農場経営?そんなことより僕は恋が仕事です!

ただのひと

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はじまる冬

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 夜近くになってごぉごぉという音が次第にやんで、辺りが静かになる。

 夕食を共にして居た僕達もそれに気づいて、大雪が終りを迎えたのだと二人で悟った。

「大雪、終わったみたいだね。ちょっと外を見てみるよ」
「気をつけてね?」
「うん、玄関から覗くだけだから」
 そう言って玄関ドアに近づいて、外へと開け放つ。
 そうすると辺りはすごい雪が積もっているのに、空には星が見えた。

「大雪、やんだみたい。ちょっと厩舎まで雪かきしつつ様子を見てくるよ。オードちゃんはそのまま寝ちゃってもいいから」
「え、でもそんなの大変だよ」
「大丈夫、これでも慣れてますから。それより、オードちゃんが心配高r遅くなったら寝ちゃってて」
 そういうと外に出て、厩舎までの道を雪かきしつつ先に進んでいく。
 いつもなら胡粉もかからない場所に一時間以上かけて辿り着いて皆の様子を見れば、特に変わったところはないようだった。
 ついでにと思ってブラシ掛けや搾乳を行って、そのまま出荷箱へ。
 この作業はもうなれたもので、三十分もかからなかった。

 雪かきした道を戻りつつ、その後は家から鶏小屋までの雪かきをしつつ鶏小屋へと向かう。
 こちらはそんなに距離が離れていないので三十分ほどで終わって、鶏たちの様子が見れた。
 もうすやすやと眠っていて、卵を回収して餌を入れるだけにして外に出る。
 その頃にはすっかり僕の身体も冷えていて、急いで家へと戻った。

「おかえり」
「オードちゃん、寝てていいって言ったのに」
「頑張ってる人がいるのに、眠れないよ」
 寝間着に着替えたオードちゃんがコートを脱いだ僕の身体を毛布で包んでくれて、暖炉の前に座らせてくれる。
「どうだった? みんな、大丈夫そう?」
「うん。雪かきもしてきたし、明日は朝から動けそうだよ。あ、でも明日オードちゃんが帰る時が大変そうだね」
「そこは町の除雪機が出るから大丈夫だと思うよ。でも、山には流石にしばらく行けないかな」
「そっか。じゃあしばらく朝のデートは中止かな」
 そう言って笑い合って、なんとなくそう言う気分になって、そのまま一度キスをする。
「……明日には終わっちゃうんだね」
「なにが?」
「この二人っきりの生活が」
「……生活って言っても、僕寝てばっかりだったけど」
「それでも幸せな時間だったよ」
「……僕も」
 一生この生活が続けばいいと、そう思えるくらいには幸せで。
 まあ地獄も味わったけれども、それを含めて幸せだった。
「そうだ。せっかく温まってるのにあれだけど、ちょっと外に出てみない? 星がすごく綺麗だったんだ」
「台風一過ならぬ大雪一過だからね。ちょっとまって、コート着るね」
 そうして二人で外に出て、星の鑑賞をする。
「どれが何座なのかわからないけど、すごく綺麗」
「多分空気が澄んでるせいだね。あ、北斗七星くらいはわかるよ、あれだ!」
「じゃあ私もオリオン座くらいはわかるよ。あれ!」
 そうしてふたりで指差し合って笑い合って。
 ほんの少しの時間をそうして星空鑑賞にあてて、すぐに家の中に戻る。

「うー、さむさむ!」
「寒かったねー! でもすごく綺麗だった!」
「うん、見れてよかった」
 コートを掛けて暖炉の前でふたりで身を寄せ合ってそんな会話をして。
「じゃ、寝よっか」
「うん」
 そう言い出したのは僕の方で、寝間着に着替える。
 オードちゃんは昨日してたみたいに紙をちょこんと二つ結びにして、ベッドの上で待っている。
 ……待っている。
「あの……今日も?」
「今日こそ、だよ。抱き合って眠りたい」
「……それは中々難易度が」
「だめ?」
「僕、自信ないよ?」
「どうしてもだめ?」
「……わかった、いいよ。頑張るよ」
「何を頑張るのかわかんないけど、ファイト!」
 応援するくらいなら別々に寝かせて欲しいとは言えず。

 ベッドに言って、二人で横になって。
 真正面から抱きしめ合って、鎖骨のあたりにこつんとオードちゃんの顔が来る。
 なかなかこれは……辛い!

「も、もうちょっと離れて……」
「だーめ。寒いから、暖まらないと」
「……オードちゃんって実はわかってしてる?」
「え? なにを?」
「……なんでもないです」
 これは本気でわかってないと悟って、何かもう悟りがひらけた気分だった。
 この子にこの手のことで意識してくれと期待するのは多分無駄であるのだ、おそらく。エッチなことはしないって昨日約束したし。
 変な気分にならないように気持ち下半身を離して、そのままオードちゃんにキスをする。
「へへ、おやすみのキスだ」
「うん、おやすみのキス」
「じゃ、私からも」
「うん」
 そう言って軽くキスをされて、そのまま目を瞑る。
 不思議と今日はこのまま眠れそうだな、なんて思った。
 今日は何かがすごく満たされていて、そういう気分にはならないのだ。

「おやすみ」
「うん、おやすみ」

 そう言い合って、目を瞑る。
 その日僕の見た夢は、すごくいい夢だった。
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