高校生、戦国を生き抜く ⚠️〜無自覚⁇勘違い⁇居候のドタバタ大騒動〜👀

神谷アキ

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2、居候が3人

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 町の中を必死に駆け回り、ようやく一軒の宿を見つけた。
表の暖簾は色褪せ、年季の入った建物だが、そのぶん客足は少なそうだ。

混み合った宿では顔を覚えられ、あとで武士に問いただされれば一発で尻尾を掴まれる。
鉄の顔は城下町で知られすぎているからなおさらだ。

 真人と鉄は、できるだけ人の少ない宿を選んで転がり込んだ。

「……はあ、やっと一息つける」

 畳に足を投げ出すと、汗がじわじわと噴き出してくる。心臓はまだ早鐘を打っていた。

「追っ手は?」と息を整えながら聞く。

 鉄は窓の外を一瞥して答えた。
「今のところ来ていない。だが、油断はできん。しばらくはここで息を潜めるしかないな」

 安心した途端、別の焦りが襲ってきた。
(……あれ? 無一文じゃん俺)

「なぁ鉄。お金ある?」
「この宿に三日は泊まれるくらいはある。だが……」

 そこで鉄は言葉を切り、鋭い目を俺に向けた。

「逃げ回ってばかりでは、いずれ捕まるぞ。それと気づいているか? 重孝を連れてここに来た時点で、本当に“連れ去り”になってしまったんだ」
「……は?」

 鉄の言葉に、顔から血の気が引く。そうだ、出てくるとき重孝は鉄に抱えられていた。まさに連れ去りの現行犯じゃないか!
「イヤーッ!」と心の中で叫び、思わず顔を歪めた。

「重孝、本音で答えていいからな。もしかして、家族もいるし八津左に戻りたかった?」

真人は慌てて重孝に尋ねる。
「な、なぁ重孝。正直に答えてくれていい。……本当は八津左に戻りたい?」

 重孝はぶんぶんと首を横に振った。
「俺、ここ楽しいもん。算学は嫌いだけどちゃんと勉強してるし……。まだ帰りたくない」

「よく言った!」

 頭をワシワシ撫でながら安堵する。本人がこう言うなら、少なくとも俺は罪人じゃない。……はず。


しかし鉄の顔は曇ったままだ。

「逃げてばかりでは限界がある。向こうは次期当主を取り返すためなら、どんな手でも使ってくる。真正面からぶつかる覚悟も必要だ」
「うっわ……勝てる?」
「正直、微妙だ。戦えるのは俺しかいないし、重孝が傷を負ったら元も子もない」

 頭を抱える。安全な場所はないのか? 脳裏に浮かんだのは、世話になった老夫婦の顔だった。
(でもあの人たちを巻き込むわけにはいかない……)

 するとふいに思い出す。

「――あ! 職人のおじさん!」
「誰だ?」

鉄が眉を上げる。

「ときどき寄ってた工芸職人さん。威勢はいいけど、信用できる。あの人なら重孝を匿ってくれるかもしれない」

鉄はしばらく考え、頷いた。

「よし。そこはお前と重孝で行け。敵は三人組を探しているだろうし、お前一人でよく行っているなら怪しまれない。俺はここに残って囮になる」

 正直、鉄を危険に残すのは気が重いが、重孝を守ることが最優先だ。

「わかった。……じゃ、すぐ行ってくる」
「ああ、気を付けろよ」
「重孝、いい?今から行く場所は信用できる」

鉄に頷きかえし、最後にもう1回重孝に聞く。
不安だろうに、しっかりと頷いてくれた。


「じゃあ鉄も気をつけてな」

道すがら、重孝と偽名を決める。

「本名は危ないから“しげ”って呼ぼう。俺の親戚ってことにしよう」

重孝は真剣な顔で頷いた。

 作業場に着き、声をかける。

「おじさーん、いる?」
「おう、なんだぁ?」

出てきたのは、相変わらず煤で黒くなった姿の職人だった。

「久しぶりじゃねぇか。……新顔連れとは珍しいな」
「うん。お願いがあるんだ。この子をしばらくここで預かってほしい」
「なんだ急に。……訳ありか?」

 真剣な目を向けると、おじさんは一瞬黙り、やがてニッと笑った。

「いいぜ。お前には世話になってるからな。ほら坊主、こっち来な」

 重孝――いや、“しげ”は小さな声で「お願いします」と頭を下げた。

「ただひとつ頼みがあるんだ」

俺は続けた。

「もし誰かが“しげ”について聞いてきても絶対に喋らないで。……でも敏之って名乗る人が来たら、こう質問して。“俺の大好物でご飯にかけて食べるものは?” って。答えがチーズなら、その人は信用できる」

 おじさんは一瞬きょとんとした後、大笑いした。

「なんだそりゃ! まあいい。チーズって答えたら本物だな。任せろ」
「ありがとう! しげ、言うこと聞くんだぞ!」

 振り返らずに駆け出した。鉄が待つ宿へ急がねば。

宿に着くまで走り続けて、やっと到着した。
そこまで遠くはないけれど、ずっと走り続けるっていうのは結構辛い。

ゼェハァしながら宿に足を踏み入れる。
階段を登ろうとしたが、声が聞こえて踏みとどまった。

(今のって叫び声じゃなかった?)

まるで誰かが切られたような……。
血の気が引き、階段を駆け上がる。鉄の部屋に飛び込むと、そこには二人の倒れた男と、刀を構える鉄の姿があった。左腕から血が滲んでいる。

「鉄!」

「真人!? 今は来るな!」


 鉄が怒鳴ったが、もう部屋に入ってしまった。横を見ると奥の壁に近いところに、2人倒れている。さっきの叫び声はこの人たちだったのか。
 足に細い棒みたいな道具が刺さっており、そこから血が流れているけど、どちらも息はあるようだ。

 つまり、鉄はもう2人も倒していることになる。今最後の1人と睨み合っているけれど、肩で息をしているし左腕には血が滲んでいる。刀で切られたのか。
 顔をしかめている鉄と向かい合っている男は、肩で息をしているが怪我をしている様子は見られない。男に対して鉄が口を開く。


「おい。八津左の手の者か」

「いいや。違う」

「なんだと!」


 俺もその言葉を聞いて驚いた。八津左じゃない? じゃあ、誰が俺たちを狙ってきたんだ。


「どうせ最後だからな。教えてやるよ。雇い主は、斎賀家の家臣どもだ!」


 言い終わると同時に鉄に向かって刀を振り下ろす。キンッと音がして鉄が刀を止めるがいつまで持つか。何か手助けできないかと辺りをを見回すと、足元に刀が置いてあった。
 それを手に取り、ゴクッと唾を飲み込む。これで人を斬るのはさすがにまだ無理だけど、脅すくらいはできる。

 俺はできる、と呟きながら刀を投げる姿勢を取った。それっ、いけ!


「鉄!」

「真人!? 来るな!」

 制止の声も無視して中へ入る。睨み合う鉄と最後の刺客。

「お前、八津左の者か!」鉄が叫ぶ。

「……違う」

「何!?」

 驚愕する俺たちに、男は薄く笑った。
「雇い主は――斎賀家の家臣どもだ!」

 その言葉と同時に、刀が振り下ろされる。鉄は必死に受け止めるが、息は荒い。

(まずい、このままじゃ……!)

 足元の刀を拾い上げる。震える手を握り締め、意を決して投げた。

「鉄! 避けろ!」

 飛んだ刀に男が目を逸らした瞬間、鉄が肘を叩き込む。ゴッと鈍い音がして、男は崩れ落ちた。

「ふぅ……焦ったぜ」

 鉄は息を吐き、俺に視線を寄越した。
「真人、今のは助かった」

「どーいたしまして。……でも、家臣が雇い主ってどういうことだよ」

「おそらく、客人扱いだった俺たちは、敏之と一緒にいただけで斎賀の家臣じゃない。自分たちに関係がないことを証明するために、襲ってくるように指示したことも考えられる」

「え? 俺戦にも出たよ」

「あくまで家臣じゃなくて敏之の付き添いという形をとりたいんだろう」

「うわー。やっぱり重孝を担いで出てきたのはまずかったか」

「あれで敏之も弁護できなくなったんだろうな」

 斎賀のお殿様に見捨てられたと嘆きながら宿を出る。

 いっそのこと1度斎賀領をでるか。

「なあ、鉄。いっそのこと1度斎賀をでる?」

「この騒ぎが収まるまで、別の領に行くってことか?」

「うん。斎賀は顔も知られてて狙われまくりだろうし。八津左領と反対のところ行ってみない?」

「敏之と重孝はどうする」

「敏之は元から大丈夫でしょ。帰ってくるし。重孝はおじさんのところに預けたから当分の間は平気」

 そういうと鉄はニッと笑った。俺と肩を組むようにして歩き出す。

「やっぱり真人といると飽きないな。いいだろう、それなら尾張の方だ。行くぞ!」

「おー!」

二人で声を合わせ、夜の城下町を歩き出す。
斎賀と八津左以外行ったことないからちょっと楽しみだな。

1日歩いた先、見えてきたのは尾張の領地。

「早いな。あそこから尾張だ」

 鉄の言葉に遠くを見る。あそこからか。あまり境目とかはないんだな。
 そんなことを思いながら足を進める。

 あれ?でも待って。
 鉄の言葉に顔を上げると、胸がドクンと鳴った。

(……尾張って、信長の領地じゃなかったっけ!?)

 今更気づいたが、引き返すにはもう遅すぎるのだった。
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