転生したら王子だったけど僕だけ前世のまま(モブ顔)だった( ゜д゜)

あんこもっち

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学園編

剣術大会の前日

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今日は剣術大会の前日ともあって学園は休みだった。

しかしサーシャから父上の手紙を手渡され、急遽父の呼び出しに対応すべく朝の鍛錬が終わってからすぐ馬車に乗り込んで、現在王城へと向かっている。

父上の手紙を預かってきたサーシャは結婚のためもうすぐ故郷に帰ることになっており、僕の世話の後任は彼女の弟ジョージに任せている。

そして現在、従者としての仕事の引き継ぎはもうほとんど終わっているらしく、あと少しの間だけジョージの従者としての仕事の見極めをしているそうで時々ジョージに向かってダメ出しをしている。

それ以外は時々、王城へ戻って荷物の整理と僕の引き継ぎの状況をセバスに報告しているらしいが、王城から学園に戻ってくる時についでに父上から手紙を預かってきたらしい。

ちなみに手紙に書かれていた呼び出しの要件はというと、なんでもエリクサーの制作を成功させたことへの褒美をくれるんだそう。

(おっ!父上から褒美が出る?小遣いでもくれるのかな?うひょー!やったね!)

しかし引っかかる一言もあった。

「王城へ戻られる際は内密に、との事です。絶対に他の者に知られぬようにと」

「うわー・・・」

その一言がなければ良かったんだけどな。

エリクサーの褒美と書いてあったはずなんだけど、サーシャの一言で僕は一気に不穏な流れを感じた。

現在、馬車に揺られる僕は父の要件を必死に考えていた。

うーむ、父上に呼び出されて何を言われるのやら。

水魔法で洪水を起こしたあの日からずっと大人しくしてたし、最近あまり怒られるようなことはしてないはず、なんだけどなー。

僕の記憶の範囲では大丈夫なはずだ。

たぶん。

そんなことをあれこれ考えているうちに馬車は王城に到着するとセバスが出迎えてくれた。

「アレク様、お待ちしておりました。このまま陛下の元へとご案内させていただきます」

僕はそのままセバスの後ろについて他の誰とも話をせずに父上の執務室へと向かった。

(なんか不気味だな。もしかして、やっぱりお説教バージョンか?)

心当たりはないが、なにか自分の知らないところで怒られる事態が発生したのかもしれない。

知らなくても誤魔化しはやめておこう。

余計怒られるだけだもんな。

父上は言い訳と誤魔化しに厳しい。王族としてあってはならない言動だとさらに怒られることになるので余計なことは言わない方が良いのだ。

怒られたら素直に謝るのが一番。

無難。

気持ちの整理を終えた僕は息を吐いて執務室に入った。

「よく来たな」

「はい、父上、お久しぶりです」

「うむ、しばらく見ないうちに大きくなったな」

「そうですね。身長は5センチほど伸びたようです」

こないだの身体検査の時、身長測ったら5センチ伸びてたんだよね。まあ成長期だもんね。これからもっと伸びるといいな。

顔は前世同様モブだしさ。
せめて身長だけでも前世と違ったら良いのになと思う今日この頃である。

「学園でも充実した日々を過ごしているようで何よりだ。さて、時間も無いのでさっそく本題に入ろうか」

「はい」

「アレクよ。そなたを呼び出したのはあのエリクサーの関しての事だ。よくぞアルテマ王以来、失われた伝説の秘薬エリクサーを復活させるという偉業を見事成し遂げてくれた。父として、また王として嬉しく思う。」

「ありがとうございます」
(魔力練ってポーション作ってたら勝手にできただけなんだけど、まあ、あまり正直に言わない方が良いよな)

僕は余計なことを言わないようにただ父上の賞賛を受け入れた。

「まずは褒美をとらせよう。セバスよ。アレを持ってくるのだ」

「はっ!」

(褒美!?やはり小遣いアップ?いやっほう!!)

僕のテンションは一気に上がった。

父上の命令だ執事長セバスは褒賞とされる白い布に包まれた「何か」を持ってきた。

(ん?何だろ。何か長細い棒?みたいなものが白い布に包まれているように見えるな)

セバスは恭しく拝礼しながら父上のところへ移動し、父に褒美と呼ばれる何かを献上した。

「よし、これを褒美としてそなたに渡そう」

父上が白い布を取ると、それは白い布に包まれていたのは白銀の鞘と金の彫刻が施されたなんとも美しい剣だった。

(おお!かっけー!もしかして褒美ってあの剣なの?)

「これは王家の秘宝のひとつである『ラッシー』と呼ばれる名剣だ。なんと初代アルテマ王が直に名付けられたといわれている」

「え?」

「どうした?」

「いえ、ちょっと剣の名前を聞き間違えたのかなあと。銘は、その、何でしたっけ」

「この剣はラッシーと云われている。数ある国宝の中でもかなり貴重なものでな。王国にある名剣の中でも随一と呼ばれる名剣中の名剣だ」

「・・・めいけんらっしー?・・・は!?あ、ありがとう、ございます?」

え?これ、ネタ系武器なの?
アルテマ王の奴、何してくれてんの?
マジで訳わかんないんだけど?

「ん?どうした?嬉しくはないのか?」

「い、いえ、あ、あまりにも装飾がき、綺麗で、ちょっと嬉しくて驚いていただけです」

「うむ、そうであろう。初代国王であられるアルテマ王が当時の名工たちの作品の中から最も素晴らしい物だけに特別に名を授けられたそうだ。この剣も『ラッシー』とは、なんとも気高く素晴らしい銘ではないか」

「は、はい、そうですね」

(なんだろう、あんまり嬉しくない)

確かに剣は美しく、刃も綺麗に研いであるようだ。硬度も高いらしく、普通の鉄剣であれば真っ二つにできるそうだ。

たしかに、良い剣なんだよな。
ただ、名前がなあ、
らっしーってなんなのよ。

パーティーグッズのノリでつけるような物じゃないでしょ。

僕のテンションは駄々下がりである。

(はあ、小遣いアップの方が良かったなあ)

「明日はいよいよ剣術大会であるからな。その剣でもって見事優勝を果たすがよい」

「あ・・・は、はい、善処いたします」

「どうした?アレクよ。嬉しくはないのか?」

「い、いえ、わ、私の実力がこの剣に相応しいのかなと思ったら、少し荷が重いのではないかと思いまして」

(だって、名剣、ラッシーだよ?なんともなー。この剣の所持もできれば辞退したいなんて思っているんですけど)

「はっはっはっ!まあ初めての剣術大会で緊張するのも無理はないな!しかしそなたの剣の師はあのボルトであるのだぞ?しかもその名剣もあれば優勝も容易いものではないのか?アレクよ、もっと自信を持って大会に臨むが良い!」

「は、はあ、ありがとうございます。頑張ります」

(名剣ラッシーかあ。この剣で剣術大会を優勝しても『アレク王子が見事優勝されたぞ!おお!あれが名剣ラッシーか!なんと見事なものか!』・・・なんてみんなから賞賛されるのかぁ。はあ、なんとも、嬉しくは、ないかなあ)

「それとアレクよ。もう一つ大事なことを伝えておかなくてはならぬ」

「は、え?な、何でしょう」

「エリクサー絡みのことではあるが、そなたの身体の一部を用いればかの秘薬を作り出せるという話がどこかで漏れたようでな。そなたの身体をどうにか手に入れようと暗殺者を雇っている者がいるらしい。充分に気をつけるのだぞ」

「え!?あ、暗殺者?ですか?」

「うむ、アイリーン嬢の報告ではすでに何十人もの暗殺者を捕獲し未然に防いでくれたらしい。そなたも良い婚約者を持ったな」

「あ、え?アイリーンが?僕の命を?」

「そうだ。辺境伯家は代々有名な暗殺者一族を従えておってな。その者たちの助力もあって王都にある暗殺者の駆逐をしてくれているそうだ」

「な、なんと」

「まあ、そなたには剣も魔法も一流とまではいかぬが充分鍛えておる。鍛錬の力は馬鹿には出来ぬ。ただし決して油断はせぬようにな。明日の剣術大会には私も観戦に行く。そなたの活躍を楽しみにしているぞ」

「は、はい、頑張ります」

その後、執務室を出た僕は名剣ラッシーを携えてトボトボと歩いて馬車に乗った。

そして気がつけばいつの間にか学園の寮に戻っていた。

出迎えてくれたサーシャは名剣ラッシーを見て大層喜び、ジョージも名剣ラッシーを見て大層羨ましがっていた。

ジョージには「そんなに欲しけりゃあげるよ」と言ったが国王陛下から下賜された名剣を従者にあげるなどありえませんとサーシャに怒られた。

(はあ、名剣ラッシーかあ。アルテマ王もさー、ホントいい加減にしろよなー、もっと良い名前つけろってんだよなー、実際、子孫に迷惑かかってるんですけど。何してくれてんのさホント)

部屋に戻った僕は呆然となったまま枕に顔を伏せて大きくため息を吐いた。

そういえば、あまりにもショックで父にイスタルとの間にある王位継承問題について聞くのを忘れていたと思い出す。

僕はもう一度深くため息を吐いた。

(はー、また今度聞くしかないか。そういや、今も暗殺者に狙われてるんだっけ。ずっとアイリーンが僕の命を守ってくれていたなんて知らなかったな)

男が女の子に守られるなんて、なんかみっともないよな。

せめて女の子を守れる男になりたい。

「暗殺者とも戦えるだけの強さが欲しいな」

とりあえず明日の剣術大会で優勝できるぐらい強くならないと胸張ってアイリーンの隣には立てないよな。

「やるしかないよなあ」

いよいよ明日は剣術大会である。

この日、僕はもっと強くならねばと誓う。

そして名剣の鬱憤は大会で晴らさせてもらおう。そう考えるとなんだか気が楽になってきた。

いつもであればこうしたイベント前日は緊張してなかなか寝付けないものなのだが、今日は「名剣ラッシー」のショックのせいか、その恩恵か、特に緊張することもなくいつのまにか意識を失うように深い眠りにつけることができた。
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