転生したら王子だったけど僕だけ前世のまま(モブ顔)だった( ゜д゜)

あんこもっち

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学園編

剣術大会⑥

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「選手の入場!」

僕は円形の闘技場舞台へと移動した。

対するカインは僕と向かい合うなりギロリと睨みつけると鼻息を荒くして、ふんすと息巻いている。

「今日は負けん!」

「そんなの知ったことか」

何故かカインは自信満々のようだ。

なかなかやる気のようだね。
僕に一度負けたくせにね。

でも今度はまったく負ける気はしないといった態度は少しむかつくな。

内心面倒だなあとは思うけど、まあアイリーンも観てくれているしな。

まあ、やったろうやないかい。

『それでは決勝戦のみ、出場者は各々自分の剣を使用してください。ただし、攻撃はあくまでも寸止めです。擦り傷までの攻撃は可能ですが首や頭部、下半身の急所への攻撃は禁止です。また致命傷や過度な暴行を加えたと審判が判断した場合は失格となりますのでご注意ください』

決勝戦、審判のアナウンスが流れる。
僕は父上から賜った剣(名剣ラッシー)を握りしめた。

(こいつの出番がくるとはなー)

実際今回初めて使うことになるが、事前に何度か素振りはしたのでなんとなく感覚は身についている。

対してカインは刀身の大きい大剣を持ってきたようだ。刃渡りが1メートル以上もあるロングソードだ。しっかりと刃に厚みもある。

我が愛剣ラッシーの刃渡りは80センチほど、

あっちは両手剣、

こっちは片手剣、

あの大剣を思いっきり振り抜いてきたらとてもじゃないが受けきれない。

え?こんなのアリ?

あんなので振り回されたらこの剣どころか、こっちの腕まで折れちゃうよ。

「ねえ、審判さん、あっちの剣、あれ、反則じゃないの?」

一応、念のため僕は審判に確認した。

「あのロングソードの使用は運営からも認められています。どれだけ大きな剣を用意したところで振れなかったら意味はありませんので」

「あ、そう、まあ・・・強い方が勝つだけだろうし、問題ないか」

「ならば俺が勝つに決まっている!」

おーおー、言ってくれるねえ。

揺るぎない勝利への確信というのかな。
カインのあの自信はどこからくるんだろう。

やっぱ剣かな?

それともちょっとヤバい薬でもやってんのか?

なんか以前より目がイっちゃってるような気がするんだけど。

やっぱり関わりたくない奴かも、

まあ、それでもアイリーンの為ならやるしかないよな。

「それではどちらがアイリーンに相応しいかこの試合で証明してみせようか!」

「お前なんぞに負けるものかっ!」

アレクはアイリーンの名前を出すカインが気に入らないとばかり顔を顰(しか)めていた。

「アイリーンは僕の許嫁だ。お前なんぞに渡すものか!」

「ふっ、強い者の方がアイリーンに相応しい。そして外見も私の方が圧倒的にアイリーンに相応しい!」

「ふざけるなっ!」

「それでは試合を始めます」

審判の合図によって二人の闘いが始まった。

僕は剣を鞘から引き抜くと剣は陽光に反射して光輝さを演出してくれる。

さすが名剣(ラッシー)だ。

僕はグリップを強く握りしめて構え直した。

カインはあんなにも大きな剣なのに、全くもって重たくもなさそうに、というか軽々と大剣を持ち上げた。

マジかよー。
昔ゲームで見たことはあるけど、リアルでやられると、絵面がなんかヤバいな。

あんなの寸止めとかできんの?
うっかり首斬っちゃいましたとかシャレにならないんだけど。

しかも斬られるのは僕の首。

シャレにならんわ。

喉が渇く。
冷や汗まで出てきた。

手の汗もハンパない。

これ、ヤバいな。汗で剣のグリップが握れなくなったら終わりかも。

一瞬のミスが命取り。

(学園の剣術大会なのに、なんで命の危機まで感じなきゃならないんだよ)

身体が弱れば心も弱る。

僕は愚痴を溢しつつ、覚悟も定まらない状態で剣を振るった。



クレメンスの策略によってすでにアレクに危機が迫っていた。

カインの持っているローズマリアから手渡された弱体化の魔法紙は確実に効いており、今もアレクの身体を蝕んでいる。

クレメンスは眼前にあるモニターに映ったアレクの苦しそうな顔を見て清々しい笑みを浮かべていた。

「フフフ、弱体化の魔法がかなり効いていますね」

「ちくしょう、頭を強くぶつけてしまったせいで一時的に憑依が解けちまった。アレさえなければもっと戦えたのによお」

いつの間にかさっきまでアレクと戦っていたブレイクまでクレメンスと共にいた。

敗戦のせいでかなり不機嫌のようだ。

「まあ、あなたが負けたのは意外でしたが、それでよ次は間違いなく殺せるでしょう。さっきあなたと戦っていた時よりも弱っているみたいですよ」

「チッ!まあ、負けちまったものは仕方ねえ。言い訳もしたくねえしな。しかし、あの弱体化の魔法とやらはどんな原理なんだ?」

「ああ、あれは呪いの札と言っているのですが、以前に我らの研究機関で開発されたものです。身体強化の失敗作から生まれたモノで脳を萎縮させる作用があり、筋肉増強の効果を外したものです。だから脳から身体に伝わる神経系統が狂ってくるんですよ」

「ほほう、そうなのか。アレを大量生産できればこの国を滅ぼせるんじゃないか?」

「まあ、それはそうですが、まだ時期尚早です。一応開発してからかなり実験を重ねてはいますが、効果の出方にムラがあってまだ効果の検証も完全ではないのです」

「そうか、残念だ」

「まあ、それでもあれだけ弱体化が進めば、あとはカインがアレク王子を殺すだけです。我々の仕事も捗りますよ。ここで待てば良いだけなのですからね。楽なものです」

「そうだな」

クレメンスとブレイクはゆったりと構えつつモニターに映るアレクたちの試合を観戦した。




「だるい」

確かに弱体化の魔法は一気に表面的な変化として表れてきていた。

先程の疲れもそうである。

試合が始まってすぐにアレクはカインに向かって先攻開始した。

乾坤一擲。

勝つか負けるか。

たとえコンディションが悪くとも、言い訳はできない。

どうなろうとも今はやるしかないのだ。

(ええい!怠いけど、もう、やるしかない!)

アレク王子人生1番の大勝負だ。

覚悟を決めたアレクの攻撃をカインは難なく防ぐ。

「なんだ?その剣は、マッチ棒かと思ったぞ!」

「コレ、国王陛下から賜った剣なんだけどな」

「そんなモノが?安物の剣じゃないのか?」

「カイン、言っとくけど、お前の発言、不敬だぞ?」

「ああ!アイリーン!コイツに勝って僕の強さを証明してみせるよ!」

コイツ、聞いちゃいねー。

正義は我にある。勝てば愛しいアイリーンが自分のモノになるとポジティブに考えられるカインはある意味幸せ者かもしれない。

アレクは弱体化しながらもなんとか動ける程ではあったが、ただ思ったより疲れが取れないことに不安を覚えてはいるものの、試合中に考える余裕はなく、試合開始後はただ一生懸命に剣を振っているだけだった。

アレクより体格の良いカインには力技は通じない。

そして持ち前のスピードも出せず、疲れているためにいつもより調子が悪い。

アレクはおかしいなと思いながらも必死にカインの剣を受けていた。

「ふははは!アレク王子はこんなに弱かったのかな?」

調子に乗りやすいカインは更におごっていた。

一方的な攻撃を必死で受けるアレクを見て、誰がどう見ても先程の試合と同じではないと変な違和感を感じるのであった。

アイリーンもその変化に気づいた。

「何故あんなにも動きが鈍くなってますの?」

おかしい……。
メリアもおかしいと思い試合をよく観察する。

何かある。しかし、何が原因かが解らない。
二人はカインとアレクをしっかりと観察するも解らずじまいだった。

「ひょっとして」

メリアがつぶやいた。

「何かわかりましたの?」

「アレク王子は呪いを受けているかもしれません」

「呪い?」

「はい、私の一族の情報では隣国に呪いをかける札のようなものがあると聞いたことがあります」

「なぜ?どうしてアレク王子が呪いを受けるのかしら」

「やはりあのカインの勝ち誇った様子を見る限りではあらかじめアレク王子に呪いをかけて弱らせていたのではないでしょうか」

「どこから入手したのかしら」

「そういえばこの前、父からの情報でカインはローズマリアと会っていたそうです」

「第二王子派ね」

「今回もアレク王子に呪いをかけてカインはアイリーン様のために、そしてローズマリアイスタル殿下のためにとアレク王子を失脚させるように画策しているのではないかと考えます」

そうかもしれないとアイリーンは頷く。

「ああ、でもどうしたら呪いを解けるのかしら」

メリアは考える。

「その呪いの札を焼き払えばよいかと」

「どうやって?」

「カインを丸焼けにしますか?」

「それは良いアイデアだけれど、・・・残念ながら今は出来ないわね」

二人が悩んで考えている際中、アレクはどんどん不利になっていた。

「くっ!」

もはや何回かに一回は攻撃を受ける。アレクの体にはもういくつもの痣ができていた。

「くははは!こんなものか!」

カインは調子に乗りに乗りまくっていた。

やっていることは鬼畜なのに神経が麻痺しているのか、興奮し過ぎて自分自身の客観視は全くできていない。

対してアレクは非常に焦っていた。今回の剣術大会では魔法を使ってはならないために呪いで弱体化したアレクには全くもって打つ手がなかった。

「くそっ!」

アレクは弱体化した身体をなんとか動かしつつ、カインの苛烈な乱撃をかろうじて受け凌ぐのであった。
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