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十話⑦
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私とレオルダスは同時に動いた。
途端に姿は視界から消え、何も見えない空間に衝撃波が起こる。
私とレオルダスは目に止まらぬスピードでお互いの突きを、蹴りを、折れた腕を、壊れた足をぶつけ合った。
攻撃の命中率は互角。しかしそれ故に、均衡はすぐに崩れた。
「ほらほらどぉした!?ペース落ちてきてんぞ!!!」
「くっ!!」
当たる攻撃の数が同じである以上、攻撃力と防御力で勝るレオルダスの方が優勢になるのは自然な流れだった。
どうする?このままじゃジリ貧で負けるのは私の方だ。
私は戦いながら周囲に視線を巡らせて、何かは手はないかと必死に探った。
ウインドカッターを使うか?いや、唱える暇がないし、攻撃力も足りない。
洞窟の天井を崩して生き埋めにでもしてしまおうか?いやだめだ、マグちゃんと金ちゃんが巻き添えになってしまうし、それでコイツが止まるとは思えない。
いっそのこと逃げてしまおうか。
ダメだダメだダメだ!マグちゃんと金ちゃんを抱えてコイツから逃げれる訳が無い!
「考え事とは余裕だなぁ!」
「ッッッッ!!」
考えている間にも状況は悪くなっていく。押しきられるのも時間の問題だ。
クソッ!何か無いの!?
何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か!!!!!
その時、私の視界のあるものがピクリと動いた。
ソレは"大きすぎて"視界に写っているという認識すらされていなかった。
刹那、私の脳内に一つの策が浮かんだ。この窮地をひっくり返せるかもしれない策が。
けどそんなこと出来るの?やったこと無いし、もしも失敗したら逆転はもう出来なくなる。
そうなったら金ちゃんとマグちゃんは……。
「もっとだ!!!もっとお前を感じさせてくれココロ!!!!!」
私の逡巡を他所に、レオルダスは益々勢いづいていく。もはや選択の余地は無かった。
やってやる。やるしかないんだ。
「ウインドカッター!!」
至近距離でのウインドカッター。しかし、難なく躱され、風の刃は空を切った。
魔法を唱えた隙をつかれ、レオルダスの蹴りが腹に突き刺さった。
「カハッッッ……!!」
体の空気が押し出されて、私は声にならない悲鳴を上げた。
よし、順調だ。
じゃあ次は……。
私は一度距離を取り、洞窟の岩石を掴んで投げた。投石だ。
効くかどうかは度外視して、ただひたすらに投げつけた。
「ハハッ!効かねぇよそんなの!!」
予想通り、レオルダスは埃でも払うように岩石を砕いて進んでくる。
よし、予定通りだ。次は……。
その直後だった。
「ガッッッッ!!!」
レオルダスは更にスピードを上げ、私の腹に拳を打ち付けた。
芋虫を潰したような肉を抉る音が鼓膜にベットリと響く。
その衝撃で、私はそのまま壁に打ち付けられた。
もう……動けない。
誤算だった、こんなに早く限界が来るなんて。
勝利を確信したような笑みで、レオルダスがゆっくりと近付いてくる。
「どぉしたよ、もっと楽しもうぜ!!」
うるせぇよキチガイが。
もう動けないんだよ。
私は唯一動かせる目線だけを、マグちゃんと金ちゃんに向けた。
お願い。今のうちに逃げて。お願いだから。
そう声をかけようにも、音が出ず、喉からは悲痛に空気だけが漏れ出すだけだ。
「何だよ、もぉ動けねぇの?」
レオルダスは子供のように文句を垂れると、その視線をマグちゃんと金ちゃんの方に向けた。
「そういや、あいつらを傷つけられた時のお前は凄かったなぁ……」
その言葉を聞いた途端、私の内側から何か熱いものが湧き出した。ゴボゴボとマグマのように胎動している何かが。
「よし、アイツら殺すか」
ガシッ!!
動いた。
私の体は動いた。
「オマエを殺すぞ、キチガイ野郎ッッッ!!」
「ハハハハッッ!すげぇなお前は!!もう死に体だったろう!!!!」
レオルダスが目をキラキラさせて私を覗き込む。
「さぁさぁ次は何を見せてくれるんだ!?もう万策尽きただろう?そこから何ご出きるんだ!!」
万策尽きた、か。そりゃそう見えるだろうな。そう見えるように、演出したんだから。
そんなに見たけりゃ見せてやるよ。
私はゆっくりと息を吸って準備をした。
私の立てた策の、キーとなる存在を呼ぶために。
「テイム!!マザースパイダー!!!」
キョォォォォォ!!!
途端に姿は視界から消え、何も見えない空間に衝撃波が起こる。
私とレオルダスは目に止まらぬスピードでお互いの突きを、蹴りを、折れた腕を、壊れた足をぶつけ合った。
攻撃の命中率は互角。しかしそれ故に、均衡はすぐに崩れた。
「ほらほらどぉした!?ペース落ちてきてんぞ!!!」
「くっ!!」
当たる攻撃の数が同じである以上、攻撃力と防御力で勝るレオルダスの方が優勢になるのは自然な流れだった。
どうする?このままじゃジリ貧で負けるのは私の方だ。
私は戦いながら周囲に視線を巡らせて、何かは手はないかと必死に探った。
ウインドカッターを使うか?いや、唱える暇がないし、攻撃力も足りない。
洞窟の天井を崩して生き埋めにでもしてしまおうか?いやだめだ、マグちゃんと金ちゃんが巻き添えになってしまうし、それでコイツが止まるとは思えない。
いっそのこと逃げてしまおうか。
ダメだダメだダメだ!マグちゃんと金ちゃんを抱えてコイツから逃げれる訳が無い!
「考え事とは余裕だなぁ!」
「ッッッッ!!」
考えている間にも状況は悪くなっていく。押しきられるのも時間の問題だ。
クソッ!何か無いの!?
何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か!!!!!
その時、私の視界のあるものがピクリと動いた。
ソレは"大きすぎて"視界に写っているという認識すらされていなかった。
刹那、私の脳内に一つの策が浮かんだ。この窮地をひっくり返せるかもしれない策が。
けどそんなこと出来るの?やったこと無いし、もしも失敗したら逆転はもう出来なくなる。
そうなったら金ちゃんとマグちゃんは……。
「もっとだ!!!もっとお前を感じさせてくれココロ!!!!!」
私の逡巡を他所に、レオルダスは益々勢いづいていく。もはや選択の余地は無かった。
やってやる。やるしかないんだ。
「ウインドカッター!!」
至近距離でのウインドカッター。しかし、難なく躱され、風の刃は空を切った。
魔法を唱えた隙をつかれ、レオルダスの蹴りが腹に突き刺さった。
「カハッッッ……!!」
体の空気が押し出されて、私は声にならない悲鳴を上げた。
よし、順調だ。
じゃあ次は……。
私は一度距離を取り、洞窟の岩石を掴んで投げた。投石だ。
効くかどうかは度外視して、ただひたすらに投げつけた。
「ハハッ!効かねぇよそんなの!!」
予想通り、レオルダスは埃でも払うように岩石を砕いて進んでくる。
よし、予定通りだ。次は……。
その直後だった。
「ガッッッッ!!!」
レオルダスは更にスピードを上げ、私の腹に拳を打ち付けた。
芋虫を潰したような肉を抉る音が鼓膜にベットリと響く。
その衝撃で、私はそのまま壁に打ち付けられた。
もう……動けない。
誤算だった、こんなに早く限界が来るなんて。
勝利を確信したような笑みで、レオルダスがゆっくりと近付いてくる。
「どぉしたよ、もっと楽しもうぜ!!」
うるせぇよキチガイが。
もう動けないんだよ。
私は唯一動かせる目線だけを、マグちゃんと金ちゃんに向けた。
お願い。今のうちに逃げて。お願いだから。
そう声をかけようにも、音が出ず、喉からは悲痛に空気だけが漏れ出すだけだ。
「何だよ、もぉ動けねぇの?」
レオルダスは子供のように文句を垂れると、その視線をマグちゃんと金ちゃんの方に向けた。
「そういや、あいつらを傷つけられた時のお前は凄かったなぁ……」
その言葉を聞いた途端、私の内側から何か熱いものが湧き出した。ゴボゴボとマグマのように胎動している何かが。
「よし、アイツら殺すか」
ガシッ!!
動いた。
私の体は動いた。
「オマエを殺すぞ、キチガイ野郎ッッッ!!」
「ハハハハッッ!すげぇなお前は!!もう死に体だったろう!!!!」
レオルダスが目をキラキラさせて私を覗き込む。
「さぁさぁ次は何を見せてくれるんだ!?もう万策尽きただろう?そこから何ご出きるんだ!!」
万策尽きた、か。そりゃそう見えるだろうな。そう見えるように、演出したんだから。
そんなに見たけりゃ見せてやるよ。
私はゆっくりと息を吸って準備をした。
私の立てた策の、キーとなる存在を呼ぶために。
「テイム!!マザースパイダー!!!」
キョォォォォォ!!!
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