不吉な九番目の子だろうと、妾が次代のドラゴニア皇帝に決まっておろう!

スズキヒサシ

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ちょっと涼しい夏の日2

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 庭園に出て行くと、色とりどりのドレスの女たちと、黒々とした格好の男たちが楽しそうにうろついておった。
 食事は立食形式で、庭園の中程に並んだ天幕テントに置かれている。
 侍女のミンミンが、わらわの昼ごはんになりそうなものを取ってくると言うので、デザートを忘れずにと付け加えた。
 もう一人の侍女であるヤンヤン、そして警護の騎士一人を連れて、妾は二番目の姉に挨拶に向かうことにした。

 主催者でもある二番目の姉は、すぐに見つかった。
 虹色の光沢があるヒラヒラでスケスケのドレスを着て、大勢に囲まれていたからじゃ。
 いつも思うが、水着の方がまだ服としての役目を果たしておるのではないか?
 あれでは下着の上に下着を着ておるようなものじゃ。
 妾は他人のファッションセンスをとやかく言うのが、いかに愚かなことか知っておるので、賢明さを駆使して沈黙しておるが、同じように思っておる者は多いじゃろう。
 誰か姉に「ネグリジェでうろつくのはやめような」と忠言してやって欲しい。

 妾が近づいて行くと、人だかりが波のごとく引いて道ができた。

「あら、バーミリオンじゃない」
「ごきげんよう、コーラル姉じゃ」

 二番目の姉、コーラル・リベリア・ドラゴニアはモリモリに盛り上げたピンクの髪に宝石だらけのかんざしを三本も挿して、まばたきしながら妾を見た。
 瞬きするたびに、つけまつ毛がバッサバッサと羽根みたいに動いておる。
 いつ羽ばたいて行ってもおかしくない。
 妾はじっとそれを見ながら言った。

「姉じゃ、今日は一段とお美しいのう」
「あら、イヤだ。バーミリオンったら」

 ホホホと嬉しげに笑っておるが、当然といった顔じゃ。

「あなたもいつも可愛らしいわよ」

 まだ成長過程でほんの少し背の低いーー本当に少しだけじゃぞーー妾のために前屈みになったせいで、姉の胸のさきっぽがチラリと見えてしまっておるが、気づいてなさそうじゃ。
 いつものように姉に頭をなでなでしてもらう。
 ふと、何やらよこしな波動を感じたので見上げると、妾の背後に立っておる騎士が、姉の胸元を真剣な面持おももちで見ておった。
 妾は一歩後退あとずさり、騎士の足先をグニィ、と踏んでやった。
 ヒッと苦痛の声を漏らして騎士が目をらす。
 まったく油断も隙もない。

 しばし姉と歓談すると、妾はミンミンが料理皿を手に、離れた場所で待っているのを見つけた。

「では姉じゃ、良い交流を」
「あら、もう行ってしまうの?」
「妾はこの会場のデザートで一番美味しいものを探す任務があるからの」
「まあ! それは素敵な任務ね」
「姉じゃの今日の任務は何なのじゃ?」

 そうねぇ、とちょっと考えた後、コーラル姉君がふふっと笑う。

「一番素敵な殿方を探す任務かしら」
「それではいつもと同じではないかの?」
「いいえ、違うわ」

 姉はまた前屈みになって、妾と目と目を合わせてささやいた。

「今日は隣国の刺客が紛れ込んでいるらしいの。そいつを見つけて捕まえて、わたしのペットにするの。素敵でしょ」

 口元は微笑んでおるが、目がギラギラ光ってて怖いんじゃが。
 妾はちょっとひきつり笑いになりつつ、その場を離れた。
 巻き込まれたくないのでな。
 兄たちの猟犬の狩りが可愛く思えるわ。
 気を取り直して、妾は自分の任務に向かったのじゃ。
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