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二話
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「先生、何のようですか?」
昼休みに空手部の顧問の辻先生から呼び出された俺と皆藤は、不満げな態度を隠さず尋ねた。
「君ら少しは僕を敬った言い方はできないの?全く……」
辻先生は天パが暴走しきっている頭をポリポリと掻きながら言った。俺らサボりまくり弱小空手部の顧問に相応しい、色白無気力先生である。
「じゃあ簡潔に説明するぞ、この度佐東が退部することになったんだ」
突然の報告に、俺らの思考はフリーズしてしまった。佐東が辞めた?俺らに何も言わずに?確かに、最近様子がおかしいなと思ってはいたが、まさか辞めてしまうとは。
「何だ、聞いてなかったのか?」
辻先生は目を丸くして意外そうに言った。
まだ思考が止まっている俺と皆藤は、無言で首を縦に振って応えた。
「あーまあそれで、お前ら空手部の人数が、部活動を継続するのに必要な人数に満たなくなったんだ」
少し気まずそうに、辻先生はまた頭をポリポリと掻きながら言った。
「えーと、どういうことですか?」
俺より一足早く正気に戻った皆藤が、絞り出すように尋ねた。
「まあ、簡潔に言うと、廃部ってことだな」
廃部。その一言で俺も正気に戻った。
「え、まだ部長と俺と皆藤で三人。部活動に必要なのって確か三人ですよね」
正気に戻ると同時に、矛盾点を指摘した。
辻先生はまた頭を掻いた。
「まあ、そうなんだけどな、部長は三年生で半年くらいで卒業だろ?今一年生はいないし、実績もないから、部費の無駄使いってことで早く解体したいらしい」
「まだ俺らが三年になっときに一年生が入るかも知れないじゃないですか」
「新一年生は実績の無い弱小空手部なんかに入んないだろうっていう結論になってたな、あとお前らにも部費が掛かってるわけだから、廃部にできる口実があるうちにってことだろうよ」
皆藤の噛みつきを、生徒に言っては駄目であろう情報を交えながら返してくる。
先生は頭を掻く手を止め、俺らの方を指差した。
「とにかく、お前らがなんと言おうと決定事項だから、俺だって悲しいんだぞ」
「絶対思ってないでしょ」
「これで楽できると思ってるでしょ」
皆藤、そして俺は食い気味に先生の言葉をぶった切った。生徒から先生への言葉とは思えないほど、敬う気持ちが込められていない。
「失敬な、悲しいと思ってるよ。どうせ空手部の顧問はずされても外の顧問にされるだけなんだから、より楽なお前らの方が良いよ、お前ら活動あんましないから管理楽だし」
無気力で寂しい気持ちのこもってない声で辻先生が言った。
やはり敬うべき相手ではないなと再認識した。
「別にお前らだってサボってばっかなんだから、無くなっても良いだろ、空手に対するやる気無いだろうし、空手元々やってる奴らは自分の道場でやるだろ」
辻先生は急に、俺らの空手への気持ちを否定してきた。この人は、本当に俺らを納得させる気はあるのだろうか、無いんだろうな。
先生の言い方に少しイラッとしたが、言い返すほど空手への愛がないのも事実である。特に俺は、まだ空手を初めて一年と少ししか経っていない。
「じゃあ俺まだ仕事あるから、これで解散な、もう帰って良いよ」
まだ不満は残っていたが、俺たちは何も言わずに職員室を後にした。
これ以上言っても、辻先生を説得することは出来ないと感じたからだ。この無気力サボりまくり教師を説得するのは頑固な熱血教師を言い負かすより難しい。
職員室のドアを閉める直前、仕事をすると言っていた辻先生がYouTubeを見てるのがチラリと見えた。
昼休みに空手部の顧問の辻先生から呼び出された俺と皆藤は、不満げな態度を隠さず尋ねた。
「君ら少しは僕を敬った言い方はできないの?全く……」
辻先生は天パが暴走しきっている頭をポリポリと掻きながら言った。俺らサボりまくり弱小空手部の顧問に相応しい、色白無気力先生である。
「じゃあ簡潔に説明するぞ、この度佐東が退部することになったんだ」
突然の報告に、俺らの思考はフリーズしてしまった。佐東が辞めた?俺らに何も言わずに?確かに、最近様子がおかしいなと思ってはいたが、まさか辞めてしまうとは。
「何だ、聞いてなかったのか?」
辻先生は目を丸くして意外そうに言った。
まだ思考が止まっている俺と皆藤は、無言で首を縦に振って応えた。
「あーまあそれで、お前ら空手部の人数が、部活動を継続するのに必要な人数に満たなくなったんだ」
少し気まずそうに、辻先生はまた頭をポリポリと掻きながら言った。
「えーと、どういうことですか?」
俺より一足早く正気に戻った皆藤が、絞り出すように尋ねた。
「まあ、簡潔に言うと、廃部ってことだな」
廃部。その一言で俺も正気に戻った。
「え、まだ部長と俺と皆藤で三人。部活動に必要なのって確か三人ですよね」
正気に戻ると同時に、矛盾点を指摘した。
辻先生はまた頭を掻いた。
「まあ、そうなんだけどな、部長は三年生で半年くらいで卒業だろ?今一年生はいないし、実績もないから、部費の無駄使いってことで早く解体したいらしい」
「まだ俺らが三年になっときに一年生が入るかも知れないじゃないですか」
「新一年生は実績の無い弱小空手部なんかに入んないだろうっていう結論になってたな、あとお前らにも部費が掛かってるわけだから、廃部にできる口実があるうちにってことだろうよ」
皆藤の噛みつきを、生徒に言っては駄目であろう情報を交えながら返してくる。
先生は頭を掻く手を止め、俺らの方を指差した。
「とにかく、お前らがなんと言おうと決定事項だから、俺だって悲しいんだぞ」
「絶対思ってないでしょ」
「これで楽できると思ってるでしょ」
皆藤、そして俺は食い気味に先生の言葉をぶった切った。生徒から先生への言葉とは思えないほど、敬う気持ちが込められていない。
「失敬な、悲しいと思ってるよ。どうせ空手部の顧問はずされても外の顧問にされるだけなんだから、より楽なお前らの方が良いよ、お前ら活動あんましないから管理楽だし」
無気力で寂しい気持ちのこもってない声で辻先生が言った。
やはり敬うべき相手ではないなと再認識した。
「別にお前らだってサボってばっかなんだから、無くなっても良いだろ、空手に対するやる気無いだろうし、空手元々やってる奴らは自分の道場でやるだろ」
辻先生は急に、俺らの空手への気持ちを否定してきた。この人は、本当に俺らを納得させる気はあるのだろうか、無いんだろうな。
先生の言い方に少しイラッとしたが、言い返すほど空手への愛がないのも事実である。特に俺は、まだ空手を初めて一年と少ししか経っていない。
「じゃあ俺まだ仕事あるから、これで解散な、もう帰って良いよ」
まだ不満は残っていたが、俺たちは何も言わずに職員室を後にした。
これ以上言っても、辻先生を説得することは出来ないと感じたからだ。この無気力サボりまくり教師を説得するのは頑固な熱血教師を言い負かすより難しい。
職員室のドアを閉める直前、仕事をすると言っていた辻先生がYouTubeを見てるのがチラリと見えた。
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