転生したら王子だったけど僕だけ前世のまま(モブ顔)だった( ゜д゜)

あんこもっち

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幼少期編

メイドのサーシャは心配する

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お茶会にてアレクが倒れた時、メイドのサーシャは忙しく給仕の仕事に振り回されていた。

「アレク様が急に倒れられた!」

皆が突然のハプニングに驚き、一部の侍従の者は屋敷内を忙しそうに走り回っている。

サーシャはアレクの部屋付きメイドであり、専属の侍従であるが、お茶会当日においては給仕の作業を担当しており、アレクが倒れたとき、サーシャはアレクの近くにはいなかった。サーシャは慌てて給仕の作業を打ち切りアレクのもとへと向かった。

すでに王妃と王女がアレクのもとに付き添っており、もうすぐ医者が診断にくるということで2人は涙ぐみながらアレクの様子を伺っていた。

サーシャは事態を把握し、医者が来るまでの間に必要なものを揃えるべく準備に取り掛かる。

(あーーー、もうっ!こんな忙しい時にあんの変態王子が!!)

サーシャは落ち着いた様子を保ちつつも心の中では相当悪態をついて愚痴っていた。

(やっと婚約者が決まったっていうのになんでこうもあいつはトラブルばかり起こすのかしら。ホント信じられないわ!)

小さい頃のアレクはまだ幼いゆえに可愛げがあったのだが、大きくなるにつれて凡庸さに加えて気持ち悪さが出てきたように思う。そしていつもトラブルメーカーであったため、サーシャは陰ながら支えつつもいつもアレクを(心の中で)罵倒していた。


サーシャは田舎の男爵家の子女である。

ささやかな領地運営をしていた実家では清く貧しくをモットーに家族で支え合っていた。

サーシャは贅沢には憧れてはいないものの、長女であったので兄弟たち(8人兄弟)が貧しさで困らないよう12歳の頃に実家を支えるために働きに出たいと父に伝えたのである。

父は反対したものの、貧乏貴族の現実とその将来を娘から突きつけられたところ、上手く打ち返せずしぶしぶ了承したのだった。

そしてたまたま、運良く家の伝手で王宮務めとして入ることが出来た。

サーシャは普段からしっかりしていたが、王宮では一番最年少だったので先輩メイドたちからはいいように使われていた。

それでもサーシャは真面目に毎日毎日働いていたのである。そして一部のお給金は取っておいてほとんどを実家に仕送りしていた。

サーシャが王宮で働いてから3年経った頃、3歳になったアレクがとうとう乳母のもとから離れて個室を与えられることになった。そして部屋付きのメイドとしてサーシャが選ばれたのだ。

何故かというと、アレクがあまりにも両親に似ていないため、メイドたちはその出生を怪しんでおり、誰一人として巻き添えをくらいたくなくて部屋付きメイドの役を押しつけあったのである。

そして当時最年少のサーシャにお鉢が回ってきたということだった。

サーシャも引き受けるしかなく、アレクの専属の給仕係として働くことになった。

最初は両親に似てないけど素朴な感じで可愛げがあり世話をする事も楽しかった。ちょうど実家の弟たちと同じように感じていたこともあったのだろう。

サーシャは献身的にアレクの世話をした。

しかし、アレクが5歳の頃、急に魔法が使えるようになった事がわかり、それから魔法の教師はつき、それに伴って起床時間も早くなった。

もちろんサーシャもそれに巻き込まれていつもより1時間早く起きなくてはならなかった。

それでもサーシャは頑張った。あの凡庸なアレクが何かしら特技があり、これで王族としていられるのであれば自分もまだまだここに残れると考えていたからだ。

実家の方も仕送りを続けてはいるもののまだまだ焼け石に水といった感じで生活が楽になることにはならなかった。

それでもサーシャが仕送りしなければ兄弟たちはもっと厳しい生活を送っていただろう。

しかし、つい最近父から送られてきた手紙には、

「サーシャ!喜べ!お前にまた新しい兄弟ができたぞ!次は男の子だ!」

などとサーシャのいない実家では貧乏子沢山がさらに加速していたのだった。

「金がないのにあんなに子ども作って!何考えてるのよ!!」

サーシャは父を恨んだ。しかし、自分もその子である。仕事でストレスが募り時折爆発しながらも気分が落ち着いてくると素直に反省するサーシャであった。

アレクが9歳の頃、剣術を習う事になった。そして起床時間がさらに1時間早くなった。

サーシャは毎日4時頃に起き、準備を始める。起きた時は外はまだ薄暗く、3つの月が輝いている。それを見ながらアレクが起きるまで服の準備や部屋を温める準備などを始めた。

婚期が遅れていてもサーシャは何一つ文句を言わずに頑張った。本当にどうしようもなく腹が立った時は自分の部屋にある父によく似た人形を殴ってはストレス発散をしていた。(ちなみに隣にはアレク人形もある)

大きな変化があったのがアレクが11歳になったときである。そう、アレクに婚約者ができてその発表の場としてお茶会が開かれることになった時だ。

サーシャは内心嬉しく思いながらも複雑な気持ちだった。

それはアレクが好きだったからではない。

アレクが12歳になると王都の学園に入る。
そこは全寮制のためサーシャは付き添いとして行くことはない。

なのでサーシャも婚期が遅れてはいるものの年頃の女性として将来を考えなくてはいけない時期が来たということだ。

今までは実家からもお見合いの打診が何度か来てはいたのだが、毎日の仕事が忙しすぎて結婚を考えることが出来なかった。

後任に任せてさっさと結婚すれば良いのではと言われたのだが、アレクを見下し、勝ち馬に乗りたいメイドたちはほとんどが、第二王子のイスタルか王女のマリアのもとで働きたがっていたのでサーシャも無責任に仕事を放り出すことは考えられなかったのである。

しかもアレクが王太子になると決まるとわかってから、急に他のメイドたちがサーシャに対し嫉妬してきたのである。

「あなたも頑張った甲斐があったわね。婚期が遅れても王太子の妾として拾ってもらえれば良いじゃない!」

「平凡な顔同士お似合いじゃないかしら」

「アイリーン様と仲良くすれば王子様ともこれからもずっと一緒にいられるわよ」

(いつも思うんだけど、他人の足を引っ張る時間があったら自分磨きに時間を費やせば良いのにね。私なんかにかまってないでさ)

嫌味や愚痴を聞かされるようないじめを小さい頃から受けてきたサーシャにとってはもう慣れもあってかそうした悪口はあまり気にならなかった。

ただそれでも救いとしては昔虐められた先輩メイドたちはすでにそれぞれ嫁いでおり、嫉妬してくるのは若い裕福な貴族子女ばかり、しかもそのほとんどが中流貴族の令嬢だった。

サーシャはメイドたちの悪口を相手にもせず、ひたすら仕事に打ち込んだ。

そして時折、実家から送られてくるお見合い相手の姿絵を見て真剣に結婚を考えるのであった。

ただどうしても我慢できない時は、その抑えきれない不満や怒りを感情任せになって父親に似た人形をタコ殴りにするのであった。

そしてお茶会当日。

またやりやがったよあいつ!と言わんばかりにサーシャは倒れたアレクの世話をすべく医者の指示に従って仕事をするのであった。

そしてアレクが意識を取り戻した時、アレクは王妃マグダと王女マリアと少し話をしてから王のもとに行ってしまった。

アレクの意識が戻ったので、サーシャは着替えと湯浴みの準備にとりかかり、夕食の指示出しもはじめた。

アレクが戻ってきた時のこと、サーシャは少し驚いた。アレクは国王陛下に相当叱られたのかいつもより暗く落ち込んでいるようだった。

サーシャは尽くす女なのだが、残念なのは本人がしっかりしている分、ついつい弱い男の世話をして余計な面倒を見てしまう苦労人タイプだったことだ。

そしてアレクがなにやら叫んでスッキリした顔になって元気を取り戻したところを見てサーシャも安心していた。

(もう、しっかりしなさいよ)

心の中で少し悪態をつきながらもサーシャは安らかに微笑む。そして故郷の問題児である自分の弟達に対する眼差しでアレクを見つめるのであった。
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