転生したら王子だったけど僕だけ前世のまま(モブ顔)だった( ゜д゜)

あんこもっち

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学園編

剣術大会④

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「勝者!アレク王子!」

はあ、はあ、

勝った・・・。

アルバートだったっけ、攻撃は下手くそだったけど、とにかく頑丈だった。スタミナもあるし、何度も何度も攻撃したけど、筋肉の壁でいまいちダメージが通らなかったな。

結構力入れて攻撃したんだけどなあ。
ああ、疲れた。ちょっと思ったより体力消耗した。

少し休もうか。

『次!Aブロック三回戦が始まります!先程から健闘されたアレク王子!そして対戦相手はセドリック・アンドリア!」

わぁぁぁ!!

「え?もう?」

(さっき試合終わったばっかりなんだけど)

どうやら後の試合でセドリックの対戦相手が棄権したらしい。

サラの兄セドリックは相手と戦わずして勝ったようだ。

「いいなあ、羨ましい」

セドリックの方も棄権してくれないかな。

「ま、そんなに都合よくいくわけないか。・・・はあ、ダルいけど、しゃあないか」

僕は自分の頬を気合いを入れるべくバシッと叩いた。

「よし!行こっと!」

(でも、やっぱり、体ダルいなあ)

少し疲労感を残しながら僕は試合会場へと向かった。



「くそっ!忌々しい奴め!また勝ちおったわ!」

ヘンリー教頭は悔しそうに顔を顰めて自分の爪を噛んでいた。

「まあ、それでも体力はかなり消耗したはずです。アルバートの頑強さが役に立ちましたね」

「しかし、負けては話にならんではないか!」

「まあ、それでも次の手は打ってありますから大丈夫ですよ。アルバートもそうでしたが、ようやく弱体化の魔法が効いてきたみたいです」

「なんだと!?それはどういう魔法なのだ?」

「まあ、魔法というよりは呪力といった方がよいですね。呪いの力ですよ。呪いの力で相手を弱くするのです。アルバートを頑強にした上であの王子に弱体化の呪力を込めた魔法紙を使わせましたから。あの王子もアルバートを倒すにかなり苦労した筈です」

「むう、弱体化か。しかし、それでも勝つとはな」

「まあ、地力も相当あるということでしょうね。それでもご安心ください。決勝までの間にも弱体化は益々進行していきますから。決勝までに確実に負けます」

「ふふふ、ははは!あと少しであの王子を亡き者に出来るのだ!ふははは!」

ヘンリー教頭は声高らかに嗤った。



三回戦の相手はサラの兄であるセドリックだ。同じボルトの門派であり、アレクからすればセドリックは兄弟子にあたる。

ただし、一回戦の試合でサラとセドリックの闘いを観ていても、二人とも剣術の基礎は同じだが、各々自分の闘い方というものを持っているようだ。アレクの見る限り、セドリックはカウンター狙いの受けの剣が多かった。

アレクは魔法と剣術を両方鍛えていたので魔法を行使しながら剣で戦うことには長けていたが、剣だけならカインと同じぐらいの技量をもつ。

セドリックはカインには敵わないが、相性というものがある。アレクにとってセドリックが闘いやすいかどうかはわからなかった。

アレクが闘技場に入ると大きな歓声が響き渡る。音響のせいか、闘技場の真ん中に来ると観客席にいた時よりも観客たちの声が耳につんざくようにうるさく耳の鼓膜に響いてくる。

すでにアレクの目の前にはセドリックがいた。

「アレク王子、いつも妹が世話になっているようで、ありがとうございます」

セドリックは律儀に挨拶をしてきた。
アイリーンの兄とは大違いだ。

「いや、こちらこそサラには世話になっている。また私の剣の師匠はお前の父であるボルトだ。こちらこそ感謝する」

「そうですか、それではよろしくお願いします」

そう言ってセドリックは剣を構える。
セドリックに合わせるようにアレクも剣を構えた。

始め!

アレクはすぐに攻撃を仕掛けた。

セドリックはアレクの素早さに驚きながらも冷静に剣で受け止め、隙あらば攻撃に転じている。

アレクもフェイントをかけながらセドリックに攻撃する。セドリックも上級生らしく下手なフェイントには騙されずに冷静に攻撃を受けていた。

サラと違い剣に重みがあるアレクの攻撃は確かにセドリックには効いていた。剣で受けていたものが、手が痛むのを恐れたのか、次第に剣で躱すようにあまり力を使わないように受け方を変えてきた。

(結構疲れていたけど、なんとか動けるな)

ただ思ったより手に力が入らない。
身体も本調子とはいえず、アレクはまるで風邪を引いたときの全身に纏わりつく気怠さのようなものを感じていた。

体調が優れないアレクは無駄な力を入れないように小手先の技を小出しにして、フェイントをかけながら大事な一撃には腰を入れて剣を振り回した。

疲れたとはいえ、アレクの大振りの剣はそれでも相手セドリックを吹き飛ばす。

アレクの強烈な一撃によってセドリックは反撃もできずに後ろに下がらせられる。よほど強烈だったのか、セドリックは驚きの顔を隠せずにいた。

驚いたのはヘンリー教頭もである。

「なぜだ!なぜあんなにも力が出せるのだ!」

「どうやら相当な鍛錬を積んできたようですね。普通あそこまで弱体化した中で力を込めることはできない筈です」

「おい!本当に弱体化は効いているのだな!」

「ええ、効いていますよ。ご安心ください」

「ええい!あのボンクラ王子が!早く負けてしまえ!」

ヘンリー教頭は悔しそうにアレクとセドリックの試合を引き続き観戦した。

アレクはすぐにセドリックに接近して攻撃する。対してセドリックは防御に迷いが生じてきた。剣に迷いが生じてだんだんと噛み合わなくなってくる。

これはセドリックがいつもカインに負ける原因でもあった。

弱気になると臆病になる。アレクはその隙を見逃さない。果敢に攻め込みセドリックの反撃の隙を与えない。

弱気になったセドリックは苦しい表情をしながら防御一択となり、ただ剣を受けるだけで精一杯という感じになった。

「どうした!妹の前で恥を晒すのか?」

アレクはセドリックを煽る。

対してセドリックもアレクの挑発を受けてニヤリと口角を上げる。

セドリックが反撃に出る。アレクも攻撃を仕掛ける。

双方同時に攻撃を仕掛けてきたため剣戦の応酬が始まる。

二人の剣と剣の攻防は互いに交じり絡み合う。
それはまるで剣で対話をしているようだった。

観客は静かに二人の闘いを観ていた。

剣と剣が重なる鉄の音が闘技場に鳴り響き、
二人は互いに剣戟を繰り返す。

アレクが剣を振るう中で徐々に弱体化していく己の身体に異変を感じた。

(ヤバいな。疲れがどっと出てきた、もう力が出ない。だんだん力が抜けていく感じがしてきた)

己の体を客観的に分析する中で身体が少しずつ重たくなってくるのがわかる。

(疲れか?それとも風邪引いた?)

昨日薄着で寝たせいか?

アレクは焦った。

その焦りのせいで不意に無駄な攻撃を仕掛けてしまい剣は空振ってしまった。

「そこだ!」

今度はセドリックがアレクの不意を突く。
立場は逆転してアレクが受け止める側になった。

(うわっ!やばっ!)

セドリックの剣がアレクの眼前に迫る。
どうにかしなければ負けてしまうとアレクが思った時、

奇跡は起こった。

《うん?》

それはほんの一瞬のことだった。

突然に集中力が高まり、セドリックの振るう剣がまるでスローモーションのようにゆっくりと見えたのだ。

弱体化したアレクだが、意識はゾーンに入ったようだ。

アレクの感覚が研ぎ澄まされた。

そしてゆっくりとセドリックの剣がアレクの眼前に迫る。

その動作に合わせてアレクはギリギリの僅差で剣を避けた。

アレクの頬をセドリックの剣が掠めるが、それだけだ。

今度はアレクがセドリックの隙を狙える絶好のタイミングとなった。

セドリックの剣を見切ったアレクは最小限に躱した後、即座に反撃した。

「うおおお!!」

アレクの渾身の剣がセドリックの胴を抉る。
アレクは更に剣を振り抜いた。

そしてアレクの剣はそのまま流れるように動き、剣はセドリックの首もとを捉えた。

「それまで!」

ヒヤリと首元に当たる剣の冷たさを感じたセドリックは己の負けを知るとそっと目を閉じた。

そして深く息を吐いてから「ありがとうございました」といってトボトボと歩いて退場して行った。

「アレク王子の勝ち!」

会場は一気に湧き上がり、多くの人たちが拍手喝采する。

いよいよ次は4回戦、そのまた次は決勝戦である。

アレクは試合終了後、次の試合まで時間があるためお昼ご飯も食べたいとあって一旦観客席に戻った。

「アレク様!素晴らしい試合でしたわ♡」

アイリーンがアレクの手を取って喜んだ。

えへへ。

アレクもだらしなく喜ぶ。

「アレク様!素早い試合を魅せてくださり本当にありがとうございます!」

サラは涙を流しながら直立敬礼してアレクに感謝の意を示すのだが、そのあまりにも仰々しい立ち振る舞いにはさすがのアレクも「お、おぅ」と返答するしかなかった。

周りの生徒からも賞賛されたアレクは照れくさそうに席へと座る。

「それでは4回戦を始めます」

Bブロック次の試合が始まった。

そんな時、アレクはふと疑問に思うことがあった。

「あれ?みんなお昼ご飯はどうしてるの?」

「みんな各自好きな時に食べに行ってますわよ」

「えっ?そうなの?」

「ええ、プログラムにもそう書いてありますし、私は簡単な食事なので適当に済ませましたわ」

「あ、そうなのね」

アレクも出場者のくせにまったくプログラムを把握していなかったようだ。サーシャも知らずにお昼を用意しているかもしれないので後で怒られるかもしれない。

まあ、いいか。

アレクは昼食を諦めて4回戦を観戦する。

大きな歓声の中、カインの堂々とした入場である。対して、闘技場の反対側からは男たちのラブコールをうけてユランが入場してきた。

対峙する二人は観客の声とは対照に、ゆっくりとした動作で静かに剣を構える。

「それでは始め!」

ユランは素早く前に突進し、カインに向けてまっすぐ剣を突いた。

カインが攻撃を受けると女生徒たちが騒ぎ、ユランが攻撃を受けると男子生徒が騒ぎ出す。

もうどちらもうるさかった。

もはや会場と一体となった二人はお互いの剣を交わすたびに観客席が騒ぎ出すというこれまた稀な光景となるのであった。

ユランは動き回りながら隙をついて攻撃するのだが、攻守共に安定したカインには何をやっても通じずにやがてユランも焦り出す。

力も体力もユランのほうが劣勢であるためになんとか起死回生のチャンスを見出そうとユラン。

しかし、彼女も必死で頑張っているが鉄壁のようなカインの防御には通じなかった。

そして決着の時、

ユランがカインの攻撃の後、隙をつくようにハニートラップをかける。ちょっとしたチラリズムなのだが、純情なカインには効くだろうと思ったユランは隙あらばとカインに攻撃を仕掛けた。

しかし、

カインは冷静にユランの剣を躱してユランの後頭部を剣で叩いた。ユランは気を失い倒れたまま起きてこなかった。

男子生徒の叫び声が会場に木霊する。

「いやだーーー!」

「ユランちゃーーん!」

「負けないでくれーーー!!!」

「カイン様ステキーーー!」

「美しいわーー!!」

「あんな小娘の罠に引っかかるわけありませんわ!!」

などと、もはや二人が戦っているのか観客が応援合戦でやり合っているのかわけがわからない状況だった。

「それまで!」

男子生徒たちの号泣と雄叫びが響く中でユランは負けた。

カインは「お前ごときの色気に俺が引っかかると思っているのか」と言い放った。

(俺が引っかかるとしたらアイリーン、……君だけだ)

カインはアイリーンの方をチラリと見つめ颯爽として会場を去った。

ユランは悔しそうにポロポロと涙を流して会場を出ていった。

男子生徒は全員カインを敵と認定した。
女子生徒は皆「ザマアミロ」とユランを罵った。

「怖っ!」

アレクは狂気じみた二人の歓声に慄いた。

(僕もカインと戦ったらあんな罵声を受けるのか?)

まだ次の試合があるにもかかわらずアレクは先の事を心配するのであった。
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