転生したら王子だったけど僕だけ前世のまま(モブ顔)だった( ゜д゜)

あんこもっち

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学園編

剣術大会⑤

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アレクはセドリックに勝利した。

次はいよいよ4回戦、その後はとうとう決勝である。

「なんか早いなー」

アレクはつぶやいた。

いくら剣術大会が王立学園の由緒ある伝統行事とはいえ、所詮は学園行事である。昔は数日かけて剣術大会を行ったらしいが、今では参加者や運営する学園の時間的負担も多いために一日で終わるようなプログラムになったそうだ。

故に剣術大会も学園の都合もあって一日で終わるようなプログラムにしてあるのだ。

アレクがセドリックとの対戦の間、

アレクの次の対戦相手であるブレイクは急遽とある人物から呼び出しを受けたため闘技場にある運営本部から少し離れた別室に来ていた。

ブレイクは扉を二回叩くと男の声が聞こえる。

「ブレイクですか。さあ、入りなさい」

「・・・失礼します」

「ここには誰もいません。普通に話しても構いませんよ」

「ああ、わかった」

「いよいよ本番ですね。調子はどうですか?」

「調子は良くはないな。この体が小さ過ぎてまだ馴染んでいないのだ。次の対戦相手が標的ターゲットだそうだが、残念だがこの身体では十全には戦えなさそうだ」

「まあ、それでもあなたのほうが強いでしょうから気にしなくても良いですよ」

「クレメンスよ。こう言ってはなんだが、もっと大きな身体を用意できなかったのか?」

「すみません。筋肉強化剤を飲ませた生徒たちの中でもっとも副作用のなかったのがソレでしたので、他の者たちは上手く身体は大きくなったのですが、筋肉量は増えても副作用で脳が萎縮してしまい、全体の力はそれほど強化できませんでした。これからも憑依体の精査が必要ですね」

「むう、ならば仕方あるまい。まあ小さい分スピードは出せそうだからな。少し限界まで試せそうだ」

「よろしくお願いしますね。まあソレが壊れてもまた次の実験体を用意しますから、安心して使ってください」

「わかった。それよりあのアレクという小僧を殺して身体を持ち帰るというが、どうやって持ち帰るのだ?」

「ああ、アレク王子の死体は途中で別のモノと入れ替えます。まあ同じ顔を作って背丈の同じモノを用意すれば良いだけですから簡単ですよ」

「そうか。ならば私は私の任務を全うするだけだな」

「ええ、よろしくお願いします」

「では行ってくる」

ブレイクが部屋を出るとクレメンスは何か小さなリモコンのような物を胸のポケットから取り出した。

リモコンには小さな丸いスイッチがあり、それを押すと突如として空中に光る画面が出現する。

「フフフ、楽しくなってきましたね」

クレメンスはゆったりと背を椅子に預けるよう腰掛けると目の前に映るアレクとブレイクの対戦を一人優雅に観戦するのであった。



「次!」

アレクとブレイクの二人が出てきた。

二人とも小柄なので観客席からは小さく見える。そして先程の試合と違い熱狂的な観客たちがいないためにわりと静かな会場に戻っていた。

はじめ!

アレクが剣を構えるとすぐにブレイクが接近してきた。ブレイクは先手必勝とばかりに剣戟を繰り返してアレクに隙を与えない。

アレクも後手に回った事を後悔しながらもブレイクの剣筋をしっかりと見極めるように彼の剣を受けるのであった。

二人ともスピードに長けており、素早い動きでの剣戟はまるで剣舞のようだった。観客たちは剣舞のような二人の闘いをみて感心する。

二人とも高度な技を繰り出しており実力の深さを窺い知ることができる、まことに玄人好みの闘いであった。目の肥えた観客たちは「ほぅ」と息を吐きながら真剣に二人の闘いを注目している。

やがてアレクの方が少しずつ押されているように流れが変わってきた。

どうやらアレクは途中から力技で攻撃してきたブレイクの剣を辛くもなんとか凌いできたようだ。

しかも弱体化のせいかアレクの顔は余裕を無くし、少しずつだが表情に焦りが出てきている。

アレクは力で対抗するのは避けて剣戟に強弱を使い分けながら時折フェイントを織り交ぜてブレイクを翻弄させた。

そうしてなんとか優位に立ったアレクに対してブレイクも逆転の一手を打つ。

それは一瞬のことだった。

少し距離を取ったブレイクは、その後いきなりアレクの目の前に現れた。縮地のような技によって急接近したブレイクは剣を構えて防御していたアレクに思い切り剣を振り抜いた。

いきなり目の前に接近したブレイクの剣をアレクは咄嗟に剣を構えて防御するが、ブレイクの渾身の振りに力負けしてしまう。

剣で押し負けたアレクはそのまま後ろに吹き飛ばされてしまった。

あまりにも強い力で剣を振ったからか、吹き飛ばされたアレクは硬い石の床に背中を打ち付けてしまい、ようやく立ち上がったもののあまりにもの背中の痛みに咳き込んでしまう。

「ゴホッ」

ブレイクは立ち上がろうとするアレクにすぐさま攻撃に仕掛けるが、アレクは咄嗟に剣を構え直して受け止める。

ブレイクはそのまま側近戦を装いアレクにそっと耳打ちした。

「王子さんよぉ、強い強いと評判だったから期待していたんだがな。思ったより弱いんだな」

「なんだと?」

「まあ、カインとかいう小僧に任せても良いんだが、俺が殺しても良いらしいし、そっちの方が楽しめそうだ」

ブレイクの言葉にアレクは驚愕する。

(これが、父上の言っていた例の暗殺者か)

まさか学園の剣術大会に紛れ込んで自分を殺しにくるとは、

こんな状況を予想すらしなかったアレクは冷や汗をかきながら狼狽える。

(どうする?)

自分の手で倒したいとは思うが、どうも体調が悪くて思うように身体が動かない。

「おお、そうだ、身体が思うように動かないんだっけか?まあ、俺も本調子じゃないからな。そっちも負けの言い訳にはならんだろ」

「な、なんで、そのことを知っているんだ?」

「まあ、どうでもいいだろ。どうせ、お前はここで死ぬんだからな」

「くっ」

アレクは狼狽えながら力まかせに剣を振るったがブレイクは難なくそれらを躱して接近する。

刃の潰れた剣を振り回してアレクの腕や足を攻撃した。

アレクの腕や足は剣では斬られぬものの、刃の潰れた剣で打ちつけられたため打撲と擦り傷が増えていく。

あまりにもの苦痛にアレクの顔は歪んだ。

(ま、まずい!)

このままじゃ嬲りなぶ殺される。

ど、どうすればいい。

アレクはなんとか対策を考えるがブレイクの執拗な攻撃をなんとか躱すだけで精一杯だった。

こんな時、師匠ならどうする?

こんなにも打ちつけられたのは師匠ボルトの鬼の修行以来のことで、ずいぶんと久方ぶりだ。

アレクはこの状況を打破すべく、対策はないかと今まで受けてきたボルトの過酷な修行を一通り思い出してはみたが、いっこうに妙案は浮かんでこなかった。

(いや、よく考えたら師匠が追い詰められる状況なんて、今までまったくなかったよな)

アレクはボルト師匠に何度も追い込まれたことはあるが、師匠が追い込まれたところなどついぞ見なかったことに気がつく。

(ど、どうしよう)

「ほらほら!もっと苦しめ!」

ブレイクは何度も剣を振り、アレクを痛めつける。観客たちは最初は興奮していたものの、少しずつアレクの苦しむ姿を見て冷静になると今度は困惑するのであった。

「アレク様!」

アイリーンはアレクの窮地を心配して慌てて観客席を立ち、そのまま無我夢中でアレクの元へと走り出した。

「アイリーン様!」

そんなアイリーンの従者であるメリアも慌ててアイリーンの後を追う。

(どうすれば)

窮地に追い込まれたアレクは防戦一方となり、とにかくブレイクの剣をなんとか躱して凌いでいる。

『アレク王子、もし窮地に陥った場合は、手段を選んじゃいけねえ。どんな手を使ってでも生き残る道を選ぶんだ!』

こんな時、アレクの脳裏に浮かんだのは昔聞いたボルトの助言だった。

『アレク王子には剣だけじゃねえ。魔法だって使える。どちらも十全に使えれば大抵の敵に負けることはねえはずだ』

『でもどちらかしか使えないルールだったらどうするの?』

『そんなもん、生命に関わるのであればルールなんて知ったことかよ!そんなもん無視してとりあえず勝ちゃあ良いんだよ!勝ちゃあ!』

『そ、そう・・・』

『まあアレク王子を追い込める奴なんぞ、同年代にはそうおらんだろうがな!』

『それなら、安心、かなあ』

『まあ、そんなにビビってたんじゃあ、勝てる試合にも勝てんかもしれんがなあ。がははは!』

(そっか、生命に関わるのであれば、ルールなんて、関係ないよな)

アレクは脳裏に浮かんだボルト師匠とのやりとりから生き筋を見出した。

「どうした?アレク王子!このままやられっぱなしですかぁ!?」

ブレイクはもはや完全に勝利を確信し、弱い者を弄ぶようにアレクに暴行を加えていた。

(体力は無いけど、魔力なら、まだある!)

アレクは身体中に魔力を巡らせると共に剣にも風魔法を纏わせる。

(まあ、無詠唱だし、バレなきゃいいんだよな)

アレクは以前カインに向けて放った風魔法『ソニックブーム』を剣に纏わせてブレイクに放った。

「どうしたぁ!う!ぐわっ!」

風魔法の纏ったアレクの渾身の一撃はブレイクを場外にまで吹き飛ばした。吹き飛ばされたブレイクは場外の壁に頭を打ちつけたのか、気を失ったままのようだ。

「それまで!アレク王子の勝ち!」

わあああ!!

窮地からの逆転勝利に観客たちは歓声を上げる。

なかなか起き上がらないブレイクは救護員によって担架に乗せられてそのまま医務室へと運ばれていった。

そんな状況を見送ったアレクは立っているのも辛いとばかりに石床にそのままへたりと座り込んだ。

そんなアレクの身を案じたアイリーンが颯爽と現れると、すぐさまアレクの元へと駆けつける。

「アレク様!大丈夫ですか!?」

「ア、アイリーン?ど、どうしたの?」

「アレク様が心配で、それよりこれを飲んでくださいまし」

「え?んぐっ!」

アイリーンは持ってきたポーションの瓶の蓋を開けてそのままアレクの口に突っ込んだ。

グビッ、グビッ、ぷはあー。

「あ、治った」

アレクのブレイクから受けた傷はアイリーンの持ってきたポーションによって全快する。

「はあ、良かったですわ」

「アイリーン、ありがとう。助かったよ」

「いいえ、それよりもアレク様がご無事で本当に良かったです。とても心配したのですよ?」

うるるんとした目で見るアイリーンの可愛らしさにアレクは胸を詰まらせる。

「いやあ、面目ない。その、言い訳になるんだけど、なんか、疲れが取れなくてさ。身体に力が入らないんだ」

「え?そ、それで、あんなにも苦戦していらっしゃったのです?」

「うん、でも相手もかなり強かったよ」

「まあ、そうでしたの。でもアレク様が勝たれたのですから、結果が全てですわ!アレク様はただ胸を張っておればよろしいのです!」

「あ、うん、そうだね。でも、次は勝てるかどうか、わかんないけどね」

「アレク様、いよいよ次は決勝ですのよ?勝てるかどうかではなく、ぜひともあのカインに勝ってくださいませ

「あ、うん、まあ、頑張るよ『頑張るではありませんわ!必ず勝つのです!必勝あるのみです!』え?あ、うん。わ、わかったよ」

アイリーンの気迫に押されてしまい、渋い顔で頷くアレクは結婚前にしてすでに尻に敷かれているようだ。

「ではアレク様、頑張ってくださいね」

「あ、うん、わかった」

「必勝あるのみ!ですわ!」

「あ、はい」

「声が小さいですわ!もっと大きな声で!」

「は、はいっ!」

「はい!よろしいですわ!」

アイリーンは満足した顔でアレクに発破をかけ、上機嫌で観客席へと戻っていった。

一方、観客席ではブレイクと王子の試合は最初は良かったが、後半はとても乱暴な試合だったと一部の貴族を含めた観客たちは論評しており、かたやアレクサンドル王と師匠のボルトはアレクの勝利に満足して「けっこう結構!」などと喜んでいた。

席に戻ったアイリーンは嬉しそうに手を振ってくれる。

「はあ、なんとか勝ったけど、今回はヤバかったなあ」

今回はしんどかった。

「あんまり闘いたくない相手だったな」

試合終了後、アレクは闘技場の待合室に戻ると座って休みだした。

しかし、

「それでは決勝戦をはじめる!出場者は前へ!」

「え?は、早いな」

もう少し休ませてくれてもいいんじゃないか?

休憩する間もなくアナウンスに起こされてアレクは少し不機嫌になる。

いよいよ次は決勝である。アレクは仕方なく剣を持ち直して起き上がり会場へと向かった。
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