転生したら王子だったけど僕だけ前世のまま(モブ顔)だった( ゜д゜)

あんこもっち

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学園編

剣術大会⑦

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「ど、どういうことだ」

 国王アレクサンドルはにわかには信じがたいほどの惨状を目の当たりにして酷く困惑していた。

 なんと目の前で愛する息子アレクがカインの大剣で大怪我を負ったのだ。

アレクの左肩から胸にかけて大きな切り傷があり血がポタポタと落ちている。血の量を見る限り深い傷ではなさそうだ。

そしてカインの愉悦な顔を見れば意図してやったことだとわかる。

 本来ならば試合はカインの反則負けである。

 しかし審判は無言を貫いたままである。一方カインは笑いながら怪我を負ったアレクに対してひたすら剣を振るっていた。

「審判は一体何をしておるのだ!早く試合を止めさせよ!」

 アレクサンドルは立ち上がると大声で試合中止を命じた。

 しかし、

「父上、これは、僕の試合です。このまま続行させてください!」

「な、何を言っておる!そんな大怪我ではまともに戦えることも出来ぬではないか!」

「いいえ!戦えます!」

 カインは国王の話など無視してひたすらアレクに執拗なほど攻撃を仕掛けていた。

 アレクサンドルはアレクの痛々しい姿を見て心を痛めたが、これ以上は口を挟まず黙って椅子に座り直した。

 対して国王の警護のためアレクサンドルの後ろにいたボルトはとても嬉しそうだ。

「陛下、アレク王子は本当に強くなられましたな」

「何を言っておるのだ?あんなにも怪我をして強くなっただと?深傷を負った身体傷ではまともに戦えないのではないか」

「いえ、実戦となれば、たとえ怪我をしていても戦わなくてはならない時もあります。怪我をしているからといって攻撃をしてこない敵などいやしませんぞ。だからこそ、アレク王子は本当に強く成長なされた」

 ボルトは口角を上げてアレクの懸命に戦う様を見ている。

 アレクサンドルは父として、また国王として息子アレクの成長を改めて喜んだ。

「たしかに、そなたの言う通りだ。しかし、アレクに何かあれば大事おおごとだ。念のため私のエリクサーを持っていきなさい」

「はっ!ならばアイリーン嬢に頼みましょう」

「うむ、そうだな」

 ボルトはアレクサンドル国王からエリクサーの小瓶を受け取るとアイリーン嬢に渡しに行った。

「アレクよ、頑張るのだぞ」

 今、父の目には息子の成長した姿しか見えない。たとえ何があろうともエリクサーがあれば大事とはならないはずだ。

 アレクサンドルはそう自分に言い聞かせながら試合を観戦した。

 ♢

(し、死ぬ!)

 カインの野郎!
 本当に斬ってきやがった。しかも斬った後にすごく愉しそうな顔をしてた!

 あんな猟奇的りょうきてきな奴だとは思わなかったんだけど!

こんな状況で僕は昔の事を思い出した。

それは数年前、ボルト師匠から殺気とは何かを教えてもらった時のことだ。

 ボルト師匠から本当の殺気を受けた僕は知らないうちにおしっこチビってた。

 いや、本当に怖かった。
 ちょっとちびったけどさ、まだ子供の頃で良かったよ。

 あれ?そもそもさ、子供に本気の殺意を向ける師匠ってどうなの?

修行方法にかなり問題ないか?

 いやいや、まあ、でもそのおかげであの時のカインの殺気の混じった一振りを辛うじて察知できたんだ。

 本当にヤバかった。

 一瞬、ほんの一瞬だけ、

カインから殺気を感じたのだ。

 ヤバいと思って慌てて避けようとしたが間に合わなかった。

 いや、大剣ヤバいな。

 なんとか受け流そうとしたけどちょっと掠ったと思ったらズバッと斬られたんだもんな。

(父上の前だから見栄を張ったけど、このまま続行しても勝てる気がしない)

 気のせいかボルト師匠なんか嬉々としてずっとこっち見てるんだよな。

 あっちはあっちでかなり怖いんですけど、

 こっちのカインの野郎も、

(あ、また力が抜けていく)

でもこのまま終わってたまるか!
ぜったいにやり返してやる!

 徐々に呪いの効果が高くなっているのか、次第にアレクは立っているのもやっとになり、ついには膝がガクガクしてきた。

 こんな経験は初めてボルトの鍛錬を受けたとき以来だ。

 (クソっ!また風魔法使ってみるか?)

僕はまた風魔法を剣に纏わせてみる。

「それ!うわっ!」

思ったよりも身体に力が入らない。風魔法を纏わせた剣をカインの大剣に当てただけで今度はこっちが力負けしてしまった。

(クソッ!全然力が入らない!また使えば怪しまれるか?でも負けるよりは、んー、一応決勝戦だし、王子が決勝で反則負けなんてな)

 父上に怒られるだろうな。

 大見栄切って反則負けなんて恥かくだけだよな。

(なんとか魔法で身体強化できないものか……ん?本当にできないのか?)

 いきなりの思いつきでそう考えてみた。

 僕は身体強化の魔法を急にやってみたくなった。

 どうせこのまま負けるなら最後まであらがいたい。

 そう思ったアレクは前世で見たアニメなどを参考にして身体強化を試みるべく自分の魔力を全身に駆け巡らせてみた。

 するとどうだろう。

 災い転じてというやつである。

なんと呪いの効力がアレクの魔力によってはじかれてしまったのだ。

 本人は身体強化が成功したと思っているが、実は呪いの魔力によって脳が萎縮していたのがアレクの魔力でその効果が消えてしまったのだ。

こうして知らずのうちに呪いを解除したアレクは元の実力を取り戻した。

 つまりは弱った身体がもとに戻っただけなのである。

 (おおっ!身体が動く!身体強化成功だ!)

本人は身体強化したと勘違いしたまま元気になったアレクはふたたび剣を構えてカインに向けて振った。

 カインは急に元気になったアレクを見て驚いた。

「何故だ!?」(呪いの札は効いていないのか?)

 不思議がるカインに今度はアレクがお返しだと言わんばかりに猛烈に攻め続けた。

「くっ!」

 今度はカインが不利になる。

 魔力を帯びたアレクの身体は復活した。カインは力で跳ね返そうとも跳ね返せず、今度はカインが弱体化したかのように剣を受けるのであった。

 しばらくするとアレクもカインもお互いに剣で打ち合った痕が体のあちこちに残り、心も体も疲弊しきっていた。かろうじて防具は大丈夫だが、防具以外の服はぼろぼろである。

 もう二人とも体力が限界に近かった。

 うおぉぉぉ!

 2人は雄叫びをあげて近づき、剣を交わして組み合った。

 ゼェ、ゼェ……。

 はぁ、はぁ……。

 ((もう休みたい))

 2人はそんな事を考えながらヘロヘロになって剣を振るう。

 えある王立学園の剣術大会。
 そんな決勝戦にまさかの泥試合どろじあいである。

 疲弊しきった二人に対して、観客たちは見るも絶えない闘いだとして大声で野次を飛ばしていたが、唯一ヒロインのアイリーンだけは手を握りしめて必死にアレクの勝利を祈っていた。

「アレク様頑張って!」

 アイリーンが大きな声を出して応援すると、なぜかアイリーンの応援に釣られて男子生徒も応援をし始めた。よく見ればほとんどの男子生徒たちが応援しながらも頬を赤く染めてアイリーンをチラチラと見ていた。

 完全にアイリーン目当て。

 アレク王子!頑張れ!

 ア・レ・ク!ア・レ・ク!

 対して女生徒たちはカインを応援する。

 カイン様~!頑張って~!

 カ・イ・ン!カ・イ・ン!

 泥試合は続き、ついには応援合戦も始まった。
 そして、いよいよ決着の時がくる。

 アレクが剣を構えてカインの剣を受けたとき、受けた剣の衝撃で膝がカクンとなり跪くように体が前のめりになって倒れそうになる。カインがその隙を逃すはずもなく、更に上段からアレクの頭上へ剣を打ち込もうと勢い良く剣を振り上げた。

「ふははは!アイリーン!俺の勇姿を見てくれぇぇ!」

へろり、

「なんだその様は!さすがのカインもお疲れのようだな!さあ!潔く負けを認めるんだ!」

ふらり、

「笑止!そんな姿でよく言う!もはや俺の勝ちは決まった者同然!アイリーンは俺のモノだ!」

がくり、

「何言ってんだ!アイリーンは僕の嫁だぁぁ!!」

ふらふら、

「いや!俺のモノだぁぁ!」

「「うぉぉぉ!!」」

カインは雄叫びを上げ、よっこらせと大剣をなんとか担ぎ上げるとそれを垂直に振り下ろす。アレクはよろめきながらなんとかそれを避けるものの力が入らずにガクリと膝が落ちてしまった。

「くそっ!」

「ワハハハ!これで終わりだ!」

「負けるもんかぁ、!アイリーンは誰にも渡さない!」

(神様!僕に、もう一度!力を!)

 カインは再び大剣を担ぎ上げた。対してしゃがみ込むアレクは魔力を身体に巡らせながら勢いよく踏ん張って立ち上がろうとする。

(ん?急に身体に力が満ちてきた?)

踏み込む力が強すぎたのか、
はたまた勢いが良すぎたのか、

アレクは急に全身力がみなぎってきたせいで、カインが剣を振り上げた時にはアレクは頭突きをするほどの勢いでジャンプしていた。

アレクの頭がカインの目前に迫る。

「うおっ!」

アレクの渾身の立ち上がりジャンプ。

ぴょこん!

 それはまるでカエルジャンプのようだった。

 目前に迫るアレクの頭はカインの顔面に突き刺さる。そして振り上げた剣を下ろすことと間に合わず、ついにはアレクに体あたりされてしまいカインは仰け反るように倒れてしまった。

 ぱたり。

 互いに体力の限界だったのか、アレクに体あたりされたカインは身動きすることも出来ずに倒れたままだ。かろうじて体力が残っていたアレクは頭突きの後すぐに起き上がり、カインの顔面にめがけて剣を突き刺した。

ガキィィン、

 アレクの剣はカインの首元ギリギリのところに突き刺さっていた。
 
 試合終了である。

「それまで!しょ、勝者アレク王子!」

 審判がそう言うと観客たちはやっと終わったと大盛況で喜んだ。

「勝った……」

 勝利を確信して魔力を解いたアレクは弱体化の呪いによってもう立っていられずに倒れてしまう。

 アレクの勝利は人によって反応が違った。

 女生徒たちはカインの負けた姿を観てシクシクと泣きながら悲しんでいるのであった。反対にユラン推しの男子生徒たちは負けたカインを見てザマアミロと中指を立てて喜んでいた。

 一部の貴族たちは不満気に無言で退席しており、今回の主犯であるローズマリアは悔しそうに顔を顰めていたが、扇子で顔を隠して無言で闘技場を去っていった。

 アイリーンとサラとメリアを引き連れてアレクのもとに駆けつけるとすぐにエリクサーを飲ませる。

 エリクサーを飲んだアレクは疲労のあまりスヤスヤと眠りについた。

 アイリーンはサラとメリアに指示を出してアレクを担架に乗せ、そのまま休憩室へと運んでいった。

 倒れたカインはそのまま放置。

 こうしてアレクは剣術大会に優勝したのだが呪いの解除が出来ずに寝込んだままだったのでその後の表彰式には出られなかったのである。


 ♢


 大会終了後、

 アレクサンドル王は表彰式の後、心配になって部下たちを連れて救護室へ向かった。中に入るとアレクはベッドで寝ておりアイリーンとメリアそしてサラが看病してくれていた。

「陛下!」

「君は、アイリーン嬢か。アレクを看護をしてくれたのだな。ありがとう」

「陛下にそのようなお言葉をいただいて光栄でございます」

 アイリーンは立ち上がりアレクサンドル王に挨拶する。

「いや、アレクの相手いいなづけがそなたであってくれたことに心から良かったと思う。学園ではいつもアレクを守ってくれているそうだな。……本当に感謝する」

 アレクは寝込んだまま起きてこない。
 アイリーンは拳を握りしめて王に直訴する。

「あ、あの実は陛下にお伝えしたいことがございます」

「なにかな?」

「先程のアレク様の試合ですが、どうやらアレク様は弱体化の呪いを受けていたようです」

「なぜそう思ったのだ?」

「試合の途中からアレク様の様子がおかしいと感じましたので、私の側使いにも聞いたところ隣国に呪いの札があるということでした。それがアレク様を呪っていたのではないかと」

「うぅむ、さすがに証拠がなければ罰することはできまい。しかもアレクの方が勝ったのだ。負けた者に呪いかけたと疑いをかけるにもやはり証拠がなければ対処は難しいであろうな」

「・・・そうですね」

「しかし、呪いの札に関してはこちらからも調べてみよう、何かあればまた教えてほしい。よろしく頼むぞ」

「はい、かしこまりました」

 アレクサンドル王はそう言って帰ってしまった。
 アイリーンとメリア、そしてサラの三人はアレクが目を覚ますまで待っていた。しかし、すぐにアレクの侍女サーシャが慌ててやってきて、一緒に連れてきた騎士と共にアレクの身柄を回収してくれたおかげで彼女たちはそのまま寮へ帰ることができた。

 剣術大会終了後、カインは負けたことにショックを受けて部屋に閉じこもってしまったそうだ。

 こんなもの!

 カインは呪いの札を破り燃やしてしまう。
 その後は不貞腐ふてくされて寝込んでしまった。

 同情の余地無しである。

 一方、アレクの方は翌朝に目覚めると呪いは解除されたようで、体の怠さが取れていつも通り元気に朝の鍛錬をするのであった。

「よし!今回は身体強化をやるぞ!」

 昨日の出来に満足し、もう一度身体強化をかけてみる。

「あれ?」

 昨日はあんなに強くなれたのに何故?とアレクは不思議に思った。

 もう一度!

 はあ、はあ、

 もう一度!

 アレクは何度も身体強化の魔法をかけるのだが2時間ほどやったあたりで諦めた。

 アレクが身体強化だと思って使っていた魔法は単に呪いを解除しただけのように見えたが、実はもう一つカインに呪いの効果を跳ね返すという効果もあったのだ。

 カインの疲弊はアレクの呪い返しによるものであった。

 結局剣術大会の決勝戦はお互いに弱体化の魔法をかけあうだけという、なんとも残念な結果となったのである。

 結局アレクは身体強化魔法の鍛錬も上手くいかず、思った成果が出なかったために仕方なく部屋へと戻り、朝食を済ませてからいつも通り学園に登校する。

「おはようアイリーン」

「アレク様、おはようございます」

「なんかさ、周りの子たちが僕を見てヒソヒソと話をしているみたいなんだけど、何話してるのかなあ」

「きっとアレク様が優勝されたからでしょう。アレク様があんなにもお強いとわかって驚いているのですわ」

「そっかあ」

(でもなんかこっち見て驚いているようには見えないんだけどな)

 アレクは何とも腑に落ちない顔で教室へ向かった。



 《周囲の声》

『おい、もうカエル王子がいるぞ、昨日あれだけ戦ったのにもう学園に来てるよ』

『昨日の試合凄かったな。またカエル跳びしてくれないかな』

『うふふ、あの動き面白かったですわね』

『ええ、ピョンピョンしていましたわね』

 などと、アレクは剣術大会の優勝者でありながらも、勝利を勝ち取った最後のカエル飛びが災いしてか、今度は『カエル王子』という不名誉な称号を得るのであった。

 そしてこの大会以降、アイリーンは呪いをかけた原因を探るため、ローズマリアの行動を見張ることにした。
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