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幼少期編
婚約発表前の試練
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アレクとアイリーンの婚約発表が王城でなされる事となり、その後舞踏会が王宮にて催されることとなった。
そして婚約発表の前日、アレクは朝の鍛錬を終えると身を清め、着替えた後ひ食事を済ませる。
そして食事後、王の側近がやってくると婚約発表について国王から話があるとのことでアレクはそのまま執務室へと案内された。
♢
《アレク視点》
「いよいよ明日婚約発表かぁ、なんか緊張するな」
明日、僕とアイリーンの婚約発表が王宮で大々的に発表される。だから今日は大事な話があると父上に呼ばれ、僕は父上の執務室へとやって来た。
意識しただけで胸がドキドキしてくる。
コンコン(ノックする音)
「入れ」
「失礼します」
僕が扉を開けて執務室に入ると、父上の前に来客用の椅子が二席設けられていた。
そして左側の椅子にはすでに先客がいるようだ。しかもその先客にはかなり見覚えがあった。
「あらアレク様、ごきげんよう」
「ア、アイリーン!?」
「今日はお元気そうで何よりですわ」
「あ、あ、あり、がと」
アイリーンの愛らしい視線を受けて僕の身体はもはや石のようになり身動きがとれなくなってしまった。彼女の目はまるで目が合っただけで石にされてしまう伝説の魔獣ゴルゴンのようだ。
アイリーンは極度の緊張で石と成り果てた僕に追い打ちをかけるようにふわりと微笑みかけてくれる。
僕のステータス異常は全身麻痺の上にさらに魅了まで加わった。今の僕は肉体が思うように機能しない状態異常のようだ。
それでも思考は正常で心の中だけは冷静を保てているようだ。それでもどうやら全身麻痺から次の思考停止まで、秒読み段階といったところか。
やばいな。
今の僕は婚約発表どころかすでに危機的状況に瀕している。
動け、僕の身体。
「アレク様、貴方様とわたくしはもう婚約者ではありませんか。どうかそんなによそよそしくなさらないで隣の椅子にお座りくださいませ」
アイリーン、そんなに可愛らしい顔で話しかけられるとますます緊張が酷くなるよ。
「・・・・・・」
「アレク様?」
やばい、また気を失いそうだ。
初っ端からピンチ到来。
そんな危機的状況の際、なんと救済者が現れた。
「坊ちゃん!なにそんな固まってんだ!!人形じゃあるまいし、身動きもせずいつまでも黙ったままじゃあアイリーン様が可哀想じゃねえか!」
バンっ!バンっ!
「うわっ!!」
ボルト師匠が後ろから僕の背中をバンバン叩いてくれた。背中から伝わる強い痛みと衝撃のおかげでなんとか全身硬直が解けたようだ。
僕の身体、なんか不便だな。
とりあえずようやく身体が動くようになったし師匠に感謝しないと。
「ボルト師匠!ありがとう!助かったよ」
「おう?どういたしましてだ!がっはっはっ!!
ボルト師匠はよく解りもしないで豪快に笑った。
「アレクよ、其方をここに呼んだ理由はわかるな?」
今度は父上が深いため息を吐いた後、僕に話しかけてきた。
「は、はい?あ、まあ、なんとなくですけど、わかります」
「うむ、其方にはお茶会が始まってすぐ気を失っていただろうからまだ挨拶は済ませておらんかっただろう。改めての紹介となるが、そこにいるのはアイリーン嬢の祖父であり、辺境伯の当主ガスタル・サラトムだ」
「アレク王子、はじめまして、ワシはガスタル・サラトムと申します。此度は我が孫娘との婚約を受けてくださり誠に感謝の極みでございます」
父上の紹介でボルト師匠の隣にいた体格の良いお爺さんが僕に挨拶をしてくれた。
いやほんと、ボディビルでもしてるのかなと思うぐらい筋肉ムキってしてる。軍服のような服装なんだけどムキムキだからか、服がピチピチなんだよね。ボルト師匠もムキムキだし、二人揃ってなんかスゴイ。
アイリーンとは全然似てないな。
おかげで僕はすっかり緊張が解けて元の状態に戻ることができた。
僕はアイリーンを意識して見ないように努めてガスタル辺境伯にお礼を言う。
「い、いや、こちらこそ、このような美しい令嬢と婚約できたことを、ほ、本当に嬉しく、思う」
ダメだ。まだ緊張しているみたい。
「それは僥倖!!」
「がっはっは!!坊ちゃん良かったですな!!」
「は、あはは・・・」
ボルト師匠の笑い声がいちいちうるさいな。
「アレクよ、ガスタルはそなたの武人としての実力を認め、孫娘に相応しいと考えてくれたのだ。そしてこのように自慢の孫娘を婚約者として名乗りでてくれたのだぞ。本当に良かったな」
「はい、父上、ガスタル殿、感謝の念に堪えません」
「うむ、其方のアイリーン嬢に向ける熱い眼差しを見たら、どれほど恋焦がれたのかすぐわかるほどだ」
「アレク様、少々お転婆ではございますが、この子はワシの自慢の孫娘です。どうぞよろしくお願い申し上げます」
「アレク様、わたくしもこの婚約とても嬉しゅうございます。今後ともどうぞよろしくお願いいたしますわ」
(うわー!アイリーン可愛い!あ、ヤベっ!!)
僕はついアイリーンを意識してしまう。でもアイリーンに見つめられると意識が遠のいてしまうので、もじもじしながらすぐに視線を切り替えてガスタル殿の方に向き直した。
「アレクよ、今日の本題はな。今の会話の中でもわかったことだが、其方はアイリーン嬢に慣れることが必要だ。明日の婚約発表までにアイリーン嬢が隣にいる状態で意識を失わないようにせよ。もちろん舞踏会では二人でダンスを踊らなくてはならぬ。なに、今日一日あれば慣れるだろう」
「え!?」
「アレク様、よろしくお願いいたしますわ♡」
「は、はひ・・・」
「アレク様、よろしく頼みましたぞ!」
「坊ちゃん!気合い入れていけよ!」
ボルト師匠はそう言ってバンバン僕の背中を叩いてくる。
(ま、マジかー!!う、嬉しいけど、なんか複雑・・・・・・)
「さすがに寝室は別にしておるが、夕食までにはダンスの練習も兼ねて二人でいることに慣れるのだ。よいな!」
「は、はい!」
「どうせ結婚すればずっと一緒なのだからな。ちなみに明日の婚約発表までそう時間もない。ゆえに気合いを入れてアイリーン嬢に慣れよ!よいな!定期的にチェックさせるからな!」
「は、はい!」
こうして僕はアイリーンに慣れるべく、さらには一緒にダンスを踊るという修行まで始まった。
一応僕が気絶してもボルト師匠が叩き起こしてくれるらしい。また二人の待機場所を案内された時、ついでということでアイリーンの側使いの女の子を紹介してくれた。
「アレク様、この子がわたくしの側使いメリアですわ」
「メリアです。以前、この私を助けてくださってありがとうございました」
「き、君はっ!あの時の!?」
目の前に現れたのはこないだ森で魔獣から助けたあの可愛い女の子だった。
「はい、あの時助けてくださって、無事帰ることが出来ました。本当に有難うございます」
「い、いやっ!たいしたことはしてないよっ!」
「いえ、お礼も充分に申し上げることが出来ず、本当に申し訳ありません」
「いや、そんなの、いいよ!まあ、その、よろしくね!」
「あら、アレク様、メリアと仲がよろしいようですわね?なんだか、妬けてしまいますわ!」
「い、いやっー!ソンナコトナイヨ」
「あら、図星のようですわね。でしたらわたくしとも早く慣れてもらいませんといけませんわね♡」
「は、はいい!!」
アイリーンはくすりと微笑う。
こうして僕のアイリーンに慣れるための修行が始まった。
最初はなかなか一分も保てなかったけど、気絶してはボルト師匠に叩き起こされ、たまにアイリーンの水魔法で顔面に水をかけられて目を覚ますなど、割とキツい修行を何回も繰り返した。
少なくとも王子に対する行為でないなと感じつつ僕は修行に耐えた。
しかし人間慣れるものである。
僕の意識は少しずつ保てるようになり、またアイリーンとダンスを踊ることも出来るようになった。
柔らかなアイリーンの手と愛らしいダンスに何度も気を失いそうになったが、その都度強制的に目を覚めさせられる。
嬉しくも哀しい修行だった。
程なく僕は見事アイリーンとのダンスレッスンまで終わらせることができた。
ダンスが終わった時はすでに空は暗く、夕食の時間はとうに過ぎてしまったようだ。
それでもアイリーンは文句を言うことなく僕との修行に付き合ってくれた。
付き合ってくれた?んー良い響きだなあ。
いやあ、考え方によっては、僕にとって今までの人生の中で実は一番幸せな日かもしれないな。
いや、ホント、アイリーンマジ可愛い!
こんな素敵な子が僕の婚約者だなんて!
神よ!心から感謝します!
本当に、本当にありがとうございます!!
♢
《アイリーン視点》
いよいよ明日、わたくしの婚約発表がなされる日が来ましたわ。ドレスや靴も新調しましたし、お祖父様からは貴重な宝石の首飾りをくださいました。
後は王城に呼ばれるのを待つのみですわ。
ただ気になるのはお父様とお母様の事ですわ。時々お祖父様とは婚約の件で喧嘩していらっしゃるそうですけど、わたくしの婚約に関しては無干渉のまま、特に何も言ってきませんの。
時々二人でどこかの夜会に出かけているみたいですけど、どこに行っているのかしら。
まあわたくしの婚約が決まれば良いだけのことですけど。
今日は国王陛下に呼び出され、お祖父様と一緒に執務室に案内されました。
ほどなくわたくしの婚約者であられるアレク様が来られ、今回陛下に呼び出された理由がわかりましたわ。
それは何かと言いますと、陛下のお話ではどうやらアレク王子はわたくしの側にいるとすぐに気を失ってしまわれるそうですの。
(どういうことかしら)
確かにお茶会の時、アレク様がすぐに気を失って倒れてしまわれたのは覚えています。
でも、その原因がわたくしだなんて・・・・・・、
あら、それってわたくしの美しさが罪なのかしら。わたくしの美しさが過ぎて、アレク様が耐えきれないということですの?
よくわかりませんけど、こうして国王陛下からの指示でアレク様が長時間わたくしと一緒にいられるようにとのこと。
こうしてアレク様のわたくしとの接触に慣れるトレーニングが始まりましたの。
最初アレク様はわたくしの手を握っただけですぐに気を失っていらっしゃったのですけど、そのうち数分まで耐えられるようになりましたわ。
ただあまりにもの頻度で気絶されるものですから、ちょっと面白くなって水魔法でアレク様のお顔に水をかけたりして遊んでみましたの。退屈しのぎにもなってちょっと楽しかったですわ。
そうそう、楽しかったといえば、
わたくしが手を差し出すとアレク様が嬉しそうにわたくしの手を取ってくださいますの。
そんなアレク様を見て、わたくし思わず亡き愛犬のことを思い出してしまいました。
ああ、ジョセフィーヌ、天国でも元気に走っているかしら・・・。
それからというもの、もうアレク様のお顔が段々ジョセフィーヌに見えてきましたの。でもアレク様はジョセフィーヌではありません。犬はダンスなどできませんし。
ああ、思い出したら、またジョセフィーヌに会いたくなってきましたわ。
でも今はアレク様で我慢しませんと・・・。
もう何時間経ったのかしら。アレク様はわたくしと何度も手を握り、ダンスも踊っては気を失われ、その度ボルト様に叩き起こされてました。
ようやくダンスを一通り踊り終えた時にはアレク様もさぞかし嬉しかったようで、それはもうボルト様と一緒に抱き合って涙を流して喜んでおられましたわ。
夕食の時間はとうに過ぎましたけど、ようやくわたくしも安心して明日を迎えられそうです。
ちょっと長かったですけど、今日はとても有意義な一日でしたわ♡
そして婚約発表の前日、アレクは朝の鍛錬を終えると身を清め、着替えた後ひ食事を済ませる。
そして食事後、王の側近がやってくると婚約発表について国王から話があるとのことでアレクはそのまま執務室へと案内された。
♢
《アレク視点》
「いよいよ明日婚約発表かぁ、なんか緊張するな」
明日、僕とアイリーンの婚約発表が王宮で大々的に発表される。だから今日は大事な話があると父上に呼ばれ、僕は父上の執務室へとやって来た。
意識しただけで胸がドキドキしてくる。
コンコン(ノックする音)
「入れ」
「失礼します」
僕が扉を開けて執務室に入ると、父上の前に来客用の椅子が二席設けられていた。
そして左側の椅子にはすでに先客がいるようだ。しかもその先客にはかなり見覚えがあった。
「あらアレク様、ごきげんよう」
「ア、アイリーン!?」
「今日はお元気そうで何よりですわ」
「あ、あ、あり、がと」
アイリーンの愛らしい視線を受けて僕の身体はもはや石のようになり身動きがとれなくなってしまった。彼女の目はまるで目が合っただけで石にされてしまう伝説の魔獣ゴルゴンのようだ。
アイリーンは極度の緊張で石と成り果てた僕に追い打ちをかけるようにふわりと微笑みかけてくれる。
僕のステータス異常は全身麻痺の上にさらに魅了まで加わった。今の僕は肉体が思うように機能しない状態異常のようだ。
それでも思考は正常で心の中だけは冷静を保てているようだ。それでもどうやら全身麻痺から次の思考停止まで、秒読み段階といったところか。
やばいな。
今の僕は婚約発表どころかすでに危機的状況に瀕している。
動け、僕の身体。
「アレク様、貴方様とわたくしはもう婚約者ではありませんか。どうかそんなによそよそしくなさらないで隣の椅子にお座りくださいませ」
アイリーン、そんなに可愛らしい顔で話しかけられるとますます緊張が酷くなるよ。
「・・・・・・」
「アレク様?」
やばい、また気を失いそうだ。
初っ端からピンチ到来。
そんな危機的状況の際、なんと救済者が現れた。
「坊ちゃん!なにそんな固まってんだ!!人形じゃあるまいし、身動きもせずいつまでも黙ったままじゃあアイリーン様が可哀想じゃねえか!」
バンっ!バンっ!
「うわっ!!」
ボルト師匠が後ろから僕の背中をバンバン叩いてくれた。背中から伝わる強い痛みと衝撃のおかげでなんとか全身硬直が解けたようだ。
僕の身体、なんか不便だな。
とりあえずようやく身体が動くようになったし師匠に感謝しないと。
「ボルト師匠!ありがとう!助かったよ」
「おう?どういたしましてだ!がっはっはっ!!
ボルト師匠はよく解りもしないで豪快に笑った。
「アレクよ、其方をここに呼んだ理由はわかるな?」
今度は父上が深いため息を吐いた後、僕に話しかけてきた。
「は、はい?あ、まあ、なんとなくですけど、わかります」
「うむ、其方にはお茶会が始まってすぐ気を失っていただろうからまだ挨拶は済ませておらんかっただろう。改めての紹介となるが、そこにいるのはアイリーン嬢の祖父であり、辺境伯の当主ガスタル・サラトムだ」
「アレク王子、はじめまして、ワシはガスタル・サラトムと申します。此度は我が孫娘との婚約を受けてくださり誠に感謝の極みでございます」
父上の紹介でボルト師匠の隣にいた体格の良いお爺さんが僕に挨拶をしてくれた。
いやほんと、ボディビルでもしてるのかなと思うぐらい筋肉ムキってしてる。軍服のような服装なんだけどムキムキだからか、服がピチピチなんだよね。ボルト師匠もムキムキだし、二人揃ってなんかスゴイ。
アイリーンとは全然似てないな。
おかげで僕はすっかり緊張が解けて元の状態に戻ることができた。
僕はアイリーンを意識して見ないように努めてガスタル辺境伯にお礼を言う。
「い、いや、こちらこそ、このような美しい令嬢と婚約できたことを、ほ、本当に嬉しく、思う」
ダメだ。まだ緊張しているみたい。
「それは僥倖!!」
「がっはっは!!坊ちゃん良かったですな!!」
「は、あはは・・・」
ボルト師匠の笑い声がいちいちうるさいな。
「アレクよ、ガスタルはそなたの武人としての実力を認め、孫娘に相応しいと考えてくれたのだ。そしてこのように自慢の孫娘を婚約者として名乗りでてくれたのだぞ。本当に良かったな」
「はい、父上、ガスタル殿、感謝の念に堪えません」
「うむ、其方のアイリーン嬢に向ける熱い眼差しを見たら、どれほど恋焦がれたのかすぐわかるほどだ」
「アレク様、少々お転婆ではございますが、この子はワシの自慢の孫娘です。どうぞよろしくお願い申し上げます」
「アレク様、わたくしもこの婚約とても嬉しゅうございます。今後ともどうぞよろしくお願いいたしますわ」
(うわー!アイリーン可愛い!あ、ヤベっ!!)
僕はついアイリーンを意識してしまう。でもアイリーンに見つめられると意識が遠のいてしまうので、もじもじしながらすぐに視線を切り替えてガスタル殿の方に向き直した。
「アレクよ、今日の本題はな。今の会話の中でもわかったことだが、其方はアイリーン嬢に慣れることが必要だ。明日の婚約発表までにアイリーン嬢が隣にいる状態で意識を失わないようにせよ。もちろん舞踏会では二人でダンスを踊らなくてはならぬ。なに、今日一日あれば慣れるだろう」
「え!?」
「アレク様、よろしくお願いいたしますわ♡」
「は、はひ・・・」
「アレク様、よろしく頼みましたぞ!」
「坊ちゃん!気合い入れていけよ!」
ボルト師匠はそう言ってバンバン僕の背中を叩いてくる。
(ま、マジかー!!う、嬉しいけど、なんか複雑・・・・・・)
「さすがに寝室は別にしておるが、夕食までにはダンスの練習も兼ねて二人でいることに慣れるのだ。よいな!」
「は、はい!」
「どうせ結婚すればずっと一緒なのだからな。ちなみに明日の婚約発表までそう時間もない。ゆえに気合いを入れてアイリーン嬢に慣れよ!よいな!定期的にチェックさせるからな!」
「は、はい!」
こうして僕はアイリーンに慣れるべく、さらには一緒にダンスを踊るという修行まで始まった。
一応僕が気絶してもボルト師匠が叩き起こしてくれるらしい。また二人の待機場所を案内された時、ついでということでアイリーンの側使いの女の子を紹介してくれた。
「アレク様、この子がわたくしの側使いメリアですわ」
「メリアです。以前、この私を助けてくださってありがとうございました」
「き、君はっ!あの時の!?」
目の前に現れたのはこないだ森で魔獣から助けたあの可愛い女の子だった。
「はい、あの時助けてくださって、無事帰ることが出来ました。本当に有難うございます」
「い、いやっ!たいしたことはしてないよっ!」
「いえ、お礼も充分に申し上げることが出来ず、本当に申し訳ありません」
「いや、そんなの、いいよ!まあ、その、よろしくね!」
「あら、アレク様、メリアと仲がよろしいようですわね?なんだか、妬けてしまいますわ!」
「い、いやっー!ソンナコトナイヨ」
「あら、図星のようですわね。でしたらわたくしとも早く慣れてもらいませんといけませんわね♡」
「は、はいい!!」
アイリーンはくすりと微笑う。
こうして僕のアイリーンに慣れるための修行が始まった。
最初はなかなか一分も保てなかったけど、気絶してはボルト師匠に叩き起こされ、たまにアイリーンの水魔法で顔面に水をかけられて目を覚ますなど、割とキツい修行を何回も繰り返した。
少なくとも王子に対する行為でないなと感じつつ僕は修行に耐えた。
しかし人間慣れるものである。
僕の意識は少しずつ保てるようになり、またアイリーンとダンスを踊ることも出来るようになった。
柔らかなアイリーンの手と愛らしいダンスに何度も気を失いそうになったが、その都度強制的に目を覚めさせられる。
嬉しくも哀しい修行だった。
程なく僕は見事アイリーンとのダンスレッスンまで終わらせることができた。
ダンスが終わった時はすでに空は暗く、夕食の時間はとうに過ぎてしまったようだ。
それでもアイリーンは文句を言うことなく僕との修行に付き合ってくれた。
付き合ってくれた?んー良い響きだなあ。
いやあ、考え方によっては、僕にとって今までの人生の中で実は一番幸せな日かもしれないな。
いや、ホント、アイリーンマジ可愛い!
こんな素敵な子が僕の婚約者だなんて!
神よ!心から感謝します!
本当に、本当にありがとうございます!!
♢
《アイリーン視点》
いよいよ明日、わたくしの婚約発表がなされる日が来ましたわ。ドレスや靴も新調しましたし、お祖父様からは貴重な宝石の首飾りをくださいました。
後は王城に呼ばれるのを待つのみですわ。
ただ気になるのはお父様とお母様の事ですわ。時々お祖父様とは婚約の件で喧嘩していらっしゃるそうですけど、わたくしの婚約に関しては無干渉のまま、特に何も言ってきませんの。
時々二人でどこかの夜会に出かけているみたいですけど、どこに行っているのかしら。
まあわたくしの婚約が決まれば良いだけのことですけど。
今日は国王陛下に呼び出され、お祖父様と一緒に執務室に案内されました。
ほどなくわたくしの婚約者であられるアレク様が来られ、今回陛下に呼び出された理由がわかりましたわ。
それは何かと言いますと、陛下のお話ではどうやらアレク王子はわたくしの側にいるとすぐに気を失ってしまわれるそうですの。
(どういうことかしら)
確かにお茶会の時、アレク様がすぐに気を失って倒れてしまわれたのは覚えています。
でも、その原因がわたくしだなんて・・・・・・、
あら、それってわたくしの美しさが罪なのかしら。わたくしの美しさが過ぎて、アレク様が耐えきれないということですの?
よくわかりませんけど、こうして国王陛下からの指示でアレク様が長時間わたくしと一緒にいられるようにとのこと。
こうしてアレク様のわたくしとの接触に慣れるトレーニングが始まりましたの。
最初アレク様はわたくしの手を握っただけですぐに気を失っていらっしゃったのですけど、そのうち数分まで耐えられるようになりましたわ。
ただあまりにもの頻度で気絶されるものですから、ちょっと面白くなって水魔法でアレク様のお顔に水をかけたりして遊んでみましたの。退屈しのぎにもなってちょっと楽しかったですわ。
そうそう、楽しかったといえば、
わたくしが手を差し出すとアレク様が嬉しそうにわたくしの手を取ってくださいますの。
そんなアレク様を見て、わたくし思わず亡き愛犬のことを思い出してしまいました。
ああ、ジョセフィーヌ、天国でも元気に走っているかしら・・・。
それからというもの、もうアレク様のお顔が段々ジョセフィーヌに見えてきましたの。でもアレク様はジョセフィーヌではありません。犬はダンスなどできませんし。
ああ、思い出したら、またジョセフィーヌに会いたくなってきましたわ。
でも今はアレク様で我慢しませんと・・・。
もう何時間経ったのかしら。アレク様はわたくしと何度も手を握り、ダンスも踊っては気を失われ、その度ボルト様に叩き起こされてました。
ようやくダンスを一通り踊り終えた時にはアレク様もさぞかし嬉しかったようで、それはもうボルト様と一緒に抱き合って涙を流して喜んでおられましたわ。
夕食の時間はとうに過ぎましたけど、ようやくわたくしも安心して明日を迎えられそうです。
ちょっと長かったですけど、今日はとても有意義な一日でしたわ♡
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