不吉な九番目の子だろうと、妾が次代のドラゴニア皇帝に決まっておろう!

スズキヒサシ

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料理部とホラ研

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 放課後にまた呪術同好会に行くことにした妾たちだったが、授業が終わると教室にサクラがやって来た。

「さあ、バーミリオン。行きましょう」

 どこへとも言わず、妾とシェン君を連れて行く。
 サクラにも友だちがいるらしく、後ろから同級生が二人、朗らかな微笑を浮かべてついて来た。
 優しそうで品がある友人たちじゃ。
 妾はちらっとシェン君を見た。
 首元のシャツのボタンは外しっぱなし、学園指定の鞄ではなく、シワシワの黒い革の斜めがけバッグがダラリ、しかもよく見るとふちが破れておる。

 品・・・・・・。
 い、一応、アラガンの王族じゃからな。
 た、多分ある、はずじゃ。

 品格について思いを馳せておると、到着したのは専門棟と呼ばれる北側の建物にある家庭科室だった。
 広いテーブルごとに料理ができる設備がある。
 そこに白いエプロンをした数十人の生徒が集まっている。
 サクラに促されて、妾とシェン君も教室に入って行く。

「ようこそ、料理部へ。ぜひ見学して行ってね」

 サクラも白いエプロンを着けると、料理中のテーブルの輪に入っていった。

「妾、あまり料理に興味がないのじゃ」

 ぼそっと言ってしまうと、隣でシェン君がなんとも言えない複雑な顔をした。

「おれこそ場違いじゃないか?」

 二人していたたまれない感じで突っ立っていると、ふいに鋭い刺すような視線を感じた。
 そちらの方を見ると、なんと!
 あのグレーの髪の女子がいるではないか。
 妾とシェン君をしつこく追って来た女生徒じゃ。

「おい、あの女」
「うむ。シェン君も気づいたか」

 料理部だったとはーーー。
 しかし、なぜそんなに睨んでくるのか。
 まるで親の仇か、突如部屋に現れた害虫みたいに睨まれておる。
 さすがにいつまでもこのままというのも気味が悪い。
 妾はスタスタとグレーの髪の女生徒に近づいて行った。

「あの、何か妾に話でも・・・・・・」

 訊ねた途端、女生徒の顔がカッと鬼に変わる。

「何かですって!? あなたねぇーーー」

 しかし、彼女が何か言う前に、その顔がまた変化した。

「ヒッ!!」
「ひ?」
「ななな、何でも・・・・・・何でもないわ」

 妾を見つめた目が、なぜか恐怖に彩られておる。
 さっぱりわからず、妾はシェン君を振り返った。
 そのシェン君も、なぜか目を見開いて固まっている。

「どうしたのじゃ?」
「ほ、包丁が・・・・・・」

 よく見ると、女生徒の足元の床に包丁がビヨヨ~ンと突き刺さっていた。

「危ないではないか」

 誰が落としたのかわからぬが、拾ってテーブルに戻しておく。
 話を続けたかったが、顔を上げると女生徒は逃げるように料理に戻ってしまっていた。

「何か不評を買うようなことをしてしまったのかもしれぬ」

 妾が言うと、シェン君がなぜか別のテーブルをガン見しながら「いや違うと思う」と答えた。
 シェン君が見ているのは、サクラのテーブルじゃ。
 サクラの友人が隣のテーブルから包丁を借りている。

「サクラが気になるのか?」
「ん? いや、ミリィは見てなかったけど、さっきあそこから包丁が」
「包丁?」
「ああ、あの女に包丁を投ーーー」
「バーミリオ~~ン」

 サクラが妾を呼びながら手を振ってきたので、シェン君の話がよく聞こえなかった。
 手を振り返しながら、シェン君に聞き返す。

「それで、包丁が何なのじゃ?」
「・・・・・・何でもない」

 なぜか先ほどから釈然としない感じじゃ。
 不審に思っていると、サクラが手に皿を持って近づいて来た。

「バーミリオン、見てちょうだい」
「よく焼けたケーキじゃ」
「パウンドケーキよ。さ、こっちに来て。一緒に食べましょう」

 シェン君と共に、椅子を借りて座ると、まだ熱々のケーキと紅茶をいただいた。
 満足して怪訝に思っていたことを忘れた妾に、サクラが部活動の勧誘を始める。
 料理部は楽しくて美味しいものが食べられて、素敵なところよ、というわけじゃ。
 ケーキを食べてしまった分、断りにくい。
 じゃが、妾はもう入る部を決めているので、姉といえどもハッキリせねば。

「サクラ姉じゃ、妾、呪術同好会に入ると決めているのじゃ」

 それを聞いたサクラの友人たちが驚いた顔をした。

「まあ、バーミリオン様。本気ですの?」
「おやめになった方がよろしいですわよ」
「あそこは魔の巣窟という話ですわ」

 魔の巣窟・・・・・・。
 それはそうかもしれぬ。
 山羊人間もいるし、不気味な祭壇もある。
 何より呪術の研究なんて普通の人なら避けて通る話じゃろう。

「ホラ研なんてバーミリオン様には似合いませんわ」
「ホラ研?」

 女生徒の聞き慣れない言葉を聞き返すと、サクラが答えてくれた。

「呪術同好会のことをみんなホラ研と呼んでいるらしいわ。ホラー研究の同好会って意味みたいだけど」
「なるほど」
「ホラ話と掛けているのではなかったかしら」

 それも言い得て妙じゃ。
 呪術なんて関係ない者からしたら与太話よたばなし法螺ほらにしか聞こえぬじゃろう。

「それにアレイスターさんもなかなか問題のある方だといいますわ」
「アレイスターさん?」
「ホラ研の会長です」

 もしかして、あの山羊人間のことじゃろうか?
 サクラの友人たちは、丁寧に妾たちにホラ研のことを教えてくれた。

 シルマリア・アレイスターは、呪術同好会の会長で高等科の二年生らしい。
 中等科の二年時に突如、呪術同好会を立ち上げ、周りが奇異の目で見ているのにもかかわらず、悪霊や死霊、呪いの研究を始めたという。
 一応、部室を与えられたものの、廊下に漏れ聞こえてくる鐘や太鼓の音、不気味な読経。
 異臭騒ぎに、小火ぼや騒ぎ、周りの生徒は困惑しているし、何度も先生が注意しているのに、まるで気にしていないらしい。

 噂に聞くだけでも、問題のある人物っぽい。
 最初は興味本位で、ほうほうと聞いていた妾も、徐々に不安になってきた。

「アレイスターさんは西の領主貴族の出身らしいですわ」
「親御さんはさぞ心配でしょうね」
「それがそうでもないらしいですよ。アレイスター家の御当主が数年前に亡くなられて、彼女のお母様が代行しているみたいです。領主として大変な時なので、娘のことは構っていないとか」
「まあ、それは大変ね」

 サクラの友人たちは、すっかり話に夢中になっている。

「それに、ホラ研といえば・・・・・・彼のこともあるでしょう」
「彼?」

 妾が誰のことか訊ねると、サクラが困った顔で言った。

「エドガー・ポーキュリという男子生徒よ」
「知らぬな。誰なのじゃ?」
「ホラ研の副会長で、アカネのライバルよ」
「ライバル??」

 あのアカネにそんなものがいようとは・・・・・・。
 びっくりしている妾に、サクラがため息をついた。
 聞くと、エドガー・ポーキュリは高等科一年、アカネのクラスメイトで、剣術はからきしだが魔術の才能はピカイチ。
 しかもポーキュリ宰相の次男という。
 試験のたびにアカネと競い合っているが、今のところ成績はポーキュリが勝っていて、アカネはそれが気に食わないらしい。

 うちの兄姉は負けん気が強いからのぅ。

「それだけじゃなくて、かなり、その・・・・・・エキセントリックな人なのよ」
「どういう意味じゃ?」
「エドガー・ポーキュリは、黒魔術に興味があって、そのためなら何でもしてしまうの」
「何でも?」
「ええ。バーミリオンは知らないかもしれないけど、王宮図書館に何度か泥棒が入ったことがあってーーー」

 なんと、その泥棒がポーキュリだったらしい。
 王宮図書館に何度も侵入して捕まったため、ポーキュリは王宮出禁になっているということだった。
 しかも、実は本来は高等科の二年生なのだが、廃墟めぐりに勤しんでいたため留年。
 ポーキュリとアレイスターは、この学園でも有名なはみ出し物の有名人なので、誰も近づかないアンタッチャブルな存在らしかった。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

 妾とシェン君は黙って顔を見合わせた。
 呪術同好会ーーー。
 思っていた以上に凄そうじゃ。
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