高校生、戦国を生き抜く ⚠️〜無自覚⁇勘違い⁇居候のドタバタ大騒動〜👀

神谷アキ

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2、居候が3人

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真人は緊張する胸を押さえて、思い切り声を張り上げた。

「いらっしゃいませーー!」

「……らっしゃい」

鉄の小さな声が続く。張り切る俺に比べ、妙に気だるげだ。
宿の兄さんや鉄と相談して、今日からチャーハンを売ることになった。

本当なら、注文を受けてから炒めて出すのが一番いい。
だけどこの時代に、火力の強い竈と大きな鍋を抱えて屋台をやるなんて無理だ。
だから当面は、あらかじめ作っておいたチャーハンを宿の前で売ることにした。

台の横には長椅子を数脚並べた。
旅人や町人がふらっと寄って、ここで食べていけるようにしたんだ。『炒飯』と墨で書いた紙をぶら下げ、重しを置いて風に飛ばされないようにしてある。

これで何の店かわからないってことはないだろう。
けれど――。

道を行く人はみんな、ちらりとこちらを見ては通り過ぎるばかりだ。鼻先をくすぐる醤油と油の香りに、興味を示す顔もあるのに、なぜか足は向いてこない。

「売れねーな」

鉄がぼそりと言った。

「まだ始めたばっかりだよ! ほら、最初は何かわからないだけで……誰かひとり食べてくれれば絶対に広まるって。鉄も食べて美味しかったでしょ?」」

「その最初の1人が来てくれないから、どうしようもないんだよ。確かにうまいけど、見た目は米に野菜のくずを混ぜただけにしか見えない」

「野菜のくずじゃない!ちゃんと味付けして細かく刻んだ野菜! ……でもまあ、確かに、誰か最初に手を出してくれないと後が続かないか」

ちらちらと見てくる人はいるものの、何も声をかけて来ない。
冷めないように鍋ごと持ってきて、買う人がきてから容器に盛り付けるつもりだ。

個別に分けてないから買いづらいのか?

焦りが胸に広がる。せっかく大量に仕込んできたのに、冷めたら味も落ちる。どうしようかと悩んでいると、少し離れた場所に小さな影が二つあった。

痩せっぽちの兄弟らしき子供。
じっとこちらを見ている。香ばしい匂いに惹かれたのか、鼻をひくひくさせながら。

「なあ鉄」

「なんだ?」

「誰かに食べてもらえたら、このうまさがわかるはずだよな。……ほら、あの子たち」」

指さすと、鉄はすでに気づいていたらしく、小さく頷いた。

「気付いてたの? でもあの子達もお腹が空いているだろうし、このままでも売れ残るだけだ。それなら少しでも美味しく食べてくれそうな子に試食させよう」

「最初からずっと見てる。空腹なんだろう。……お前の言う試食とやら、やってみたらどうだ」

「最初から!? ……気づかなかった」

「真人が気づかないで俺が気づかないわけないだろ。ほら、行ってこい」

「え、俺が!? まあ……その方が驚かせないか」

 鉄は整った顔立ちなのに、どこか鋭すぎて近寄りがたい雰囲気がある。温厚そうに見える敏之とは正反対だ。俺が行った方がいいに決まってる。

 真人と一緒で適当に切りそろえたような髪型だから、自分は見慣れているし普通だと思うけど。この時代の人からすると奇妙なものらしい。
 髪が短くて結びもしないのはだらしがなく見えるとか。前に二郎丸にも聞かれたけど、俺は一部だけ髪がなくなるのは嫌だ。絶対に似合わない。

 ここまで考えて、もしかしたら俺たちの見た目が原因で人が来ないのではと思いついた。
 真人は嫌だけど、家臣と言うなら生贄として鉄に髪を剃らせるべきかと検討しているうちに、子供達のところまでやってきた。

 歩み寄ると、不思議そうに揃って真人を見上げてくる。兄は小学校低学年くらい、弟はまだ五歳にも満たないだろう。服は汚れ、袖は擦り切れている。

「ねえ、二人でここで何してるの? 兄弟?」

「うん」

声は小さい。近くで見ると、頬がこけているのがはっきりわかる。弟は指を口にくわえて、恥ずかしそうに真人の顔を覗いていた。

「お母さんかお父さんは?」

「いないよ。おじさんの家にいたけど、子供ができたから出て行けって言われた」

「昨日の前に、家からでてきたの」

 …………。ちょっと安易に聞いた自分を殴りたい。
つまり、両親がいなくておじさんの家にいたと。で、そこは子供が居なかったから引き取ったけど、自分達の子が生まれたから用済みになったってこと? 

小さい方の子が言う昨日の前って一昨日のことを言っているのか。

胸が詰まった。つまり……一昨日から、ずっと食べてない? 小さな体で?
こんな小さい子供たちが、お腹が空いても行くところもなくて彷徨っていた?

決めた。試食と言わず、好きなだけ食べさしてやる。

真人は昔を思い出していた。
まだ小さかった従妹――「ゆな」。よく俺の後ろをてくてく付いてきて、頬をぷくっと膨らませて「お菓子は?」なんて訊いてきた。
あの子にお菓子をあげすぎて怒られたこともあったっけ。そんな姿が、この目の前の子供たちと重なった。

この子達を見ていると、急にゆなを思い出した。ゆなの影響でこのくらいの年の子供には弱いんだよ。

「ねえ、兄ちゃん、あそこでご飯売ってるんだけど、良かったら食べてみてくれない? お金はいらない。温かいうちに食べてもらえないのが悲しいんだ。感想だけ聞かせてくれればいいから」

「……ほんとに?」
「ごはん、くれるの?」

「もちろん!」

本当にくれるのかと疑問をもつ二人に、大きく頷く。すると顔がパァッと明るくなる。

手を取り、宿の前まで一緒に歩いた。
――ただし、弟よ。手を繋いだらベトベトしてるんだけど、それ……さっきまでしゃぶってた親指の方だな?

そのまま売り場に戻り、鉄が用意してたチャーハンと匙をわたした。
長椅子に誘導し、ここで食べるように伝える。水も一緒に渡しながら、どんな反応をするか眺める。

最初に弟が一口。恐る恐る、けれど口に入れた途端に止まらなくなった。兄もそれに釣られるように食べ始め、ふたりして夢中でかき込む。

よかったよかったと微笑ましく見ていると、鉄が隣に立ち、手にはおかわりを二つ持っていた。

「いい顔してるな」
「ありがとう! 俺がお願いしようと思ってたのに」

「どうせお前のことだ、一杯じゃ済ませないと思った。……それにしても、あの痩せ方はひどい」

そう言って視線を細める鉄に、俺は二人から聞いた事情を伝えた。鉄は驚いたように眉を上げ、すぐに納得したように頷く。

「農民の家ではよくある話だ。養子にとった子でも、自分の子ができれば追い出す。育てる余裕がないからな」

「……そうなんだ」

俺はどれだけ恵まれていたんだろう。
お婆ちゃんとお爺ちゃんに拾われて、敏之や鉄に出会えた。もしあの時、誰もいなかったら――この子たちみたいに飢えてさまよっていたかもしれない。

すぐ一杯目を食べ終わり、二杯目を口にしている子供を背にして鍋のところに行く。
見ていたら俺も食べたくなってきた。

人来ないし、これでお昼食べよっかな。
どうせならまだ温かいところを、と下の方のチャーハンを取ろうとしていると、目の前に誰かが来た。鉄も食べる? と聞こうとして顔を上げると、見知らぬ男の人が立っていた。
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