転生したら王子だったけど僕だけ前世のまま(モブ顔)だった( ゜д゜)

あんこもっち

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幼少期編

第二王子

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サトゥーラ王国第二王子イスタル・サトゥーラは寡黙で穏やかな子どもであった。

彼は普段から落ち着いており、対象である兄のアレクとは違うとよく比較されていた。

平凡で落ち着かない長男。
美形でおとなしい次男。

比較されていたといってもどちらが人気だったかは言うまでもない。

イスタルは小さい頃から侍従たちをはじめ、多くの貴族たちから人気があった。

寡黙で物憂げな佇まいはどこか知的な感じがするようで、イスタルの外見に魅了された多くの貴族たちはイスタル王子を取りあうかのようにお茶会に招待していた。

とくに妙齢の貴婦人たちはイスタルに対して「尊い!尊いわぁ♡」などと目を輝かせ涙ぐみ鼻血をだしながら興奮して拝み出す始末。

もはやイスタルは信仰対象かのような尊い存在へと昇格されていた。

イスタルが7歳ぐらいになると机の上には山積みのお茶会へのお誘いの便箋、お見合いの申し込み状とそして貴族のお嬢様たちの姿絵が積み上げられていた。
(ちなみにアレクはこの事を知らない)

イスタルが婚姻に関してそれらを決められるわけでもなく実際にはお茶会のお誘いにしても王か王妃が決めるのであるが、イスタルに会うための口実とイスタルがこんなにも人気があるのですよと見せつけたいがためにわざわざイスタル派の侍従の者たちが便箋などを持ってくるのだった。

しかもメイドたちの何人かは自分の姿絵を目の届くところに移動させたり、ライバルの姿絵をわざと下のわかりにくいところに移動させたりと陰湿なやり取りを繰り返していた。

現在も王宮においては毎日貴族やメイドたちはそうした小競り合いを続けており、イスタルに話しかけられたメイドなどは後で先輩メイドに呼び出され虐められたりと王宮の影ではやや醜い骨肉の争いなどもあった。

当然王妃や王にもそうした醜い争いは一部伝わっており、王などは溜息をついて放っておけと突き放している。

しかし王も王位継承に関してイスタルを王太子にすることは考えておらず、イスタルに王位継承を目論む貴族たちを警戒していた。

またイスタルが拉致誘拐されないよう警備も徹底させ、アレクとはまた別の意味で心配しているようだった。

「私たちの子は何故こんなにも手が掛かるのだ?」

王は溜息をついて呟いた。

「マリアもですか?」

王妃マグダは王に問う。

「あの娘は違う。そうではない。いや、しかし、マリアもこの前はアレクの婚約者の姿絵を勝手に持っていったな。その後もアレクの奴め、勝手に姿絵を持っていきよって……、まあ、流石に見合いの件などはイスタルよりもかなり少ないので仕方ないと思ってはいるし、あまりにも不憫だったからな」

「イスタルの何が問題なのです?」

再び王妃は王に問う。

「イスタルに問題があるのではない。周囲の者たちに問題があるのだ。ただその原因となっているのがイスタルなだけだ」

「王位継承は王が決めるのに、何故あんなにも勝手にイスタルを持ち上げようとするのでしょうか」

「王にふさわしいのはアレクではなくイスタルだと思い込んでおる。肝心の中身を誰も見てはいないのが問題なのだ」

「ですわね」

王妃も同意した。

何故、イスタルが王に相応しくないのか。
何故、王も王妃もイスタルが王に相応しくないと思っているのか。

それはイスタルが7歳の頃の話である。

それはイスタルが王城内にある庭園を散歩していた時のこと。

「イスタルお兄様!良いところでお会いできましたわ!」

妹のマリアがイスタルに話しかけてきた。

「マリアか、どうしたの?」

「実は猫ちゃんが木の上から降りられなくて困って泣いているのです。イスタルお兄様、どうか困っている猫ちゃんを助けてください」

「それは困ったな、猫も困っているけど僕も今困っている。どうしたら猫を助けてあげられるのだろう」

「イスタルお兄様が助けてくださらないの?」

「僕はあんなに高く木の上は登れないよ。かといってアレク兄様のように魔法が使えるわけではないしね」

「どうすれば猫ちゃんは助かるのですか?」

「それは大人に聞くのが良いのでは?」

「わかりましたわ!では大人の方を呼んできますわ!」

「うん、頑張ってね」

そう言ってイスタルは部屋に戻っていった。
そう猫の事など関心も示さずに・・・・・・、

またある日のこと、

マリアが王妃マグダと一緒に庭園で小さなお茶会の練習をしていた時のことだ。

「イスタルお兄様!本日はようこそお茶会に参加してくださいました!」

「うん、こちらこそ呼んでくれてありがとう」

「それではこちらにおかけください!」

「ありがとう」

王妃マグダば2人の微笑ましいやり取りを見ながらお茶会の作法を教えていた。

これもイスタルへのお茶会のお誘いが多すぎて、本人もまだ参加できるほどの作法を身につけていなかったため、急遽、王妃マグダが主体となってお茶会の練習をしようということになったのだ。

そして、順調にお茶会のやり取りが進んでいた時のこと、

「イスタルお兄様は将来の夢はおありなのですか?」

マリアがイスタルに質問した。

「ん、将来の夢?」

「はい!」

イスタルはしばらく考えるとおもむろに答えた。

「そうだね、僕は将来吟遊詩人になりたいな。いろんなところに旅に行ってそこでしった物語をいろんなところで唄うんだ」

イスタルが少し楽しそうに話し始めたのでマリアも嬉しそうに熱心に聞き惚れていたのだが、王妃マグダは少し違っていた。

「イスタルお兄様!ステキ!私も吟遊詩人に憧れちゃうなぁ!!」

マリアが嬉しそうにはしゃいでいる。

「ん、そうかな、まあ、あくまでも夢なんだけどな」

「イスタルお兄様が詩を唄っているところを見てみたいですわ!!」

「そうだね、あんまり練習してないから、発表できるようになってからならいいよ」

「それじゃあマリアも楽しみにしています♪」

(イスタル、あなたは王族なのよ?それが吟遊詩人になりたいだなんて)

マグダはそんなやり取りを見て少し心配になるのだった。

そして約半年後、

今度は他の貴族のお誘いでお茶会に参加した時のこと。

マリアもお茶会に同行しており、王妃も貴族たちと話をしていた。

その時にマリアが無邪気に言ったことが問題になる。

「イスタルお兄様の将来の夢は吟遊詩人なのですよ!素晴らしいと思いませんか?」

娘の何気ない無邪気な発言が周囲の者たちを困惑させた。

「へぇーイスタル様は吟遊詩人になりたいのですね!」

「素敵♡」

「私もイスタル様についていきたいわぁ♡」

イスタルの周囲を取り巻く令嬢たちははしゃぎながらも心の中では「?」であった。

(あれ?イスタル様は王族よね?何故吟遊詩人になりたいのかしら?)

(お父様からイスタル殿下と結婚すれば王妃になれるとおっしゃってましたけど、イスタル様が王太子になられるのではないのかしら)

(イスタル様♡美しいわ!)

誰もが良くわかっておらず、なんとなく話を合わせているだけだったのだが、令嬢の1人ははっきりとイスタルに質問したのだ。

「イスタル様、ご無礼かと存じますが、イスタル様が将来の夢と申される吟遊詩人という職業は王子がなれるものなのですか?」

「んーーー、さあ?なれるの?」

「え?イスタル様も存じていらっしゃらないのですか?」

「わからない、ただなりたいなって憧れているだけだし・・・・・・」

「王族としてしっかりと国を治めようとは考えていらっしゃらないのですか?吟遊詩人になってどうやって生活をされるのですか?」

「まだ、そんなこと考えたこともないよ」

たった一人の令嬢が言った発言によって周囲の者たちが凍りついた。

「そんなことも考えないでは、むぐっ!!」

突然その令嬢の後ろから数人の令嬢が口を押さえて、その令嬢を別の場所に連れて行ってしまった。

「今の女の子、何だったのかな」

「イスタル様が気にされる事ではありません。さあ、お話を続けましょう?」

「そうよね!そうしましょう!」

「イスタル様は吟遊詩人になったらどのような歌を歌われるのですか?」

「私も聴きたいですわ!」

「僕はもう吟遊詩人になりたいと言ってないよ。いまは考古学者になりたいんだ」

「あ!あー!そうなのですね!私!考古学者も素晴らしいと思いますわ!」

「そ、そうですわね!考古学者なんてなんてロマンティックなのかしら!吟遊詩人も素敵ですけど考古学者も素敵⭐︎ですわ!」

などといった会話を近くで聞いていた王妃は次の日、こっそりアレクサンドル王に伝えるのであった。

「イスタルがそんな事を言っておったのか」

「はい・・・・・・」

「やはり王族としての自覚はまだまだ足りぬな」

「申し訳ありません、わたくしがもっとしっかりと教えておかなくてはいけませんでした」

「いや、私も同じだ。アレクには厳しく育ててはきたが、イスタルはアレクとは違って魔法も剣術も優秀ではないが、イスタルを教えているアバウトの話では何事も卒なくこなすし、成績も優秀だと聞いていた。まさか王族としての意識にここまで違いがあったとはな」

「アレクはどうなのでしょうか」

「以前、アレクに将来の夢を聞いたことがある」

「何と言ったのですか?」

「将来に備えて強くなりたいだそうだ」

「まあ!」

「こうした違いがあるからこそアレクを王太子にと思っているのだがな」

「貴族たちを説得していかなくてはなりませんわね」

「アレクの実力に威厳が加われば自ずと貴族たちはアレクに従っていくだろう。ただ問題はアレク自身が王族としての威厳が無いのがな」

「まだ子どもですもの。仕方がありませんわ」

「早く成長してもらいたいものだ」

「あら、それだと私たちは早く年老いていきますわね」

「其方はまだまだ美しい。私もまだまだ若い!子どもたちには負けられないな」

「ではその強さを私にも見せてくださいませ」

「うむ、そうだな」

そう言って2人はまた熱い熱い時間を過ごすのであった。



一方その頃イスタルは、

「イスタル様、おやすみの時間となりました、さあベットに入ってくださいませ」

侍従の者が声をかける

「ん、わかった」

イスタルは読みかけの本を机に置いたまま、ベットに入る。読みかけの本のタイトルは初代国王が記したとされる「アルテマ王旅行記」だった。これは初代国王が即位する前に体験した冒険譚であり、長年王国民の男の子たちに夢を与えて続けてきた人気の書である。

イスタルはいつものお気に入りのページをめくり、本を読み始めた。

「はぁ、王族ってめんどくさいなあ」

イスタル王子はいつものように本の世界に入った。そしてお気に入りの本の世界の中に入ってアルテマ王のように冒険の旅へと出かけるのだった。

「自由になりたい」

そう、イスタルは放っておけばただの放蕩息子になりかねない子どもであったのだ。

イスタルは無計画、無関心のようにも見えるが、実はアレクのように強くなって世界の色んな所に旅行したいと夢見る少年だったのだ。

だからか、実はイスタルは若くして魔法を使いこなすアレクに憧れていた。

イスタルが7歳の頃、アレクが魔法の修行に打ち込んでいるところに憧れ、自分も魔法を使いたいと教師であるアバウトに頼んだことがあった。

多少魔法について学んだものの、その時はまだ全く魔法が使えず、自分にはアレクほどの魔法は使えないことを知り落胆する。

第二王子派の貴族連中は野心が大きくてそうしたイスタルの性格を知らないがゆえにイスタルの意思も確認せずに何度もアレクを亡き者にしようと試みる。

その火種はアレクが学園に入ってからさらに大きくなるのであった。



イスタルとマリアがお茶会に行っている時、アレクは剣術の稽古中で師匠のボルトにしごかれていた。

それは王と王妃がアレクに気を遣ってイスタルが呼ばれるお茶会の情報をアレクに知らせないようにしていたからである。

逆にアレクとアイリーンの婚約発表のお茶会では王によって第二王子派の貴族を牽制するためにイスタルはお茶会には出席せず自室で休んでいるように命じられていた。

イスタルは喜んで自室に籠り、好きな本を読んでいたのである。
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