。収穫祭の」
「あ、なるほど。そうだったんですか」
「ちょっと顔を出してきたらどうだ?」
「え、いいんですか?」
「気にせん気にせん。むしろ喜ぶだろう」
そう言われて喜んで宿屋になっている上の部屋に駆け上がれば、そこには臨時収穫会会議場の文字。なんだか少し気後れしながらノックをすれば、はーい! と元気な声が返ってきた。
「あれ、ノルズくん!?」
出てきたのはオードちゃんで、中にはノースとキョウちゃんがいた。
「あー! ノルズ、料理祭の時はありがとう! 皿を入れてくれたの一枚だったって聞いて、ノルズだって思ったよ! 美味しいって言ってくれたもんねっ!」
「あ、あはは……」
そこにはなるだけ触れたくなかったんだけど。
そしてその言葉を聞いて、ノースの視線が厳しくなる。
「……お前か。こいつを調子づかせたのは」
「へ?」
意味がわからなくて首を傾げれば、オードちゃんが寄ってきて耳打ちしてくれる。
「なんかね、料理祭で票が入ったんだから私も収穫祭の料理に参加しても平気なはずだってキョウが言い出して……それで今ノースとバトル中……」
「あー……」
なるほど、確かにそれは僕のせいでもあるわけだ。
「とにかく! 私も料理の腕は上がってきてるんだもん、皆の中に入れてよ! 毎年食器並べとかそんなんばっかでぜーんぜん楽しくないんだもん!」
「いいか、自分の力量を間違えるなとクメさんからも口を酸っぱくして言われているだろう? そもそも皿一枚でえばるな! 優勝したオードを見習え!」
「じゃあオード! 料理教えてよ!」
「オードにそんな時間はないんだよ! お前みたいな暇人と違ってな!」
あーあ、派手にやっちゃってる。
キョウちゃんもキョウちゃんだけれども、ノースの言い方もちょっと酷い。
この二人ゲームでは他のヒロインを選ぶと結局くっつくはずなのに、そういうのが一切見られない。いや、それとも喧嘩するほど仲がいいってやつなのかな?
「そうだ、お前が責任を取れよ」
「へ?」
そんな事を考えていると、まさかのこちらに矢が飛んできた。
「お前が皿を入れたんだろう? だったら最後まで責任を持て」
「ま、待って待って! 僕だってそんなに料理は得意じゃないし、他人の面倒まで見れるほどは……」
「そもそも皿を友情票だなんて言って入れるお前が悪いんだ。これだからよそ者は――」
「す、ストーップ! それ以上はやめやめ! そうだ、お茶にしよう! 今淹れてくるから! ノルズくん、手伝って!」
「え? あ、うん」
オードちゃんは僕の背を押して急いでドアをくぐると、ふぅっと長いため息をつく。どうやらよっぽどお疲れのようだ。
「……大丈夫、には見えないねぇ」
「大丈夫、とは言えないねぇ」
お互いハハハと力なく笑って、他の客室に備え付けてあるティーッセットでお茶を淹れる。
「キョウもねー、諦めてくれると良いんだけど今年は頑固で。……まさかキョウに皿を入れる人がいるとは誰も思って無かったから、気持ちはわかるんだけど」
「そ、そのせつはなんというか……」
「いやいや、別にノルズくんが悪いわけじゃないんだよ? ただなんていうか、ちょっとタイミングが悪かっただけで……それに私に入れてくれなかったのにキョウに入れるなんてなんか悔しいし」
「え?」
最後のあたり、声が小さすぎて聞き取れなくてもう一度聞き返せば、なんでもないとオードちゃんは手を振って。
「ま、まあとにかく今年はノルズくんに他にもお願いしたいことがあったから、来てくれてちょうど良かったよ」
「お願いしたいこと?」
「うん。ちょっとバタタールのことでお願いがあって……それはあっちで話すね」
「あ、うん。それ、持つよ」
そう言って淹れたお茶を置いた盆を持ち、また部屋へと戻る。
部屋の中は険悪な雰囲気で、お互い顔さえ見ようとしない様子だ。
「え、えーと! とりあえずノース、バタタールのことでノルズくんにお願いしようって話を先にしたいんだけど」
「はん、したいなら勝手にしろよ。俺は今まで通りカノン農場でいいと思うけれどな」
「まあまあそう言わず……。あのね、今年の煮込み料理にバタタールを使いたいんだけど、規格外品とかってないかな? それを安く買い取らせてほしいの」
「規格外品でいいの? それなら今日丁度お土産に持ってきてるよ」
「え?」
「規格外で悪いけどお土産には出来るかなって思って。待ってて、今持ってくるから」
そう言って階段を駆け下りてテッドさんに事情を説明して、バタタールをうけとってまた部屋に戻る。
「はい、これ」
「でっか!」
ノースが思わずと言った風にそんな風に声を上げて、あたりもしんと静まり返る。
あ、あれ? 規格外品でよかったんだよね?
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