高校生、戦国を生き抜く ⚠️〜無自覚⁇勘違い⁇居候のドタバタ大騒動〜👀

神谷アキ

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1、戦国時代へ

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鉄が真人の肩に手を置き、低い声を出した。

「ここからは慎重にな。騒げばお前も危ない」

重孝が俺たちに続くように促す。

「こっちだ、抜け道がある」

茂みの奥へ進む。ぬかるんだ地面に足を取られ、枝が顔に当たる。
それでも構っていられない。
まずは生きて斎賀へ戻ることが最優先だ。

「鉄、本当に大丈夫か? 失敗したら……」

「心配するな。警戒も抜かりない」

その言葉に少し安心した矢先、背後から足音。
先ほど揉めていた連中が追ってきたらしい。

鉄が手をかざし、短く鋭い音を立てる。
敵はそちらに注意を逸らし、俺たちはさらに奥へ進んだ。

やがて視界が開け、慎重に小さな通り抜けた。


「本当に出られちゃったな……」

真人が小さく呟く。
三人は斎賀領への道を進んでいた。

「明日の朝には、若様がいねえって大騒ぎだろうな」

鉄が肩をすくめる。

気楽そうに言う鉄。けれども、次期当主が抜け出したとなれば、ただで済むはずがない。ところで。

「鉄、どこまで一緒に来てくれるんだ?」

「まだ決めちゃいねえけど、少なくとも城まで届けるまではな」

「ほんと?それなら安心だ。見かけによらず忍者だもんな」

「おい。言葉に出すなよ」

軽口を叩き合いながらも、鉄の腕は確かだ。
城を抜ける時、塀の外にいた兵を一瞬で無力化した。その姿はまさしく忍者だった。

「もう少し進んだら仮眠をとり、そのまま斎賀まで歩くぞ」

「「わかった」」

鉄の声に応え、三人は足早に暗い道を進んだ。


三日目。ようやく斎賀領に入る。
出陣してから約三週間、久々の景色に胸が熱くなる。

「やっと着いた! もう足が動かない」

「真人は体力なさすぎ」重孝が呆れ、鉄は「八津左とは雲泥の差だな」と町並みに目を奪われている。

懐かしい道を抜け、斎賀の屋敷が見えてきた。

「あ、あそこだ!」

「でっけえな!」

「よし、行くぞ!」

「ちょ、待て重孝!」

止める間もなく重孝は門の前へ駆け出す。

「たのもー!」

「何者だ!」

「羽川左衛門重孝だ! 当主に取り次ぎを!」

……あー、やらかした。
鉄が笑い転げている。その名乗りで入れるわけないだろ。

俺は門番に頭を下げた。

「すみません、誰かに田辺真人が来たと伝えてもらえません?」
「? ああ、わかった」

「お願いします」

門番の一人が走っていく。これで誰かしらに伝わるはずだ。

「それで、そっちの男は?」

「俺?俺は南部鉄。こいつの家来」

「は? 何言ってるの!? なんで!?」

鉄が突然、とち狂ったようなことを言う。
肩を掴んで揺さぶると、返ってきたのは意外な答えだった。

「面白いし、一緒にいたら退屈しないかなって」

自由すぎる鉄に頭を抱えていると、背後から声がした。

「真人! 無事だったか!」

「敏之!」

振り返ると敏之がいた。
思わず駆け寄り、抱き合う。胸に込み上げる安堵で声が詰まった。

「真人、その人は?」

「ああ、斎賀領の次期当主、斎賀敏之だ。俺がここに住むようになったのも、敏之がきっかけで」

「はあ!?真人お前、こっちの若様とも知り合いだったのか?」

「真人は私の友だ。それで、そこにいる二人は?」

「紹介するよ。羽川重孝と、ええと……自称俺の家来、鉄」

敏之は眉を顰めた。胡乱げな目で俺を見る。

「ちょうどいい。今、会議中だ。三人まとめて来るように」

一瞬、考えることを放棄したように見えたのは勘違いだろうか。


三人で敏之の後について広間へ向かう。
畳の匂い、障子の白さ──会議は久々だが、正直あまりいい思い出はない。
胃の奥がじわりと重くなる。

まずは帰還の報告。
驚きつつも喜んでくれた。
敏之は会議中に救出の策を練っていたらしく、その言葉に胸が熱くなる。……ありがとう。



「……以上が、この二人がここに来た理由です」

真人が話すと、重孝や鉄が横から口を挟む。
人質になっても不思議じゃない立場なのに、重孝は相変わらず偉そうで、鉄は「真人の命令以外は聞かない」と宣言する。

……もしかして、こいつら俺を盾にしてるだけなんじゃ?

説明が進むたびに、お殿様の眉間のシワが深くなる。
周囲の家臣たちは口々に騒ぎ立て、何を言っているのか半分も聞き取れない。

「つまり、自らの目で斎賀を見極めるために来た、ということか」

「正面から正式に訪問したうえ、重孝は人質と言われても真人をここまで連れてきた恩があるはず」

「羽川家は知っているのか?」

「抜け出して来たために何も知らないはずです。今頃、城内は大騒ぎでしょう」

会議の場がざわめく。真人の冷や汗は止まらない。
他人事のように軽い調子で話す鉄。形だけ敬っているのが丸わかりである。

やがて矛先は鉄に向いた。

「お主。南部の忍びと申したな?村は南部地方にあるのか?」

「はい。村単位で依頼を請け負っていました」

「ほう……南部の忍びは、必ず務めを果たすと聞く。どうだ、斎賀に仕えるつもりは?」

「いえ、真人に仕えておりますので。依頼は真人を通してお願いします」

鉄は丁寧に、けれどもきっぱりと断った。どうやら仕事よりも、俺と一緒にいる方が楽しいらしい。
最終的に、お殿様が口を開く。

「……ならば当面、この二人は田辺真人の預かりとする」

家臣たちがざわつく。
敵の若君をどう扱うべきか判断がつかず、皆戸惑っているのがありありと伝わってきた。

「そなた達も真人と共に過ごすがよい」

そう告げられ、会議は終了した。

広間を出ると、重孝も鉄もどこ吹く風といった顔。真人だけが心臓をバクバクさせている。

長い道中の疲れもあり、布団に潜り込むとすぐに意識が遠のいた。
明日からどうなるのか、不安は尽きない。けれど今は、戻ってこられたという安心感に包まれて、深い眠りへと落ちていった。
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